2月14日はバレンタイン、中国では「情人節」と呼ばれ、「七夕」や「520」と並ぶ恋人たちのイベントの日。
今年は非常時とあり、例年通りとはいかないものの、恋人たちの日、中国消費者がどのように過ごしているのかを振り返ってみよう。
目次
日本では定番のアレ、中国では?
日本ではバレンタインといえばチョコレートというのが定番。では中国では?
残念ながら「バレンタイン=チョコ」という概念はない。そもそもバレンタインに、しかも女性から男性へチョコレートを贈るのは日本独自の習慣。さらに言えば中学や高校は「勉強一筋」で、日本のような甘い恋愛は「早恋(早すぎる恋愛)」として、学校から指導の対象となってしまうことが多い。
そのため2月14日に日本のドラマやアニメに見られるような、学園ラブストーリーが展開されることは少ないのである。
さらに言えば、中国はチョコレートにおいてはまだまだ後進国なのである。
下のグラフは中国のチョコレート市場の市場希望を示したもの。概算で200億元強といったところで、日本円に換算すると約3兆円程度になるとされている。
【グラフ】中国チョコレート市場規模の予測値
出所:中国関連報道を基に中国トレンドExpressにて制作
金額的にはそれなりの規模なのだが、中国のお菓子市場自体が「1兆5000億元」とまでいわれているため、それに比すれば非常に小さな割合になってしまう。
プレーヤーもMars社の「DOVE」やFERRERO社の「FERRERO ROCHER」、また日本の森永や世界的な高級チョコレート「GODIVA」といった海外商品が幅広く展開しており、ローカル系の商品はあまり見られない。
その背景には、チョコレートという商品はクッキーなどと違って、ほぼ舶来の材料が必要となり、対外門戸が開か得るのが遅かった中国では、スタートが日本よりも遅かったという点。
また、商品そのものがいわゆる奢侈品であり、中国本来のイデオロギーと衝突するため、国内の産業開発が遅れたことなどが考えられる。
しかし、グラフで見られるように、中国のチョコレート市場は拡大傾向にあり、若者を中心に消費が伸びている。
まさに開発の空間が残されている、伸びしろ市場なのである。
中国のバレンタイン、一体いくら使うのか
話をバレンタインに戻そう。
中国のバレンタインは前述のように、欧米型である。であるのだが、実際は「男性が女性にプレゼントする」という形式が多い。
これまでも書いてきたように、比率でいえば男性が女性に贈り物をすることが非常に大きい。
バレンタイン、婦人節、中国式バレンタインといわれる七夕、新たな恋人たちの日である520、さらにはパートナーの誕生日やクリスマスなど、チャンスは極めて多い。
その中でバレンタインや七夕では、求められるのは「ムード」。まるでアメリカの映画やホームドラマに登場するようなサプライズイベントなどである。
ではそこにどのくらい使うのか?
中国のシンクタンク「CBN DATA」は、2019年のバレンタイン消費金額を3万4712.8元と紹介する。
その内訳は以下の通り。
- バレンタイン・キャンドルディナー459元/人
- 映画鑑賞:41.9元/人
- バレンタイントリップ:6,941元
- 豪華バレンタインルーム:26,779元/泊/室
日本円で換算すれば55万円…。なかなかの出費である。しかもここにはプレゼントは含まれていない。
この日のプレゼントに特別な決まりはなく、2019年のバレンタイン商戦でもアクセサリーや化粧品など、多様な商品・ブランドがキャンペーンを展開している。ただ定番となっているのはやはりロマンチックな「真っ赤なバラの花束」。昨年もWeiboなどのSNSでは「花束とプレゼントをもらった!」といった投稿が多く見られる。
まさに経済力、そして雰囲気を盛り上げる発想力が勝負なのである。
どうなる?2020年のバレンタイン
しかし、今年はやはり様相が異なる。
小紅書(RED)では「宅家過情人節」という検索キーワードの検索件数が上昇しており、過去記事と合わせて3万件以上の投稿が見らえる。
やはり非常事態だけあって、「外出を控え、外となるべく接触を避ける」という方針が徹底されていると考えられる。
ただそれでも、自宅でどれだけ楽しく、リーズナブルに過ごすかといった討論がされている。同時にフードデリバリーサービスアプリなどは積極的なプロモーションに動いており、心細い日々の中で少しでも例年に近づけるサービスを提供しようと躍起になっている姿が見える。
また外出しての消費はできないときに重宝するのがECサイト。JD.comも「特別な1日を新しいスマホで盛り上げよう」というキャッチコピーとともに、新型スマホの宣伝を控えめに展開。
T-Mallも例年のような大規模な「バレンタインキャンペーン」は自粛しているものの、販売活動は引き続き行っており、恋人たちもそこでのショッピングを楽しもうという動きは変わっていないように見える。
非常時でありながらも、「この日は心も温かく過ごしたい」、そして「早く元通りになってほしい」という中国の消費者たち。この願いが天に届き、一日も早い社会の回復を祈りたい。