今年Q1は中国だけではなく、世界中が未曽有の災害に見舞われた。新型コロナウイルス。その脅威は一足先に外出規制が緩和された中国でも、いまだ拭い去れていない。
この影響は、トレンドViewerのクチコミデータにも大きく表れている。今回はトレンドViewer「買いたい」日本商品のクチコミランキングデータから、2020年第1四半期12週間分を集計、前年と比較してみた。
目次
クチコミ件数も大きく減少
まず「買いたい」クチコミランキングデータに収録されているクチコミ総数、もっとも人気セグメントである「コスメ・美容」セグメントのクチコミ件数を2019年Q1と比較してみた。
【グラフ】2020Q1・2019Q1「買いたい」クチコミ総数と「コスメ・美容」クチコミ件数
これを見ると、2019年Q1のクチコミ総数は3万件以上あったが、2020年Q1では約1万9000件余りと、2/3程度まで減少している。
これはやはりコロナウイルスの影響下にあって、必要なもの、買わなければならないものの意識が感染予防や食料品などの身の回りのものに向き、いわゆる嗜好品に類する海外商品である日本商品のクチコミが減少したことが上げられる。
またこの時期、日本ブランド側も中国の様子を見ながら自粛ムードが漂い、軽率なプロモーション活動が減ったこと、またよしんばプロモーション活動を行いたくとも、実行に当たる現地の人員の動員事態に影響が出ていたといった結果とも推測することができる。
もちろん、日本商品のクチコミを投稿する最も多い存在であるインバウンド客がほぼ消滅したことも要因として考えられる。
こうしたクチコミ件数の推移を見ても、中国が受けた新型コロナウイルスの損害を知ることができるだろう。
1位はもちろん…
では、こうした中で人気となった商品にはどういったものがあったのだろうか?上位10商品を2019年Q1と比較してみた。
【表】2020年Q1と2019年Q1人気商品TOP10
2020年Q1 | 2019年Q1 | |
1 | ユニ・チャーム超立体マスク | ヒロインメイク スムースリキッドアイライナー スーパーキープ |
2 | らくハピ アルコール除菌EX | DHC メリロート |
3 | サンテ ボーティエ | ファンケル ブルーベリー |
4 | クレベリン ゲル | 香りつづくトップ |
5 | リフターナ コンセントレートマスク | お菓子(スナック菓子、チョコ菓子、キャンディー等) |
6 | ビオレ ふくだけコットンうるおいリッチ | アンナザルベ・エース |
7 | 無印良品 文房具 | 薬用ハンドエッセンス(コラーゲンウォーター配合) |
8 | 薬用ハンドエッセンス(コラーゲンウォーター配合) | 無印良品 文房具 |
9 | DHC メリロート | キティーちゃんグッズ |
10 | タイガー 魔法瓶 | サンテ ボーティエ |
結果は予想通り、「ユニ・チャーム超立体マスク」が1位となった。スキマを作らず風邪のウイルスや花粉などをシャットアウトできること、立体構造で息苦しさも感じに杭という機能性が注目された。
これまで同商品は「子供用」が下位ながらランキングしていたが、大人向けが登場したのは初である。
「子供用」のみがランキングに入っていた理由としては中国ではあまり子供向けマスの品質が良くない、不安があるためといわれている。
4月に日本で流通業に携わる人物に話を聞いたが、2019年12月末時点で、日本のドラッグスストアなどの小売店では「マスク」が在庫過多の状況にあったという。
しかし年が明けてからすぐに武漢市の状況が中国国内、次いで日本にも伝わり、日本在住中国人が家族や友人のためにマスクを買い集めたり、ソーシャルバイヤーも顧客からの委託で買い付けを行ったりといった行為が発生したため、たちまち在庫がなくなり、また卸単価も急騰したといわれる。
また4位には大幸薬品の「クレベリン ゲル」がランクイン。日本でも品薄状態が続いているが、2位の台所用除菌製品であるアース製薬の「らくハピ アルコール除菌EX」とともに、中国でもウイルス除去ニーズの影響を受けての人気拡大となった。
いずれも中国消費者の「新型コロナ対策」による需要増大であった。
残念なのは、こうした未曽有のトラブルの中でやはり「買い占め」、「転売」が日中ともに起こってしまったことだろう。
2003年のSARS時に比すれば、アプリやSNSの普及によって個人が商品の販売をすることが容易になった反面、こうした時期の悪質な行為も増えてしまったという事だろう。
コロナウイルス周辺の商品もランクアップ
ここでそれぞれの商品のクチコミ件数を昨年と比較してみよう。
【グラフ】2020年Q1TOP10のクチコミ件数
興味深いのは一件、新型コロナと関係のない商品の人気が昨年に比して高まっているような印象を受ける。
3位の「サンテポーティエ」(目薬)、5位の「リフターナコンセントレートマスク」(フェイスマスク)はコロナウイルスとは何ら関係がないように見える。
ただ、中国の消費者にこのデータを見せながら少し話を聞くと、「深夜までスマホで動画を見ていたことの目の疲れ」や、「マスク着用による肌荒れ」、「外出しないことで肌ケアの手抜き」といったコメントを得ることができた。
言われてみれば「なるほど」と思わなくはない。
巣ごもり生活では動画サイトや抖音などのショートムービーアプリの利用度が高まったというし、また現在でも夏のマスク着用による肌荒れ対策のためのプロモーションがWeibo上などで確認できる。
また「DHC メリロート」は巣ごもり生活の結果、体重が気になり始めた女性が増えたこと、また「タイガー魔法瓶」は子供や自分用にお湯を飲む(一部のデマで、お湯でのどを熱気消毒することでコロナウイルスが防げるというものもあった)ために思い立ってほしくなった消費者が増えている様である。
いまだ完全にその影響から脱し切れておらず、日本では「with コロナ」といった言葉があるように、完全に元通りの生活に戻ることは難しい。
中国においてはこうした社会変化がどのように表れるのか、注意深く観察し、その中の新たなニーズを見つける必要があるだろう。