中国市場分析 5年で10倍以上に急成長の無糖ドリンク市場を追う

どの国でも人気のソフトドリンク。むろん、中国も例外ではなく、数多くのメーカーが多種多様なドリンクを販売している。もちろんその中にはコカ・コーラやペプシなど、外資系のブランドも活躍中である。

その中国のドリンク市場だが、2018年あたりから“革命”とも言える事象が起こっている。それは「無糖飲料」の登場、そして伸長である。

こうした現象に、中国トレンドExpressでは簡易クチコミ調査を行い、その市場動向を分析してみた。

今回はそのクチコミ分析に入る前に、中国ドリンク市場のデスクトップ調査から見える中国ドリンク市場を俯瞰してみよう。


安定成長の陰で急成長の中国無糖飲料市場

まずは中国のソフトドリンク市場がどのくらいの規模を有しているのかを見てみよう。

中国のシンクタンク智研諮詢の調査では、2019年の「飲料(ソフトドリンク)」の市場規模は約5800億元。5年前の2014年と比較すると24%と、安定した伸びを見せている。

【グラフ】中国ドリンク市場2014年~2020年の規模推移(単位:億元)

出所:智研諮詢

こうした市場の背景には日本同様にペットボトル飲料の浸透、コンビニや大型スーパーそしてECなど販売チャネルの拡大などがある。

また売られているドリンクもコーラやスプライトなどの炭酸飲料、ミネラルウォーターに加えてお茶飲料などセグメントも広がり、それぞれに多数の企業が商品を展開。消費者の選択肢が増えたこともある。

ただ、中国の特徴としては各地区のかつての国営企業によるローカルブランドの多さ、またそうした地方の中小メーカーによる大手ブランドの模倣なども多く、いささか混沌とした市場といえるだろう。

 

その中でにわかに注目されているのが「無糖飲料」という市場である。

市場規模としては2020年の予想値で117.8億元と6000億元近い全体市場の中においては非常に小さい。

しかし、2014年時の市場規模がわずか16億元程度であったことを鑑みれば5,6年で10倍に拡大しており、その成長スピードは目を見張るものがある。

【グラフ】中国無糖飲料市場の規模推移(単位億元)

出所:智研諮詢

そもそも中国のペットボトル飲料は、2000年ごろまで「甘い」のが当たり前であった。

20年前にも日系のお茶飲料も売られていたが、「無糖」と「微糖」の2タイプが売られており、うっかり微糖を購入してしまった日本人が「味の違いに驚いて思わず吹き出す」といった話もよく聞いた。

 

統一や康師傅などがレモンティー飲料を出していたが、甘さ「たっぷり目」で合った印象が強い。

 

中国ではペットボトル飲料はおしなべて「甘い」ものだったのである。

だが、消費者の変化とともに今、「甘くない」飲料が急成長している。続いて無糖飲料市場変化の流れを見てみよう。

Z世代の新ニーズ。新鋭ブランドが新市場を構築

中国の無糖飲料の歴史は2002年ごろにスタートしていた。

台湾ブランドである統一が「茶里王」という、無糖タイプのお茶飲料の販売を始めた。当時、主力だったテレビCMや屋外の看板などを広く展開していたが、完全に根付くことなく、2011年に販売終了となってしまった。

 

日本のサントリー烏龍茶のように無糖と微糖を並行して販売しているケースも継続されていたが、市場全体を見れば中国の飲料はやはり「甘いもの」が主流だったのである。

 

それが変わり始めたのが2018年ごろからである。

前出の市場規模を見ても前年からの伸び率が60%以上と極めて高い伸びを見せていることがわかる。

 

2018年ごろはコスメ業界ではZ世代という新世代を市場ターゲットとして認知しはじめた時期でもあり、同時に使用する化粧品の成分に強いこだわりを見せる「成分党」と呼ばれる消費者群が注目を集め始めた時期である。

 

中国の無糖飲料市場を生み出したのは、この成分党を含む新世代消費者なのである。

SNSネイティブであるZ世代はSNS上にアップする自分が常により良いスタイルでいたい。老化を防ぎ、より若々しくありたいという欲求がある。

そのためには太る要素であり、かつ老化を生み出す糖分接種を制限し、スタイル維持やいわゆる抗糖作用をもたらしたいという欲求が広がっていたのである。

 

とはいえ、こうした思いだけでは市場が爆発的に広がるというのは考えにくい。中国の無糖業界は、美容やSNS映りを気にする若者ニーズに火をつけた存在がいた。それは、中国無糖飲料市場の内訳推移に見えるある特徴にある。

【グラフ】中国無糖飲料市場の内訳推移(単位:億元)

出所:智研諮詢

これを見ると、2017年まで無糖飲料の主力はお茶飲料であった。しかし、翌2018年に無糖のお茶飲料と無糖炭酸飲料の市場規模が一気に逆転しているのが見て取れる。

中国無糖飲料業界を2018年から本格化させ、今牽引しているのがこの「無糖炭酸飲料」というセグメントであり、6年前にはわずか6億元程度しかなかった無糖炭酸飲料市場を一気に10倍にまでたたき上げたのが、新鋭ブランド「元気森林」である。

 

中国では近年、デザイン性やデータドリブンマーケティングで若者世代を取り込み、一躍市場の先端にきらめいた新鋭ブランドが数多く登場している。

メイクアップ市場における完美日記(PerfectDiary)や花西子、お菓子業界の「三只松鼠」などである。

元気森林はすなわち、そのドリンク業界版というわけだ。

 

次回は中国ドリンク界に無糖炭酸飲料という新風を吹き込んだブランド「元気森林」を、トレンドExpressのクチコミ分析機能の一部を使って分析してみることとする。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

資料を申し込み