新たなオンライン交易の管理法施行まで、あと1か月となった。
拡大する中国のオンライン消費、特にライブコマース業界にはどんな影響があるのだろうか?
まずは中国ライブコマースの抱えている課題を振り返りながら、考えられる今後の動きを把握してみよう。
目次
クレーム急増?中国ライブコマース市場が抱える課題とは?
中国の報道によると、2020年1年間で中国消費者権益保護のプラットホームである「12315」に寄せられたオンラインショッピングに関する権利侵害相談は203.32万件と、オンライン・オフラインを合わせた全体の28.04%を占めた。
そのうち、18.41万件が「消費者権益侵害」と判断され、立件されている。
そのなかで、ライブコマースに関する相談は2.55万件。
オンラインショッピング関連相談の全体と比べると1%程度と少ないが、注意すべきはその伸び数。
2019年に比べて357.74%増という数字。1年でトラブルが急増しているのである。
その背景にあるのは、やはりライブコマース全体の拡大である。
2020年10月時点で中国のライブコマース市場は1兆元を突破、2021年には2兆元規模にまで達すると見込まれている。
特に新型コロナウイルス蔓延による外出規制によって、室内娯楽のニーズが急増。単純に商品を見て購入する従来のECから、エンターテイメント性を持ったKOLなどによるライブコマースの視聴が増え、そこからの購入にもつながった。
結果として、2020年緒618、W11ともにライブコマース全盛を迎え、領域を問わずすべてのブランドがライブコマースを基軸に戦略を考えるようになったが、それをチャンスと見て資質を問わぬライブが氾濫するようになってきた。
そこで上記の問題が生まれる。
ライブコマースが注目されればされるほど、そこで不正な利益を得ようとする人が増えたのである。
ライブを見つつ、KOLなどの言葉を聞きながらの購入は、いわゆる衝動買いにつながりやすい。さらにオンラインということで直接商品の品質などを確かめることなく、ライバーの言葉で“疑似”体験しながらの購入である。
届いた商品を見て「思っていたものと違う」、「商品が送られてこない」などのトラブルが急増したのである。
さらに大きな問題が、こうしたトラブルの際に「だれが責任を負うのか」という問題である。
ライブコマースではライブプラットホーム、MCN、ブランド、ライバー(KOLなど)と関与する存在が増える。
しかし、それぞれの責任が不明確、つまりトラブルが起こった際にだれが何の責任を負うべきかが不鮮明であったために、それぞれが責任逃れをするといった課題がある。
もう一つの問題は、こうしたライブコマース戦国時代になったことで、多くの企業・ブランドがライブを通じて商品販売を狙う一方、そのライブの人気度合いを「偽造する」ケースも増えた。
視聴者数の増加、高評価、購入者数の偽造をすることで企業から高額なマーケティング費用をせしめるという仲介会社(MCNなど)も現れた。
2021年「315晩会」の後に放送されたニュース番組では、中国消費者権益保護法研究所の陳音江・副秘書長の「オンライン商品の品質基準未達率は38.7%」とその問題を語り、「販売しているプラットホーム側の責任が大きい」と指摘している。
こうした状況から拡大のスピードに合わせて、その管理監督する制度が急務だったのである。
『中国広告法』と連携で進められるライブコマース管理
そうした課題の解決に向けて、3月15日発表された『網絡交易監督管理弁法』では、「直播(ライブ)」についての文言が含められている。
2020年6月に中国広告協会から『網絡直播営銷行為規範』というレギュレーションを出していたが、今回はそれよりもやや強い、罰則を伴う「弁法」という形での発表である。
その細かな法律に関しては前回「中国ECプラットホームへの制限 ライバーの責任の所在も明文化へ ~『網絡交易監督管理弁法』~」にて述べておいたが、ライブコマースに関しては「公開したライブコマースの映像は3年間保存する」ことがプラットホーム側に求められた。
これによってデータ偽造などの不正行為、紹介する商品と実際に届いた商品の同一性などが、ライブ放送後でも確認、解析できるようになり、より消費者や出品するメーカー・ブランド側もライブ上の不正行為に対して証拠を残すことができるようになっている。
また、中国のオンラインビジネスに関するメディア「億邦動力(ebrun.com)」では、同法の施行によってライブコマースにおいても『広告法』のレギュレーション順守がより厳格に求められるようになることを指摘している。
『網絡交易監督管理弁法』を施行していく際には『広告法』との連携が予想されるからである。
▼参考記事
《网络交易监督管理办法》发布 直播带货再上紧箍咒
この記事では広告法に基づいた広告活動の主体をライブコマースに合わせて設定している。
「広告主」はすなわち商品を出品するメーカーやブランド、「広告経営者」は広告経営者でライブコマースにおいてはMCNがそれにあたる。
そして「広告発布者」、こちらはそのライブを公開しているプラットホーム。さらに「広告代言人」。こちらはライブを行っているライバー(KOLなど)となる。
これらに照らし合わせて考えると、ライバーが発する言葉、宣伝文句も『中国広告法』に基づいたものが求められ、内容によってはその広告発布者であるプラットホームや広告経営者たるメーカーも責任が問われることにもなる。
これらからのライブを考えるうえでも、『中国広告法』の再読は必須となるだろう。
こうした法制化、規範化が進むライブコマース。
市場自体は拡大を続けることが考えられ、販売チャネルの1つとしての役割はまだまだ高い。その活用のためにも関連したレギュレーションは改めてチェックしたい。