つねにオシャレ度を上げ続けている中国の女性。スキンケア、メイクアップ、アパレルファッションのほか、近年伸びているのが「ヘアファッション」ニーズである。
その中でも現在、若者を中心に市場が伸びているのがセルフヘアカラー。
中国でも色とりどりの個性的なヘアカラーの消費者が街を彩っている。
今回は、そんなヘアカラーのなかでもセルフヘアカラーについて、クチコミ分析を通じてみていこう。
目次
伸びるヘアカラーニーズと市場
中国消費者のオシャレ度は常にレベルアップを続けている。
そのオシャレのトレンドは、スキンケアからメイク、そしてシャンプーやトリートメントのヘアケアなどへと移り、それによってそれぞれの市場の高まりをもたらしてきた。
2019年の上海美容博レポートでも、スキンケアはもちろんながら、ヘアケア商材の占める割合が過去に比べて非常に増えており、ヘアケア市場の拡大とその勢いに驚かされた。
もともと上海ではヘアファッションに敏感な都市だった。
テレビドラマなどの影響もあっただろうが、2000年代初期には上海の街中ではヘアサロンが立ち並び、多くの消費者がカットやシャンプー(当時は自宅ではなく、ヘアサロンでシャンプーしてもらうのがトレンドだった)のために利用していた。
もちろんその当時の上海は今現在と比べるとカット技術、サービスなども未成熟で、ローカル系の「文峰」や「美琪」、その後に比較的現代に近い王磊などが登場、特に80後世代が様々なヘアスタイルへとチャレンジし、多様化がしていった。
その中国のヘアファッション、現在は「カラー」市場が次なる成長市場としての様相を見せつつある。
中国の調査会社iiMedia Researchの調べでは、ヘアカラー剤市場規模は2017年にはわずか50億元程度であったが、2020年には182億元になると予想。3年間で3倍以上の規模への成長が見込まれている。
【グラフ】2017年から2020年までの中国ヘアカラー剤市場規模推移(単位:億元)
出所:iiMedia Research
中国トレンドExpressでは、セルフヘアカラーの概要を理解するために、Weiboで簡易クチコミ調査を実施した。
その結果を見ると、単純に「自己染髪」というキーワードでのクチコミは2019年9月から2020年8月までで7,189件が見られた。
【グラフ】Weibo「自己染髪」クチコミ件数の推移
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べに基づき中国トレンドExpressにて作成
このデータを見ると、2020年に入って3月に一気にクチコミ件数が伸びている。
こちらに関しては明らかに新型コロナウイルスによる外出規制によるものであると考えられる。
すなわち、長らく続く外出規制で気持ちも落ち込んでいる中、気分転換の一つとして自宅でヘアカラーを試してみる、という行為が増えたことによると考えられる。
ただその後もヘアカラー、特に自分で染めるというニーズに関しては昨年以上のレベルを保っている。
ちなみに小紅書(RED)での同キーワードの累計ノート数も17万4868件と非常に多くの投稿がなされており、今後のセルフヘアカラーニーズの高まりを想像することができる。
クチコミに見える中国ヘアカラーのニーズとは?
では、そんなセルフヘアカラーに対して消費者はどのような内容をつぶやいてるのか、Weibo上のつぶやきを見てみよう。
【表】Weibo「自己染髪」における頻出キーワード
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べに基づき中国トレンドExpressにて作成
まず気になるのはもちろん「色」だ。
どんな色がトレンドなのか、どういった色なら似合うのかなど、関心は高い。
この色ニーズについては次回、もう少し時間をかけて分析してみたい。
気になるのは「成功、「失敗」、また激しい失敗を意味する「翻車(もともとは車がひっくり返るの意)」といったキーワードが上がってきている。
こうした失敗、成功の基準は「効果」というキーワードが含まれているように、「思い通りの色にならなかった」や「思ったより似合わなかった」といったニュアンスが含まれている。
またもちろん30位にある「技能(テクニック)」というキーワードが示す染め方。ムラのないように染め上げる方法に関しての言及も多い。
それはこのキーワードのポジネガにも現れている。
【グラフ】Weiboにおける「自己染髪」クチコミのポジネガ
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べに基づき中国トレンドExpressにて作成
クチコミのポジネガとしてはニュートラル比率が低く、ポジティブ、ネガティブ双方の比率が高い。
カラーリングをした後「うまくいった」や「失敗した~」といったクチコミが多いことを示している。
セルフヘアカラーの出来栄えで奮闘しているのは、日本中国でも同様のようである。
ブランドの人気は3つ巴? 人気のポイントは2つ
次に気になるセルフヘアカラー用のカラー剤ブランドを見てみよう。
Weibo上のクチコミを見る限り3ブランドに絞られる。
ドイツの「シュワルツコフ」、韓国の「アモーレパシフィック」、そして日本の「花王」である。
試みに「自己染髪×染髪剤」というキーワードを小紅書で検索し、人気のヘアカラー剤を見てみても、この3ブランドの紹介が非常に多く、若い女性からの人気を集めていることが見える。
「シュワルツコフ」や「アモーレ」の2ブランドは、日本ではそれほど大きな知名度はないが、シュワルツコフはポップなイメージのヘアカラー剤を販売しており、T-Mallの旗艦店でも人気が高い様子が見て取れる。
アモーレに関しても、T-Mall Globalの輸入業者の店舗で販売されており、1か月でも数万個規模で販売されている様子が見て取れる。
それに日本の花王を加えた3ブランドが事実上の中国セルフヘアカラー市場TOP3であると考えることができる。
ではこうしたセルフヘアカラーのニーズとは何なのだろうか?
前出のキーワードを見ると「頭皮」、「純植物」というキーワードが見える。これは頭皮へのダメージを懸念してのことと考えられる。
特にヘアカラー剤は化学物質であるため、髪の色が染まっても頭皮にトラブルが出ては、せっかくのイメージチェンジも台無しとなってしまう。
そのため、比較的ダメージの少ない「植物性」原材料を使った商材を選ぶのである。
もう一つは「泡」タイプであるか否か。
これは液だれに懸念、また髪へのなじみやすさなどの理由によるものであろうと予想できる。特に初心者は液だれや髪へのなじませが不十分なことによる色ムラなどのミスを犯してしまいやすい
上海などの大都市でも、質の悪いヘアサロンではカラー剤が流れ、顔や服に色がつき、肌トラブルが起こったなどという事も耳にする。
そうしたトラブルやミスを回避するためにも、泡タイプのものが喜ばれるようだ。
TOP3 の一角を占めた花王。その人気ブランドとなっているのはLieseだが、まさに「泡」とダメージの少ない「植物性」という2つの要素を兼ね備えた部分が中国消費者のニーズに合ったと考えられる。
またヘアカラー市場を外資系が占めているという点から見ると、国内プレーヤーの少なさも背景にあると思われる。
シャンプーやコンディショナーなどは、中国国内でもプレーヤーが非常に多く、商品の数も極めて多い。
それに比してセルフヘアカラーは中国国内でのプレーヤーは少なく(一部は白髪染め)、海外ブランドにチャンスが残されている。
さらに髪や頭皮に対するダメージケアという意味で、海外からの輸入商材の信頼度も、中国消費者にとっては選択理由となっているようだ。
次回は中国消費者の色ニーズについてみてみよう。