現在は一時的に動きが止まっている中国からの訪日観光客。しかし、この騒動が終息すれば、まだまだ日本へと観光にやってくることが予想されている。
この中国からのインバウンド消費といえば化粧品が注目されるが、実は同時に高い人気を誇っているのが「お菓子」。中国消費者もお菓子を食べるのが非常に好きなのである。
トレンドExpressでは2月、中国のお菓子業界とインバウンドのお菓子消費を分析する基礎資料を作成したが、その中から今回は、中国のお菓子事情を見てみよう。
目次
中国消費者も大好きなお菓子。インバウンド消費も
日本の観光庁が行ったアンケート調査では、981人の訪日中国人のうち実に78.9%が訪日時に「お菓子」を購入している。
【グラフ】訪日中国人のお土産消費
出所:訪日外国人消費動向調査「2019年10月~12月期」(観光庁)
それだけ中国消費者というのは、日本同様にお菓子好きなのである。もともと「喫茶」の習慣が根付いており、お茶を飲みながらお菓子をつまむという習慣が伝統的に浸透しているのである。
そんな中国のお菓子市場、中国シンクタンク「華経産業研究院」では、2018年時点での日本でいうお菓子市場を含んだ「休閑零食市場」を1兆元余りと予想。同時に、その規模は今後も拡大し2020年ごろには1兆5000億元レベルまで成長するとの予想を立てている。
【グラフ】中国休閑零食市場規模の推移
この市場規模を見るうえで忘れてはいけないことは、中国のお菓子市場である「休閑零食」という範囲が日本とは大きく異なるということである。
日本では煎餅や大福などの和菓子、ポテトチップやチョコレートといったものが主力となっている。
しかし中国のお菓子にはポテトチップスやチョコレート、クッキーなどの洋菓子、煎餅などの米菓子以外に、ヒマワリやカボチャ、スイカといった植物の種、時には魚肉ソーセージやビーフジャーキーといった、日本の意識では「肴」に類するものまで含まれる。

中国のソウルフード「ヒマワリのタネ」
簡単に言えば「休閑」、すなわちちょっとした息抜きの際に食べる(お茶やアルコールなどととも)食べ物全般を「休閑零食」と呼んでいると考えられる。
若者世代による消費。主戦場もリアルから移行中
では、どういった世代がお菓子を購入しているのだろうか。
データで見ると40歳以下、すなわち80後が中心で、そのあとを90後世代が追いかけている形式になる。ただ80後に関して言えばすでに家庭、子供がいる消費者も少なくなく、そうした家族向け・子供向け需要もその消費を後押ししているとも予想できる。
【グラフ】お菓子消費の年齢比率
続いてお菓子をどこで買うか、現在はそのチャネルが多様化しており、消費者にとっては選択肢が広がる反面、インタビューなどからはお得に買える場所を探すのに一苦労している様子が垣間見える。
華経産業研究院の調査では最も多いチャネルは「スーパー」や「GMS」。
【グラフ】中国主要お菓子購入場所の比率
出所:『2019-2025年中国休闲食品市场供需格局及未来发展趋势报告』(華経産業研究院)
特に上海などは外資系大型スーパーが存在しており、リーズナブルな価格で購入できるため利用度は高い。それに比して中国のコンビニは値段が高く、品ぞろえも良くない印象がある。
そして近年成長しているEC。天猫でもお菓子は売れ筋商品セグメントとなっており、多くの若者がEC上でお菓子を購入している。
なかでも95後という若いはネット移行の主力だ。消費能力においても95後は平均消費金額も高く、他の年代とも一定の差があり、新しい可能性を秘めた消費者となっている。
そして覚えておきたいのが、中国のお菓子シーズンである。
中国でも、「お菓子を送る」という文化は存在している。そもそも日常でも、オフィス内で同僚同士お菓子を配るという行為が行われており、距離感を近づけるコミュニケーション方法となっている。
そのなかで贈答としてのお菓子需要が高まるのが春節である。贈答といってもビジネスチックなものではなく、親戚や親密な友人・ご近所に送るケースが多く、日本のようなギフト包装があるケースはまれである。
好まれるのはサービスパックのような大量版。春節ももちろんだが、国慶節の連休、ワールドカップなどのイベントシーズン(2018年の618商戦ではロシアワールドカップと重なったため需要が高まった)など自宅で消費するお得サイズ商品がリアル店舗、ECでよく購入されている。
いずれも贈答では、一般的に大きめ(体積)、華やかなパッケージのものが喜ばれる傾向にある。
お菓子業界にも広がるコラボプロモーション
中国でも広がっているIPとのコラボレーションプロモーションだが、それがお菓子業界にも拡大している。
そしてそのねらい目はやはり最大商戦である「春節」シーズンだ。
春節は中国最大の伝統イベントであり、「帰省し、家族が一緒に年越しをする」、「親戚・知人の家を訪問する」という習慣が色濃く残るが、その中でお菓子が注目されるのは、帰省や訪問に選ばれる手土産は家族一緒に食べることができるお菓子詰め合わせが求められるのである。
その商戦でより目を引くために行われるようになったのが、IPとのタイアップパッケージ。特に90後世代などをターゲットにした施策が広く展開されている。
伝統的なお菓子である「ナッツ」、「ヒマワリの種」などの大手メーカーである「来伊分」は、若者に人気の国潮デザインブランド「東来也」とタイアップ。2019年春節用詰め合わせセットを販売した。
そのパッケージそのものがコレクション心を刺激する作りになっており、売り上げに貢献したといわれている。
また、ナツメの中国最大手である「好想你」は、中国「盲盒」ブームの火付け役となったMollyとタイアップし、ギフトパッケージを開発。
人気のMollyのオリジナルフィギュアもついていることも、消費者の購入欲を刺激する結果となった。
いずれも「春節」という伝統を感じるシーズンに、伝統色豊かなIPデザインを活用することで、消費者の目を引き、印象付けを行い、消費に結びつけている。
市場拡大が続く中、競争も激化。国内のお菓子メーカーはより「目を引く」施策で生き残りをかけているのである。