時代とともに消費者は大きく変化していくもの。中国でもそれは同様で、以前「新時代の消費者」といわれていた80後世代もすでに家庭を持ち、その前半もアラフォー世代となりつつある。
そして変わって新時代の消費者といわれているのが95後(1995~1999生)や00後(2000~2009年生)の若者たちである。
この世代は世界市場においても「Z世代」と呼ばれ、これまでとは異なる価値観、消費習慣の持ち主として研究が進められている。
今回はこの中国における「Z世代」を理解するため、中国国内の調査をベースにその基礎情報を見ていこう。
目次
中国のインターネット史と同時に育つ世代
最近中国のマーケ業界でもよく聞くのが「95後は~」という言葉。日本では「90後」とひとくくりにされてしまうのだが、中国では90後でも1900年~1994年までに生まれた消費者と1995年以降に生まれた消費者では、生活感や価値観に大きな違いがみられるとされ、近年はこの95後、そしてそれに続く00後、すなわち「Z世代」が新たな注目消費者として分析が進められている。
まずその人口ボリュームを見ていこう。中国の統計によると、中国には現在約2.6億人のZ世代がいるとみられている。
その最年長である95年生まれは現在、中国の年齢で26歳(中国は生まれた時が1歳)、大学を卒業し、社会人として企業に出ている。最年少である09年生まれは現在12歳で小学6年生と幅が大きい。
しかし共通しているポイントとしては「インターネット」という言葉である。
この世代は中国のインターネットとともに生まれ、成長してきた世代だという事をまず覚えておこう。
中国政府が国策として「インターネット」を展開させていくという方針を示したのは1994年。そして中国発のサービスプロバイダ「瀛海威」を設立したのが1995年、すなわち彼らが誕生した年である。
それ以降、2003年ごろにTaobaoやJD.comが成立、2009年にはWeiboが、2011年にはWechatが登場。
そのころ95後は10代半ば、彼らが大学に入った2013年以降では、こうしたSNSはすでに普及しており、彼らから見ると先輩にあたる80後や90後(~94年)の消費者たちがその使い方をマスターし、浸透していた。
彼らにとってはもはやありふれた、中国社会の生活の一部となっていたのである。
すべての情報をネット、特にSNSから仕入れ、それをまたSNS上で発信していく。それがすでに自然なこととして成長した世代なのである。
それは、ECの利用にも表れている。2018年に中国の調査会社『iResearch』が行った調査では、95世代の6割超が「毎日ECサイトを見ている」と回答している。
【グラフ】95後世代の「毎日ECを見ている」と回答した比率
出所:「种草一代·〇〇〇时尚消费趋势报告」(唯品会&艾瑞咨询)
「自己」を基準に消費をする世代
こうしてSNSを生活の一部として育ち、すべてのモノ、情報が手元のスマホからもたらされる中国のZ世代だが、その価値観には一つの特徴がみられる。
それは「自己の探求と表現」である。
彼らはもちろん流行のものを手に入れようとする意識は強いのだが、同時に「それが自分の個性を表現できるかどうか」という意識があり、さらにそれが自分にとって価値のあるものであれば、「高くても買う」という傾向がある。
同じく2018年にQQ広告とKANTARが共同で行なったZ世代の消費調査でもそれは見えており、半数以上が「趣味に合えば高くても購入する」という認識でいる。
【グラフ】自分の趣味に合うものなら高くても買う
出所:QQ広告&KANTAR「Z世代消费力白皮书」
特に、自分が好きな分野のプレミア商品については、値上がりしていても手に入れたいという意識があり、金額よりも自分の価値観を優先する傾向が他の世代よりも強くなっていると考えられる。
同時に、自分の価値観に合うものは何なのかという探求心、平たく言えば「自分探し消費」にも積極的で、「最新のもの、今まで経験したものとは異なるものへのチャレンジ意識」も非常に強い。
【グラフ】最新もしくは試したことが無い商品にチャレンジしたい
出所:QQ広告&KANTAR「Z世代消费力白皮书」
とにかくいろいろなものを試し、その中で自分が「好き」と感じるものを選別し、金銭を投入していく世代といえるだろう。
こうした考え方の背景を知るためには、彼らの親世代の状況を把握しておく必要があるだろう。
彼らの親世代は基本的に60年代生まれ70年代初期の生まれが多い。
その世代は中国の政治的な動乱の影響を受けており、世代によっては就職も自己の意思ではなく「国の指示に従う」という習慣を経験している。
またその後は経済発展の中で「高収入、住宅購入」といった、生活水準向上のみを求める世代であり、異なる選択肢などを選ぶ余裕がなかった。
そうした苦労を子供に味会わせたくない、「時代が変わったのだから子供には自由に」といった考え方で育児、教育を行ってきた部分があるように感じられる。
もちろん子供であるZ世代にとっても「古い生き方はまっぴら」という認識もあり、とにかく「自分らしく」生きようとする意識が強くなっている。
今年の5月4日に動画サイトbilibiliが公開した「後浪」は多くの議論を呼んだが、「周りの声よりも自分らしさ」を追求する95後以降の「Z世代」は、広く好感をもって迎えられたのも、そうした意識の表れといえるだろう。
そんな新時代の消費者たちは、どういったものに興味があるのか、どういった購入をしていくのだろうか。
次回は、特にコスメ分野に注目して中国の若者消費を見ていこう。
▼次回はこちら
中国Z世代が求める「美しさ」とは? 若者コスメニーズを読み解く