運動、漢方 中国の不眠症状解消法のあれやこれ

眠れない、眠れないと嘆いていても問題の解決にはならない。
中国の「眠れない消費者」たちはあの手この手で睡眠障害に立ち向かっている。今回はクチコミ調査で行なった想定される不眠対抗手段を見つつ、中国の消費者たちがい介して不眠と戦っているかをみていくことにしよう。


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原因は意外な飲み物? 中国不眠事情クチコミ分析


不眠解消法は運動。スポーツ愛好家も睡眠との関連性を認知

トレンドExpressでは中国の不眠事情を知るべくクチコミ調査を実施した。そのなかで、おそらく不眠解消法とされているであろう「サプリメント」、「中薬(漢方)」、そして「運動」の3つについても調査をおこなった。

 

まずは不眠(中国語では失眠)とそれぞれのキーワードの掛け合わせによるクチコミ件数を比較してみよう。

【グラフ】直近1年の不眠とサプリ、中薬(漢方)、運動のクチコミ数

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、「不眠×運動」のクチコミ件数が最も多く、次いで「中薬」、最後が「サプリメント」であった。

不眠に関して服用するものは「睡眠薬(睡眠導入剤)」という認識が強く、サプリメントのような補助食品に関するクチコミは若干少なくなっているように見える。

 

運動に関しては、2021年3月18日の「国際睡眠デー」に中国睡眠研究会が『2021睡眠と運動白書』という研究レポートを発表。中国国内で約1万4000人に睡眠と運動に関連したアンケートを取っている。

レポート自体は公開されていないが、それをベースにした新聞報道などを見ると、中国では運動している人の27%が「睡眠促進のため」と回答しており、同時に「適量の運動は睡眠の質を向上させる」という問いには、ハイレベルな運動を行っている消費者うち「非常に同意」と「やや同意」がそれぞれ36%と46%と高い値を示している。

 

これを見る限り、中国では運動が吸民改善に役立つという認識が非常に高く、少なくない比率で睡眠の質向上のために運動をしているという一面が見えてくる。

 

また、それぞれのクチコミのポジティブ、ネガティブ比率を見てみよう。

【グラフ】不眠とサプリ、中薬(漢方)、運動のポジネガ比較

出所:Trend Express China調べ

ここでもポジティブ率が最も高いのは「不眠×運動」であった。その分ネガティブ率が若干高い傾向がある。

ネガティブ率に関しては「中薬(漢方)」で、原因は運動のネガティブ内容も同様で、即効性に薄いというものであるようだ。

運動も中薬も、ともに重要なのは「継続性」。

1日運動した、もしくは漢方薬を飲んだところで改善されるわけではない。しかし不眠に悩む人はその日に眠りたい。

そうしたジレンマが見えており、運動に関するクチコミキーワードでも「睡眠薬(睡眠導入剤も含まれる)」が上位に来てしまっている。

【グラフ】「不眠×運動」のクチコミキーワード

出所:Trend Express China調べ

身の回りのある漢方食材で、気長に改善も

さて、中国の特徴的なものは漢方である。

生薬のような専門的なものから、野菜や乾物などを漢方的な見地から調理した「養生」とも呼ばれるレシピなどは、日常の健康法からスキンケア、美髪などといった美容領域までを幅広くカバーしている。

 

もちろん不眠も対象の中に入る。

 

不眠×中薬(漢方)のクチコミを見ると、そうした身の回りにある、中国では手に入れやすい漢方素材の名前が見える。

【クチコミ】不眠×中薬(漢方)のクチコミキーワード

出所:Trend Express China調べ

ナツメ(棗)やクコ(枸杞)は血の流れを整える食材として知られており、スーパーなどでも干したものが簡単に手に入る。

美容効果もあることが知られているために、これらを朝食としてお粥に入れて食べるという消費者もいる。

また下位にある「人参(朝鮮人参)」や「トウキ(当帰)」も同じく手に入れやすい漢方素材で、同じように体力や血行促進の効果が強い。

 

「ヨモギ(艾草)」のキーワードはまた特徴的でその上位にある「足を浸す(泡脚)」と一緒に使われることが多い。

後者は簡単に言えば「足湯」である。

 

ただその足湯のお湯にヨモギの葉を多く入れることで、特に女性は気脈が通じ、体のバランスが整えられるために、快眠をもたらすといわれているものである。

 

上位にある「つぼ」もいわゆる漢方。

手軽にツボを押すことで睡眠のサポート効果を得ようというものである。

インターネットやSNS上でも非常に多くの情報があり、例えば手首の掌を上向きにしたときの内側当たりにある「神門」というツボは、よく「不眠改善に効果がる」と紹介されている。

 

唯一の具体的なブランド名となったのが「同仁堂」。

清朝の康熙8年(1669年)に誕生した、300年以上の歴史を有する中国漢方薬店であり、現在でも北京に拠点を置く製薬会社となっている。

 

こちらでは各種症状の漢方薬を調合し、生薬として提供しているが、やはり中国でも数少ない漢方の老舗とあって信頼度は高い。

すぐに効果が出ず、長期的な服用が必要だからこそ、こうした老舗の信頼できるブランドが選ばれるのだろう。

 

日本とはまた違った形のストレス社会・中国。不眠との戦いはまだまだ続いていきそうである。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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