中国サステナブル回顧録 世界のトレンドとなったSDGsと中国

すでに世界の潮流ともなっている「SDGs(Sustainable Development Goals)」。持続可能な社会を作るために、各国の行政だけではなく企業も知恵を絞り、生活や環境にやさしい製品を作り、消費者も社会にとって優しい消費をしていこうと考え始めている。

そのうちの一つが化粧品業界におけるCleanBeauty。人だけではなく、環境も美しくい続けるための新たな思考である。

こうした世界の社会的なトレンドは、今の中国ではどうなのだろうか?

今回は中国社会の流れを見ながら、今の中国でCleanBeauty、Sustainableな消費がどこまで、どのように受け入れられるのかを考えてみよう。


現在の中国においてサステナブル消費は?

現在、世界中で唱えられているサステナブルな生活様式や消費。

では、消費においてはどうだろう?

 

インターネット上の情報を見ると、中国では2020年初から「サステナブルファッション」という言葉と、複数のブランドが現れている。

報道では、2020年1月に深圳市福田区の政治協商委員が「サステナブルファッション」の支援に関する提案を行っており、徐々にサステナブル商品を生み出し始めている様にも見える。

 

ただ、それが大きな社会的な潮流にはなりえていない様子も同時に表れている。

 

中国の企業CSR活動支援業務を手掛けるコンサル会社・商道従横(Syn Tao)と上海報業集団傘下の経済誌・界面新聞は提携で『2020中国可持続消費報告』という、一般市民がサステナブル的な思考で行なっている消費活動に関する調査報告書を発表した。

 

その中の消費者調査における10大サステナブル消費が上げられており、そこから中国のサステナブルに関する意識が見えてくる。

 

「節電」、「節水」、「無駄な消費、食べ物を無駄にしない」といった行為が「サステナブル消費」として認識されている。

しかし、「サステナブルの商品を買う」や「サステナブルブランドを選ぶ」という部分においては若干希薄な結果となっている。

その原因も6つほど述べられており、「そもそも市場に少ない」こと、「価格が高い」こと、また「それがいわゆるサステナブルなものなのか遡及確認ができない」、「リサイクル環境の不完全」など、サステナブル消費を行う環境が整っていないことを示している。

 

サステナブルな重要なことだと思われながらも、そうしたことを訴える企業や商品もまだ少ないのである。

前述のサステナブルファッションも、ここブランドを見てみるといずれも規模が小さく、圧倒的な人気を誇るファストファッションが席巻する、巨大な中国のアパレル市場において一角すら占められていない。

 

もともと「企業がサステナブルな生産を行っている」というメッセージに関しても、なかなかに刺さりにくいのである。

定量的な調査ではないが、話を聞いていると、まず「安全」で「価格に見合った商品」の生産が企業道徳としての関心事であり、消費の判断基準になっている。

 

その企業が、その商品をどのように、例えば排気を抑えたり、海洋保護に力を注いだりという点は消費行動に大きな影響を与えにくい。むしろそちらは「国が基準を作って管理すべき事柄」なのである。

実は世界に先んじていた90年代上海のエコシステム

今、日本のメディアで盛んにサステナブル、SDGsという言葉を発し、そのための施策が多く紹介されている。プラスチック制限、食料のムダ減少などである。

 

そうしたものを見ながら、自分が上海に住んでいたことを思い出し、ふと「当時は中国のほうがサステナブルな生活が身近だったのでは?」と思い起こすことがある。

 

筆者は90年代末から上海に住んでいたのだが、そのころから上海には「空のペットボトルをまとめて買ってくれる人がいた」。

一部からは「捡破烂(ゴミあさり)」などといわれ、社会では上流どころか、むしろ底辺のような存在であったように記憶しているが、まとめたペットボトルを持っていくと秤で重さを量り、数元程度を支払ってくれたことをよく覚えている。

 

こうした人たちは、ゴミなどから鉄などの貴金属を外して、それを売って生計を立てていたわけであるが、その中にすでに「ペットボトルの回収」が入っていたのである。

もちろんそれは回収業者に売り、回収業者はそれを加工し、別の製品を作っていたのである(その製品の品質については、ここではいったん置く)。

 

また、日本ではあまり語られることが少ないが、実は「スーパーなどでの買物袋の制限」を世界に先んじて法制化したのは、実は中国なのである。

中国最大の経済都市である上海では2008年6月1日、中国でも初めてスーパーでのプラスチック製買い物袋が有料化された。

同時に上海では「菜藍子(買い物かご)」という言葉が公共広告などで盛んに言われ、今でいうエコバッグもカルフールなどの大型スーパーの店頭に並び始めた。

 

このプラスチック製買い物袋の有料化は中国各地に広がり、2020年9月1日には広東省深圳市でも厳しく法制化された。

 

それらを思い出すたびに複雑な心境になるのである。

考えてみればレストランでは「持ち帰り用の使い捨てパック」が常備されていて、店員に言えば食べ残りを持ち帰ることもできたし、街を見ればこうした飲食店を回って残飯を集め、家畜の飼料にする人たちもいたので、20数年後の自分たちからすれば「エコ」な生活であり、サステナブルなサイクルが一般生活に近い存在であったといえるだろう。

製造業に限られた「持続可能な発展」。消費者とは距離が

上海で買い物袋が有料化されたころ、胡錦涛政権が盛んに「可持続社会」という言葉を使っていた。

「可持続」とは「サステナブル」の中国語訳である。当時の中国は持続可能な社会のすなわちサステナブル社会の建設を政策として訴えていたのである。

 

ただその対象は主に製造業であった。

生産における排気、排水、さらに節電など、地方政府を経由して開発区に厳しい基準が設定され、進出企業はその遵守が求められた。

 

2010年前後、中国はとにかく「環保」(環境保護の略語)の期間であったが、それは製造業にとどまっていたといえる。

一般消費者は経済発展において物質的な充実感を求め、大量の消費をもって自身のステイタスとする習慣が広がっていった。

 

さらに生活の身の回りにあった残飯やペットボトルのリサイクルシステムも、どうしても社会としては一部の、いわばその発展の外にある人たちの生活のための生業という認識が抜けきらなかった。

 

本来のサステナブルなサイクルがありながら、それが中国の大都市では消費者にとってはトレンドになりえなかったのである。

 

その間、世界はサステナブルな製造と同時に、サステナブルファッションやメイクなど、環境に配慮した商品が登場し、中国が一般生活で見られるようなリサイクル活動が「理想」とみられるようになっていった。

 

2020年には中国でも浪費が増え、「食べ物のムダを減らす」という言葉が“再度”、政府から提唱されており、また一部都市ではゴミの分別法制化され、こうしたサステナブルにつながる行為が身近になりつつある。

 

次はそれが消費者の意識に残り、「サステナブルな商品を買う」、「サステナブルを提唱、実行している企業の商品を選ぶ」という消費行動へ移る段階。

いまが、中国におけるサステナブル消費のスタートラインといえるだろう。

 

次は化粧品業界で注目されてもいる「中国におけるCleanBeautyとは?」について考えていこう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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