すでに冬の足音が聞こえる11月。日本でも中国でも乾燥の季節が到来している。この季節で気になるのは肌だけではなく、唇の乾燥である。
唇を彩る口紅でも感想などを気にする傾向がある中国の消費者だが、直接的な唇の乾燥対策としとしてはどういったものを気にしているのだろうか。
中国でもこの季節に本格化するリップクリームのニーズをクチコミ分析してみた。
目次
唇の乾燥ニーズから見える「成分党」の影響
トレンドExpressでは自社の中国SNSクチコミ分析ノウハウを用いた簡易分析で、中国のリップクリームに関連するニーズの調査分析を行った。
対象としたSNSはWeibo、クチコミ収集の期間は2020年10月から2021年9月の1年間である。
まずはやや広く「乾燥×嘴唇(くちびる)」、また「嘴唇護理(くちびるケア)」というキーワードで得られた頻出ワードをチェックしてみよう。
【表】「乾燥×嘴唇」、また「嘴唇護理」頻出キーワード上位30
出所:Trend Express China調べ
これを見ると、唇の乾燥対策としてはもちろんリップクリーム(リップスティック)などが有効と思われているが、そもそもの改善、ケアとしては「天然のビタミンE」が良いと
しかし同時に「角質除去」というワードが、それらより上位に上がっている。
中国消費者が唇ケアに求めるものとして、単純に乾燥による不快感だけでなく、見た目。潤いとハリのある唇=かわいい、キレイという印象を求めてもいると考えられる。
ウェイボーでも「角質除去」とともに「去唇紋(唇のシワを取る)」といった言葉も見える。
キーワードでも通常のリップクリームだけではなく、潤い機能をそなえ、かつ色合いをよく見せる「リップカラー」「グロス」などもキーワードとして上位に上がっており、唇の“見た目”へのこだわりが垣間見える。
また「ココナッツオイル」や「ミネラルオイル」、「蜜蝋」といった、素材に関するクチコミが見られ、いわゆる「成分党」と呼ばれる製品の素材に対するこだわりが見えている。
こうした消費者には商品の訴求の際は機能だけではなく、その使用している素材とメリットなどをロジカルに説明する必要があると考えられる。
「保湿力」に「成分」、そして「安全性」。リップクリームニーズとは?
続いてウェイボーに書き込まれた「潤唇膏(リップクリーム)」に関すクチコミの月次件数を見てみる。
【グラフ】「潤唇膏(リップクリーム)」に関する月次クチコミ推移
出所:Trend Express China調べ
季節性の悩みであることから、毎年9月ごろから件数が増え始め、12月、1月ごろに月約4万5000件と最大化し、3月ごろに件数が減少し落ち着くといったサイクルである。
中国は非常に広大な国土を持っている。そのため、その東西、南北で寄稿が大きく異なる。
クチコミが増えつつある9月ごろは日本や上海を含めた華東地域などでは夏の終わりではあるが、中国の東北地方、北京などの北方地域では気温が下がり、空気も乾燥を始める。
つまり肌や唇の乾燥が気になり、対応を始める時期なのである。
そして旧正月を終えた段階でそれがひと段落する時期と考えられる。
そのリップクリームに関するキーワードを見てみる。
【表】「潤唇膏(リップクリーム)」頻出キーワード上位30
出所:Trend Express China調べ
これを見ると「Vaseline」が上位に来ている。
注意が必要なのが、ユニリーバ社の商品ブランドとしての「ヴァセリン」と、素材としての「ワセリン」、ともに中国語では「凡士林」と表現される。
そのためこのキーワードには「ヴァセリン」ブランドの商品と「ワセリン製のリップクリーム」の双方意味が含まれていると想像される。
実際にWeiboのクチコミを見てみるとヴァセリンブランドの商品も多く投稿されているが、ちらほらと同ブランドとは関係のないリップクリームに関する投稿も見られる。
このうちどのくらいがヴァセリンブランドなのかなどは、より深い調査が必要となるだろう。
またブランドに関しては日本でも高い知名度を誇っている「Mentholatum」や「Nivea」も見られている。
機能に関するワードとしては「かさつき」、「補水」といったものが上がっている。
それ以外は、上記の】「乾燥×嘴唇」、また「嘴唇護理」のキーワードと似通っている。「蜜蝋」や「ミネラルオイル」、「成分」といった重複キーワードが見え、リップクリームなどの気軽に使うケアアイテムに対しても「成分党」の影響を見ることができる。
さらに「食品グレード」というキーワードも見られる。
これは単純に唇を潤すといった機能だけではなく、「体内に取り込んでも安心」というレベルの安全性を求めている部分も見受けられる。
リップクリームはどうしても唇という敏感な部分に塗り、体内に取り込まれる可能性が高いことから、それを見越してのことと考えられる。
機能面だけでなく、こうした健康面への安心感も訴求すべきだろう。
次回はクチコミでいくつかのリップクリームのブランドを見てみよう。
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