中国で増えている「不眠」人口。常にスピードアップする社会の中で、消費者は「眠りたくても眠れない」という悩みを抱えている様子。
では、そんな不眠に関連するクチコミからは、どんな原因が見えてくるだろうか?眠らない国中国の眠れない背景、Weiboでのクチコミ簡易調査から見てみよう。
▼前回記事
春眠できない消費者たち 「不眠大国」中国の状況は?
目次
年末は眠れない日々 クチコミから見える中国の不眠規模
前回見てきた不眠人口約3億人ともいわれる中国。「眠り」に関する市場も注目を集めている。
ではそうした不眠を感じている中国消費者は、その思いをどのようにSNS上で発しているのだろうか?そこで「不眠」をキーワードにトレンドExpressではWeiboの簡易調査を実施した。
見ると、毎月平均で17万3,000件に上る不眠に関するクチコミが上げられており、年間の件数は200万件を超える。
もちろんこの中には医師から「不眠」と診断されたケースと、自身で「不眠気味」というケースの双方が含まれていると考えられるが、それにしても膨大な量である。
【グラフ】「不眠」に関するクチコミ件数月ごとの推移
source:Weibo Trend Express China調べ
月別に見ると、年末11月12月がやや突出しているように見られる。
この時期はまさにダブルイレブンやダブルトゥエルブなどの下期の商戦が続く時期である。特に前者は慣例として深夜0時から商戦がスタートし、最もお得な商品を求めて深夜まで商品を買い物かごに入れるというものが残っている。
商戦による徹夜が名物化しているのである。
それと同時に、多くの企業では12月を期末としている。その年末までの最後の追い込み業務などが続き繁忙期となるケースが多い。
深夜残業をするケースも増える時期なのである。
そうした中で仕事の忙しさや商戦への“参戦”によって深夜まで起きていることが続き、不眠の症状が現れてしまう。
結果、病気としてではないが不眠気味のクチコミが増えるという次第である。
【グラフ】「不眠」クチコミのポジネガ比率
source:Weibo Trend Express China調べ
クチコミのポジネガを見てみても、「ニュートラル」すなわち「まぁ仕方がない」というレベルが約半数。またネガティブも42.31%と非常に高いが、当然の結果である。
むしろ10%のポジティブがいることにやや驚きを感じるほどである。
不眠の原因1位はあの人気ドリンク? 不眠のクチコミあれこれ
続いて、「不眠」というキーワードとともにつぶやかれている言葉を整理してみよう。
【グラフ】「不眠」クチコミ関連キーワードランキング
source:Weibo Trend Express China調べ
これを見ると「ミルクティー」というワードが最も多くなっていることが分かる。眠れないときにホットミルクなどを飲むと寝つきが良くなるといわれているが、その類なのだろうか?
実際にWeiboのクチコミを見てみると、予想の全くの逆。「眠れない要因」としてミルクティーが見えてくる。
「昼間にミルクティーを飲みすぎたので眠れない」、「ミルクティーは太るし眠れなくなる」など、「ミルクティー=不眠の原因」というクチコミが数多見られる。
ここでいうミルクティーとはほとんどが「タピオカミルクティー」といったような、お茶ドリンクであるが、日本では眠れなくなるドリンクの代表格である「コーヒー」の倍近い数のクチコミがなされている。
もちろん中国のネット上には「なぜミルクティーを飲むと不眠になるのか」のメカニズムも紹介されている。
それによると、まず砂糖が大量に含まれている。砂糖はエネルギーを生み出す、一種の興奮作用がある。
そして同時にお茶には「テオフィリン」という物質が含まれており、カフェイン同様の神経興奮作用があるのだという。
またお茶には利尿作用があることから、頻繁にトイレに行きたくなり、睡眠を妨げる結果にもなると指摘する医師もいる。
ノンカフェインコーヒー同様に「テオフィリン不使用ミルクティー」等が開発されれば、ホワイトカラー層などから非常に喜ばれるかもしれない。
不眠を解消するためには何が必要…?
不眠の原因である「ミルクティー」に次いでクチこまれているのが「メラトニン」である。
こちらはミルクティーとは逆で、人の睡眠を安定させるための成分として知られている。
中国のコスメ業界では「成分党」と呼ばれる、肌に良い成へのこだわりを持つ消費者が多いが、その余波で「不眠を解消する、緩和する成分」への注目も高まっているといえるだろう。
また、「苦痛」や「元気がない」など、不眠によって引き起こされる症状に続いて「プレッシャー」というワードも見える。
中国は仕事、勉強、経済面などによる、まさにプレッシャー社会となっている。
仕事においては長時間労働、さらには住宅購入や育児に必要な経費も上がっているなか、現代中国消費者は数多くのプレッシャーに囲まれて生活していると言っていいだろう。
さらに下位に見える「WeChatモーメンツ」もプレッシャーと無関係とはいえない。
WeChatの浸透で、常に知人・友人の生活の様子を知ることができるようになった。
しかし、それによって周囲の仲間の「リア充さ」を目にすることになり、必要以上に焦りを感じ、プレッシャーを作り出してしまうという一因も存在しているようだ。
こうしたプレッシャーのはけ口をどこに求めるのか。
その嗜好や動向も一つのビジネスとなりえるかもしれない。
またそれとは逆に不眠を解消させる施策としては「ラバーテックス」商品など快眠をサポートする商品。そして「睡眠薬(睡眠導入剤含む)」といった薬物治療に関連するクチコミもある。
中にはアロマテラピーなどの香り商材を利用して気分転換、眠りに入りやすくする消費者も増えているようで、こうした快眠サポート市場も今後成長が見込まれるだろう。
次回はもう少し、中国の不眠とその解消方法を探って見ることにしよう。