2021年の3月8日「女王節」 プロモーションから見える現代中国の女性像とは?

3月8日は国際婦人デー。中国では「38婦女節」と呼ばれ、以前から女性は半日がお休みになったり、勤め先からちょっとしたプレゼントがあったりと、女性に感謝する日として定着している。

もちろん、知っての通りEC商戦としての意味合いが強く、T-Mall「女王節」を中心とするECプラットホームのキャンペーンでは様々な女性をターゲットとした商品が販売され、プロモーション、ブランディングが展開された。

今回はその2021年婦人節、女王節のブランディングから気になったポイントを挙げてみよう。


2021年女王節は抖音(中国版Tik Tok)の成果に注目

まず、今年の女王節商戦はどうだったのだろうか?

 

最大手であるTaobao、T-Mallでは3月12日時点、オーダー金額などの成果を発表していない。

2020年は新型コロナウイルスによる外出規制、消費落ち込みムードを払しょくすべく、その成果を声高に訴える必要があったが、今年はやや状況が異なり、落ち着いたムードの商戦という印象がある。

 

それに反して成果を発表したのが抖音(中国版Tik Tok)である。

 

抖音は『2021抖音電商女王節数据報告』を発表、2月27日から3月8日までの抖音女王節のEC成約額が136.3億元となったことを発表した。

そのうち、女性“達人”(ユーザー)による「帯貨(商品紹介)」からの成約が、同アプリ内に数多く存在している“達人”たちによる商品紹介からの成約の64%を占めるなど、消費だけでなく「販売する側」としても、女性の影響力が増していることを示している。

さらに今年の女王節関連報道では抖音のニュースが多くなっている。

3月7日19:00~24:00、女優でモデルの「金晨」が抖音のライブコマースのライバーとして登場。5時間で5191万元を売り上げたこともニュースとして取り上げられている。

 

ライブ中、彼女は化粧品のLancome、Kiehl’s、白酒の茅台、五粮、またiPhone12や華為などの通信機器、周黒鴨や三只松鼠などのお菓子と、様々な商品を紹介。

ライブ時間中の視聴者数は900万、視聴者が最も集中した時間には12.6万人が視聴していたとのこと。

ここからも、2021年の女王節でもライブが大きな影響を及ぼしていたことが分かる。

婦人節の化粧品ブランディングから見る中国の「女性」

さて、今年の女王節ならぬ婦人節では、やや通常と異なる雰囲気が見えた。

 

この期間、商戦である女王節とは別に婦人節として、世の女性に向けてメッセージを送る企業が多い。

特に女性向け商品である化粧品業界では主力消費者であるホワイトカラー層の女性たちに向けて様々なプロモーション、ブランディングを行うのだが、2021年はそのメッセージ内容に現代の中国女性たちの希求が見える気がする。

 

中国コスメの代表格である完美日記(PerfectDiary)では、北京、上海、広州のオフィス街地下鉄駅内でラッピング広告を展開。

同時にそこを通行している女性にインタビューを行い、同施策(広告)の印象コメントを撮影し、微博公式アカウントで配信した。

 

そこで得られた女性のコメントとして多かったのが「活力」や「元気」というものに混じって、「自信」や「自立」といったキーワード、中には「周りの意見に流されない」などといった言葉も聞かれた。

中国における女性の社会進出は、日本よりも進んでいるといってもいい。

女性の高級管理職も少なくなく、金融やサービス、さらには格立空調というメーカーのトップ・董明珠董事長なども活躍している。

T-Mallの発表によると、同モール内で売られる新ブランドの内40%、アパレルにおいては50%が女性オーナー(起業家)によるものといわれている。

 

しかし、いわゆる伝統的な価値観が完全になくなったというわけではなく、「結婚は幸せ」、「家事や育児は女性」、「男はひたすら金を稼ぐ」といった意識が引きずられることもいまだ多い。

いわば単純に「仕事に打ち込む」だけでなく、「家庭的な幸せの担い手」の言ったような制人が多い比率で負担が生じ、女性の悩みとなっている部分があるようだ。

 

それに相反する意味で「周りはどうあれ自分らしくありたい」、「社会における達成感を追求したい」といった意識が、中国の女性のなかで強まっているのではないだろうか。

特に先年大ヒットしたドラマ『三十而已』にはそれが凝縮されているように思う。

中国で「ジェンダーを超える」メッセージを発信

さらに目を引いたのが、同じく中国のスキンケアブランド「珀莱雅(PROYA)」が、メディア『中国婦人報』とのタイアップ動画である。

 

完美日記の、女性の「自分らしさの追究」というメッセージに似ているが、より幅を広げ、「そもそも男らしく、女らしく、のような性別で線を引くのはやめよう」と訴えている。

そして家庭と仕事を両立し、強く、そして優しくいるべきなのは「男性も女性も関係なく、

“人”はすべからくそうあるべき」というメッセージを送っている。

女性の独立心、自尊心の尊重を訴える動画は数多い。しかしこのように「ジェンダーを超えよう」というテーマの動画は、中国ではまだ少ないように思う。

 

日本でもあることだが、大きな社会の潮流に個人が覆いつくされてしまうというのは、中国でも発生している。

その中で、まずは性別で「こうあるべき」ではなく、「自己の追究」、「自分らしい幸せ」を主張しようという傾向が中国にも見られる。

 

それは常に新しくなる社会環境の中にいながら、時折伝統的な価値観が顔を見せ、体制に流されることを要求される中国では、なお強いのかもしれない。

 

日本でも「女性は~」という発言が物議をかもした。それによって「女性を語ること」自体にネガティブなイメージが付いてしまっている。

しかし、中国の女性消費者がどのような幸福を求め、どのような悩み、ジレンマを抱えているのかを明確に理解し、そしてそれに寄り添うことができる企業が、中国の社会において受け入れられていくはずである。

こうした姿勢で「中国の女性消費者」を語る心を持ちたいものである。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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