中国ECプラットホームへの制限 ライバーの責任の所在も明文化へ ~『網絡交易監督管理弁法』~

2021年の消費者権益の日「315」では多くの問題が摘発されたが、注目に値するのは『網絡交易監督管理弁法』、すなわちオンラインで行われる商品・サービスの交易を管理監督するための具体的な指針である。

5月1日から施行されるというこのレギュレーション、618を直前に控えた時期の施行であることから、同商戦にも一定の影響を及ぼすかもしれない。

まずはそのポイントを押さえておこう。


▼関連記事

【315速報】コロナ禍からの脱却を 2021年中国消費者権益の日を読む


『電子商務法』をより浸透させる施策として登場

そもそも中国では2019年1月から『電子商務法』が施行された。

一時期は“ソーシャルバイヤー潰し”などとも呼ばれた法律ではあったが、ソーシャルバイヤーに限らず、Taobao上で店舗を開設しているオーナーが、主体登記を行い、明確な販売サービスとして展開していくことを求めたものであった。

 

その思考から2年余りたったが、この2年間は中国のEC業界も非常に大きく変化をしていた。

商戦は常に拡大を続け、同時にライブコマースが急速に普及。舞台もTaobao Liveだけではなく、抖音(Douyin)、快手などのショートビデオでもKOLを利用したライブを展開するようになった。

2020年ごろからはそのライブにKOLだけではなくアイドル・芸能人、さらには企業のトップなどが登場し、商品を紹介。販売を行っていた。

現在は抖音も快手も自前のECを開始し、より混沌としてきた。

 

そうした変化で生じた諸問題を解決するために、2021年3月15日、消費者権益の日に発表され、同年5月1日より施行されることになったのが『網絡交易監督管理办法』だったわけである。

 

つまりは通常のECに加え、ライブコマース、社区団購など多様化するインターネット交易状況で、『電子商務法』を含めた関連法律をより浸透させ、プラットホーム、参加企業、そして消費者の権益を守ることを目的とした、より具体的な指針である。

プラットホームによる強権に制限

『網絡交易監督管理办法』では、オンラインでの「網絡交易経営者(インターネット交易経営者)」を「インターネットプラットホームの経営者、プラットホーム内の経営者、自社サイト経営者およびインターネットソーシャルネットワーク、インターネットライブなどの他のインターネットサービスによってインターネット上での交易活動を展開するインターネット交易経営者」と規定している。

 

そのうち、T-MallやJD.comなどを「インターネットプラットホームの経営者(交易平台経営者)」に、そのプラットホーム内で旗艦店などを出店する店舗(ブランドと言い換えていい)を「プラットホーム内経営者(平台内経営者)」としている。

 

本法で注目されるのは「インターネットプラットホーム経営者がプラットホーム経営者(旗艦店など)に干渉してはならない」という点だ。

 

第三十二条を見てみると:

「プラットホーム経営者は『電子商務法』第三十五条の規定に違反してはならなず、プラットホーム内経営者がプラットホーム内の交易、交易価格およびその他経営者の交易などに不合理な制限や不合理な条件を付け、プラットホーム内経営者の自主経営に干渉してはならない。具体的には以下の内容を指す。

(一)検索順位の下落、商品の削除、経営の制限、店舗の不公開、サービス費用の値上げなどの方法によってプラットホーム経営者の自主的な複数プラットホームでの経営展開を禁止・制限すること。

(二)プラットホーム経営者の自主的な宅配物流などの交易補助サービス業者選択を禁止・制限すること。

(三)その他、経営者の自主的な経営行為に干渉すること。

 

これらの背景にはECプラットホームが、自身が有するユーザー数、トラフィックの大きさを背景にして、そこに出店するブランドに対し不合理な二者択一や価格の調整を求め、一部のブランドは法的な手段をもってそれに対抗するといった事件が頻発していたことがある。

 

しかし、この明文化によってECプラットホームが旗艦店などのメーカー・ブランドに対して、他のプラットホームとの二者択一や利用する物流網の強要など、出店者の自主経営権に干渉するとみなされる行為が禁止され、出店者が自身の判断で旗艦店などを運営することができるようになっている。

 

出店者側にとっては注目しておくべき内容だろう。

消費者権益保護も強化。ライブコマースも法の対象へ

もう一つは、「ライブコマース」もこの法律の適用対象とし、それを含めて消費者権益保護を強く打ち出しているところにも注目しておきたい。

 

第二条第二項において「その中で「インターネットソーシャルネットワーク、インターネットライブなど情報ネットワーク活動の中で商品を販売する、もしくはサービスを提供する経営活動には本弁法が適用される。」と明記されており、ライブコマースも「インターネット交易経営者(網絡交易経営者)」として、この規定の順守が求められる。

 

また第七条においてもライブを含めたEC関連のプラットホームに紐づいたオンラインサービスは「プラットホーム内経営者の義務を履行しなければならない」といった表現があり、ライブコマースの責任が明記されている。

 

それら全体的な規定として第十二条が上げられている。

 

第十二条 インターネット交易経営者は以下の方式で消費者を騙す、誘導する行為をしてはならない。

(一)虚偽交易

(二)評価の偽造もしくは他者に対する虚偽および誤解する評価の教唆・誘導・脅迫

(三)削除、隠匿、評価の修正もしくは高評価の前置き&低評価の後起き、異なる商品およびサービスの混ぜ合わせ評価など不当な評価の処理などの「誤導性」提示をしてはならない。

(四)虚偽もしくは他者に誤解を与える価格表示もしくは価格手段、消費者を欺き誘導しての交易。

(五)虚偽の広告宣伝、キャンペーン方式、サンプル、商品およびサービス説明、商品およびサービス規準などの提示

(六)市場主体登記情報、行政許可情報の偽造

(七)商品およびサービス来現の混ぜ合わせ

(八)“現品限り”・予約・早い者勝ちを偽った虚偽マーケティング行為

(九)そのほか消費者を偽る、誘導する行為

 

また、第十四条ではより具体的な禁止条項が含まれている。

 

第十四条 インターネット交易経営者は『反不正当競争法』などの規定に違反してはならず、市場競争秩序を混乱させ、他の経営者や消費者の合法的権利を侵害する不正当行為を実施してはならない。

インターネット交易経営者は以下の方法によって虚偽または誤解を招く商業宣伝によって商社を騙したり誘導してはならない。

(一)虚偽交易、ユーザーレビューの偽造

(二)誤解を招きやすい展示方式、高評価を前に、低評価を後ろにする、もしくは異なる商品・サービスへのレビューを混同させる。

(三)現品限り、虚偽の予約や虚偽の早い者勝ちイベントなどの虚偽マーケティング

 

第二条第二項および第七条、そしてこの第十二条や第十四条に基づけば、プラットホーム、旗艦店はもちろんライブコマースにおいても虚偽広告や誇大広告は許されず、さらに商品レビューの偽造もご法度である。

 

これら関連法律によって、中国では新たに拡大しているライブコマースも含めながら、健全なビジネス環境の整備を行っていくものと考えられる。

今後の具体的な動きにも注目が必要であろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

資料を申し込み