「私域流量(Private Traffic)」の活用の中でカギになるのがWeChatミニプログラムだ。ではなぜ、ミニプログラムが重要視されているのだろうか?
ミニプログラムの状況を振り返りながら、その活用を眺めてみよう。
▼前回までの記事は
中国マーケ業界ホットワード「私域流量」を掴め! ~「私域流量」ってなに?
中国マーケ業界ホットワード「私域流量」を掴め! ~その効果と初期モデル~
中国マーケ業界ホットワード「私域流量」を掴め!~その成功モデルを「完美日記」から見る
目次
WeChatミニプログラムとは?
日本では徐々に注目され始めている段階だが、中国ではすでに一般的。消費者の生活に根付いている。
このミニプログラムとはWeChat内に設けられた、アプリ内アプリというべきもの。
インターネット人口が国の半数以上を占め、その100%近いネットユーザーがモバイルを使用している。
人気の「iphone」以外にも、華為などの国産スマホも浸透。ますますモバイル中心の社会へと進んでいる。
こうした背景に、多くのサービスがアプリ化しており、消費者は気軽にECや学習、フィットネスなどのサービスを享受している。
しかし消費者にとって、煩わしいのはアプリの数は増えすぎることで、いちいちプログラムを立ち上げなければならないという事。
その点、ミニプログラムはWeChat内のシステムであるため、チャットや朋友圏(モーメンツ)を利用しつつ、手軽に必要なプログラムを開き、利用することができる。
中国の調査会社iResearchが1416人に行ったアンケートでは90%以上が「ミニプログラムを使用したことがある」と回答しており、かつその使用経験者の半数が「1日に1~5回はミニプログラムを使用する」と回答している。
また利用されているミニプログラムを見ると、「EC」や「フードデリバリー」、またニュースなどの「インフォメーション」といった、まさにWeChat同様に生活に密着した存在となっているのである。
ミニプログラムと私域流量(Private Traffic)の関係
では、企業側から見た場合、どのようなメリットがあるのだろうか?
当初はその開発の容易さ、またコストの安さから「正規のアプリを立ち上げるまでの代替」としての使われ方が主だった。
また、WeChatと連動していることによって、ユーザーが「朋友圏(モーメンツ)」を通じて拡散しやすいというメリットあり、拡散施策の一環としても利用されていた。
しかし近年はミニプログラムを「刈り取り」のメインに置く企業が、中国国内を中心に増えてきている。
その最大の背景はやはり「私域流量(Private Traffic)」の活用である。
企業やブランドが消費者を囲い込む施策として行われているのが、WeChatの公式アカウントやグループ作りである。
この中で情報を発信し、コミュニケーションを活性化させることは可能だが、刈り取りが自社単独アプリでは、消費者にとって一動作が必要になる。
さらには、大きくみればWeChatというアプリ内であるため、ミニプログラム内で店舗を開設した場合、キャンペーン情報などをグループ内で発信するのも、他のアプリなどから転送することと比べても容易になる。
つまりは囲い込み、ロイヤリティを高めたユーザー、すなわち「私域流量(PrivateTraffic)」を、よりスムーズに購入ポイントまで誘導することが可能になるのである。
「私域流量(Private Traffic)」のロイヤリティを高めるミニプログラム
こうした「私域流量(Private Traffic)」からミニプログラムの活用、代表的なものは前回紹介した「完美日記(Perfect Diary)」であるだろう。
同社の施策はすでに中国で分析が進められており、多くのブランドがその手法をまねている。今後は、こうしたモデルが中国の基本的なマーケティングモデルとなる可能性が高い。
ただミニプログラムの活用はこうしたコスメ業界だけではなく、それ以外、実店舗を持つサービス業でも利用されており、中国で人気のチーズティーブランドである「喜茶(HEEKCAA)」でも、身のプログラムを活用してユーザーの利便性を向上させている。
同ブランドは中国の若者から支持を集めているドリンクブランド。ファンも多く、商品の性質上、繰り返し消費の多いブランドである。
リアル店舗を中心に展開していた同ブランドにとって消費者からのクレームが多いのが待ち時間の長さ。
人気店ゆえに店頭で長蛇の列ができてしまい、1杯のドリンクを買うために1時間待ちという事もよくあった。
これではどれだけ公式アカウントにユーザーを集めても、「買えない」状況が起こり、ユーザー離れにもつながりかねなかった。
そのため同ブランドではミニプログラムを開設し、そこから注文。さらには店頭受け取り・デリバリーを選択できるシステムを構築した。
それによってユーザーのロイヤリティが向上したのは言うまでもない。
またこのサービスによって利便性が上がることによって、より多くのユーザーが同社を利用。公式アカウントなどの登録も増加する。ミニプログラムの活用によって、現有の「私域流量(Private Traffic)」のロイヤリティを高めるだけではなく、新たなトラフィックを確保することにもつながるのである。
前回述べたように、今後の中国では各業界とも「私域流量(Private Traffic)」とミニプログラムの連動設計がカギとなる。
同時にユーザーニーズと自社のサービスに合ったミニプログラムの開発も重要。中国マーケティングにも新たな視野が必要という事だろう。