寒さが増し、乾燥度合いも高まる中国の冬。その気候の中、市場で主たるリップクリームブランドはどのような評価を消費者から得ているのだろうか。
今回は中国でも一般的で、日本にもなじみの深い4つのブランドのリップクリームについて簡易分析を試みた。
▼前回の記事は
乾燥の季節到来 中国消費者の唇を乾燥から守るには?
目次
クチコミ急上昇のブランドも 人気ブランドのクチコミ件数比較
今回、中国でも一般的に認知されている欧米ブランドとして「メンソレータム」、「ヴァセリン」、そして日系において「ナリス」、「DHC」の2ブランド、合計4ブランドを対象に簡易クチコミ分析を行った。
まずはクチコミ件数の月次推移から見ていこう。
【グラフ】リップクリーム4ブランドの月次クチコミ件数の推移
出所:Trend Express China調べ
これを見ると、ヴァセリンが圧倒的な件数を見せている。
「メンソレータムリップクリーム」は12カ月で平均150件程度だが、「ヴァセリンリップクリーム」は平均値を見ても3,200件ものクチコミがなされている。
これは前回の「リップクリーム」のクチコミ分析でも述べたように、中国語の「凡士林」はブランドとしての「ヴァセリン」と、リップクリームの成分として用いられている素材「ワセリン」が混同して用いられている傾向が見える。
そのため、「凡士林」での検索で双方がヒットし、混ざった数値となって表れている。
ブランド価値として見るためには、もう一歩踏み込んだ分析が必要となる。
日系で見ると「DHC」が平均100件弱とメンソレータムと近い件数となっている。
それに比して「ナリス」は2021年7月まではほぼクチコミがなされていない。しかし、2021年8月に入り一気に200件のクチコミがなされている。
Weiboの同ブランドのアカウントなどをチェックする限り、日焼け止めスプレーに関しては芸能人の代言人起用などがみられるが、それがリップクリームに影響している様子は見られない。
おそらくは8月、中国の七夕(旧暦の7月7日。中国式バレンタインなどといわれる)においてキャンペーンを行った様子が見て取れ、そちらの効果によるものではないかと予想される。
ただ、ほぼゼロから200件というのは非常に大きな飛躍であり、何かしらの要因があったのではとも考えられる。
こうした「何か」によって急に認知度が高まることがあるのが中国市場の特徴の一つといえるだろう。
頼れる神に。それぞれ受け入れられるリップクリーム
続いて、それぞれのブランドがどのような印象を持たれているかについて見ていこう。それぞれのブランドにおけるクチコミのポジティブ・ネガティブの比率を確認してみよう。
【グラフ】リップクリーム4ブランドのクチコミ、ポジ・ネガ比率
出所:Trend Express China調べ
やはり大手ブランドであるメンソレータムはポジティブの割合が比較的高くなっている。商品の種類も多く、スティックタイプのものからクリームタイプのものまで、またフレーバーの多様さも若い女性消費者からの支持を得る要因となっている。
また日系ではDHCが高いポジティブ度合いを見せている。ネガティブなクチコミが見られないわけではないが、4%弱と高くはないと言え、使用者などからは支持されていると見るべきだろう。
では、それぞれのクチコミキーワードを見ていこう。
【表】リップクリーム4ブランドのクチコミキーワード上位30
出所:Trend Express China調べ
日系の2ブランドに関してはクチコミ件数が少ないため、キーワードも若干少なくなっている。
メンソレータムに関してもそれぞれの件数自体は少ないが、上位にネット用語「yyds(永遠的神)」というキーワードが見え、冬のリップケアでは「頼れる存在」となっていると考えられる。
それ以外にはヴァセリンと同様に「補水」、「角質除去」といったキーワードが上位に入っており、その唇ケアの機能が受け入れられていると考えられる。
またナリスのリップクリームに関しては「高純度」という、その商品特性を示すキーワードが上位に見え、その機能の信頼が見える。
同時に「空き瓶」というワードも。
これは使用感の良かった商品を使い切ったという意味で空瓶の写真をWeiboや小紅書に上げる行為である。
またナリス、DHCにはそれぞれ「スクアラン」、「フラーレン」といった成分キーワードが含まれている。
特に日本の商品では使用感だけではなく、機能とその成分が合わせて詳しく紹介されるケースが見受けられる。
それは「こうした成分があるから効果がある」という論調で語られることが多く、それによって別の消費者は商品の機能を「理解して」使用するというサイクルが生まれる。
両ブランドにもそうしたサイクルが生まれていると見てよいだろう。
これから中国も冬本番。本格的なリップクリームの時期に入る。
中国では今回分析したブランド以外にも複数のブランドが鎬を削る市場となっている。その中から大手以外にキラリと光るブランドが現れるか、今後に注目したい。
中国特定業界のニーズを詳しく知りたい、より中国消費者の深いニーズを探りたいという方はこちらまでお問い合わせを。