色々な話題を振りまいたダブルイレブンだったが、気が付けば「W12」そしてクリスマスキャンペーン、年を超えれば春節の「年貨節」と気が抜けない。
そんな苛烈な市場競争のなかでは、やはり人気ブランドの人気たるゆえんを分析するところから始まる。
今回は2020年W11における台風の目、一気の躍進を果たした韓国スキンケアブランド「The history of Whoo/后」をクチコミ分析してみた。
目次
おさらい。韓国ブランド「Whoo」とは
The history of Whoo/后とは、韓国のLG生活健康グループ傘下のスキンケアブランド。主力商品は「天気丹(Cheongidan Radiant Emulsion)シリーズ」。2003年に韓国で登場し、2006年には同国の人気女優であるイ・ヨンエを起用。人気を高めていった。
コンセプトは宮中にいる皇后や后たち。中国の簡体字では「后」も「後」も同一の漢字となってしまうが、同ブランドのコンセプトは前者。
漢字によって意味の混同が起こりえるが、それを同ブランドはプロモーションなどで補った。
もともとのデザインの豪華さにも合わせた、韓国宮廷を思わせる高級感のあるプロモーションは多くの中国消費者に好感を与えた。
また同ブランドでは「韓方」、すなわち韓国式漢方を使っている点であり、朝鮮人参や鹿茸(鹿の角)など中国消費者にも同ブランドの特性であるアンチエイジング効果がわかりやすいという点もあった。
日本ではECショップの楽天などで販売されているのを見かける程度であるが、中国では多くの百貨店にテナントを構え、各商戦でも大型のキャンペーンを展開。2019年のダブルイレブンではスキンケア部門で8位に入り、その存在感を強めていた。
そして今年、同ブランドは一気に4位に入り、世界のハイエンドブランドと肩を並べるまでになった。
12月にトレンドExpressが制作した『2020年W11商戦レポート~中国Afterコロナ消費市場開拓のために~』では、2019年と2020年のダブルイレブン期間10月20日から11月19日まで、関連クチコミを収集。各ブランドの期間中の露出件数から、話題となったブランドをランキング化した。
それを見ると同ブランドのWeiboおよび小紅書(RED)クチコミ件数は2019年に比べ、大幅に増加していることが見て取れる。
【グラフ】The history of Whoo/后のW11関連クチコミ対比
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
クチコミで見える、イメージキャラクター起用でランクアップ
では同ブランド、そして主力ブランド「天気丹」のクチコミ状況を見てみよう。
まずは直近12か月の月ごとの推移である。
【グラフ】The history of Whoo/后のクチコミ推移
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
2020年は新型コロナ禍によって1月、2月とクチコミ件数が落ち込んでいる。
しかし3月、3・8婦女節当たりで回復の兆しを見せ、5月、618前の段階でブランドクチコミが大きく伸びている。
もちろん商戦対策のプロモーションもあるが、この時期、中国市場向けのイメージキャラクターとして上海出身の女優・江疏影を起用。彼女は34歳と同ブランドのターゲット層に近く、同世代からの支持も高い。
2020年の618商戦でも前年のダブルイレブンと同じT-Mallスキンケア部門8位となったのはその影響もあると見ることができる。
これを見ると、5月のタイミングでのイメージキャラクター起用は618を含め、下期に集中する商戦に有効だと再確認できる。
そして10月。前出のようにダブルイレブン向けのプロモーションを一気に加速させている。特にブランドクチコミは11月まで上昇を続けている。イメージキャラクターの江疏影が11月1日に杭州銀泰百貨店のテナントでライブを行うなど、ダブルイレブンの最後まで手を抜かなかったことが見て取れる。
こうして全体を見ると、もちろんシーズンごとの起伏はありながらも、婦人節、618そしてダブルイレブンと、それぞれの商戦でクチコミを一段上にあげていくという、階段状の蓄積を行っていることがわかる。
イメージと商品機能が合わさっての躍進
最後に、中国消費者の同ブランドに対する印象をみてみよう。
【グラフ】The history of Whoo/后のクチコミキーワード上位15
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
期間にダブルイレブンシーズンが含まれているため、イメージキャラクターを務めた「江疏影」と、彼女が使用・宣伝している商品と「同モデル」であることについてのクチコミが非常に多いことがわかる。
この部分を見ても、同ブランドのイメージキャラクター起用は成功と言っていいだろう。
彼女は2020年7月に配信された、中国女性のリアルな生活や悩みを描き大ヒットしたドラマ「三十而已」にも出演していることから人気もより高まった。
実際に「イメージキャラクター」というキーワードが入っている点からも、そうした江疏影への評価が高まったことが追い風となったと想像できる。
また商品に関しても「光彩」、「肌」、そして「抗老衰(アンチエイジング)」という、その効果を示すキーワードも上位に入っており、商品が持つ機能性に関しても多く言及されているとみられる。
続けて「天気丹」のクチコミを見てみよう。
【グラフ】天気丹クチコミキーワード上位20
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
コチラもダブルイレブンが含まれているため、「景品」や「頭金」、「残金」などのキーワードが見える。
それを外してみてみると「抗老衰(アンチエイジング)」や「抗酸化」、「栄養を与える」など、その機能に関するクチコミが多い。
同商品のポジネガを見ても、ポジティブ比率が高い。そのことから、こうしたクチコミもポジティブな内容なものが多いと判断できる。
【グラフ】天気丹クチコミのポジネガ比率
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
つまりはイメージキャラクターの起用、その機能性の発信、そして商戦に合わせたクチコミの累積という点においてThe history of Whoo/后は成功を収めてきたと考えられる。
2020年The history of Whoo/后の躍進、日系ブランドの多くは「同じ日本ブランド」や「欧米ブランド」がどうしているかに目が行きがちであるが、スキンケア市場にいて韓国ブランドの動きも把握しておかねばならないと改めて思わされる。
このブランドが2021年にどのような動きをするかに注目したい。