ライブマーケティングも新しいレギュレーション ライバーの責任も明文化

4月23日、中国では「中国互聯網信息弁公室」、「公安部」、「商務部」、「文化和旅游部」、「国家税務局」、「国家市場監督管理総局」、「国家広播電視総局」の7部門連名で新たなレギュレーションが発表された。

それが『網絡直播営銷管理弁法(試行)』、すなわちライブを使った販売宣伝行為に関する管理指標である。

3月15日「中国消費者権益の日」に発表されたオンライン交易全般に関する法律から一歩踏み込んで、拡大加熱する中国でのライブコマースの健全な発展を促す目的があると思われる。

今回はその中のポイントだけ見ていこう。


▼3月15日に発表された規定に関してはこちら
中国ECプラットホームへの制限 ライバーの責任の所在も明文化へ ~『網絡交易監督管理弁法』~
5月1日からの「網絡交易監督管理弁法」 ライブに与える影響はいかに?


ライブでも広告法の適用を明記

まず見ておきたいのは第一条である。

ここでは明確にこのレギュレーションのベースとなる既存の法律が上げられている。中でも注目は『中華人民共和国広告法』が上げられている点だ。

 

第一条

为加强网络直播营销管理,维护国家安全和公共利益,保护公民、法人和其他组织的合法权益,促进网络直播营销健康有序发展,根据《中华人民共和国网络安全法》《中华人民共和国电子商务法》《中华人民共和国广告法》《中华人民共和国反不正当竞争法》《网络信息内容生态治理规定》等法律、行政法规和国家有关规定,制定本办法。

 

<筆者訳>

インターネット上におけるライブマーケティング管理の強化、国の安全と公共利益の保護、公民・法人及びその他の組織の合法的権益の保護、インターネットライブマーケティングの健康的かつ秩序のある発展を促すため、『中華人民共和国網絡安全法』、『電子商務法』、『広告法』、『反不正当競争法』、『網絡信息内容生態治理規定』などの法律に基づき本弁法を定める。

 

この一文で、ライブコマースでの表現も広告法の規定対象になる事が明確化され、国の広告に関するレギュレーションを順守することが求められるようになった。

 

ライブは見終わったら終了となるため、いろいろ手法を凝らして広告法のレギュレーションを避ける手法も見受けられたが「最も~」、「最高の~」などの表現は広告法に基づき使えなくなる。

そのため、ライブコマースマーケティングを考える場合、もう一度『広告法』の内容や、当局から発せられている禁止表現を読み込んでおいたほうがいいだろう。

また第二条では、ライブコマースに関わる存在を以下のように定義している。

  • 直播営銷平台:ライブプラットホーム。ライブ専用のサイトやAPPに限らず、オンラインで「音視服務平台(音楽や映像を提供するプラットホーム、SNS)」や「電子商務平台(ECプラットホーム)」もこれに含まれる。
  • 直播間運営者:ライブプラットホーム上にチャンネルなどを開設する、もしくは自身でライブ配信サービスなどを開設しライブ活動を行う個人や法人、組織
  • 直播営銷人員:ライバーやKOL。ライブ上で直接社会に対して商業、マーケティング活動を行う人
  • 直播営銷人員服務機構:MCNや広告会社。ライブコマースマーケティングを企画、運営、マネジメント、トレーニングなどを行う専門機関

 

こうして定義された存在に対して、同法ではそれぞれが果たすべき役割、責任に対しても言及されている。

これによってライブコマースに関するトラブルにおいても責任が明確化され、法的な追求から逃れにくくしていると考えられる。

 

同法は主に虚偽や偽造などの、消費者権益を侵害する行為に関して細かく定めており、その保護に対する責任を、ライブコマースに関わるそれぞれが負うことを求めていくことになる。

プラットホーム、ライバーにも責任が明確化

それ以外にも注意が必要なのが、ライブプラットホームはライブコマースの健全な運営を行うべく、そのライブのレベルに応じた管理制度を設けることが求められている。

同時にそれに従わないラーバーなどがいた場合は「ブラックリスト入り」として、関連当局に報告する義務を負っている。

 

第十四条

直播营销平台应当根据直播间运营者账号合规情况、关注和访问量、交易量和金额及其他指标维度,建立分级管理制度,根据级别确定服务范围及功能,对重点直播间运营者采取安排专人实时巡查、延长直播内容保存时间等措施。

直播营销平台应当对违反法律法规和服务协议的直播间运营者账号,视情采取警示提醒、限制功能、暂停发布、注销账号、禁止重新注册等处置措施,保存记录并向有关主管部门报告。

直播营销平台应当建立黑名单制度,将严重违法违规的直播营销人员及因违法失德造成恶劣社会影响的人员列入黑名单,并向有关主管部门报告。

 

<筆者訳>

ライブプラットホームはライブスペース運営者アカウントの状況、フォローおよび訪問量、交易量と金額及びその他の指標に基づき、分級管理制度を設置しなくてはならず、そのレベルに応じたサービスは二や機能に基づき、注意が必要なライブスペース運営者に対しては専門人員による巡回やライブ内容保存期間の延長などの措置を行う。

直播プラットホームは法律法規やサービス契約に違反したライブスペース運営者に対し、状況に応じて警告、機能の制限、配信の一時停止、アカウントの抹消、アカウント再申請の禁止などの措置を講じ、かつ記録を保存し関連部門に提出する。

ライブプラットホームは「ブラックリスト制度」を設置し、法律法規を著しく逸脱するライバーおよび社会に悪質な影響を及ぼす人員をブラックリストに入れ、関連部門に提出しなくてはいけない。

 

ここから見ると、ライブプラットホームにはそこで行なわれているライブを監督し、法規定や社会秩序を乱す行為があった場合は、すぐに措置を講じることを求めている。

またブラックリストを関連部門に提出されることで、「悪質なライバー」を共有し、市場から排除していく目的がある。

 

もう一つ注目しておきたいのが、『広告法』に基づき、ライバーの責任を定めた第十九条である。

 

第十九条

直播间运营者、直播营销人员发布的直播内容构成商业广告的,应当履行广告发布者、广告经营者或者广告代言人的责任和义务。

 

<筆者訳>

ライブスペース運営者、ライバーが発信するライブが商業広告である場合、広告発布者、広告経営者もしくは広告代言人の責任と義務を負う

 

『広告法』第五十六条では、「自身が代言人として宣伝している商品が、消費者に対して損害を与えた場合(健康や生命に対する危険も含む)は、その商品を作っているメーカーだけでなく、代言人もその責任が問われる」というという規定がある。

 

そのため、この条文を見ると、万が一自身がライブコマースで紹介した商品が消費者に健康被害やその他の損害を与えてしまった場合はライバー自身も責任が問われることも考えられる。

 

こうした責任感を持ったライブコマースを求め、消費者が安心して購入できる環境を作り上げようとしている模様である。

法律の施行は5月25日となっているが、それはもちろん618商戦をターゲットとしていると考えられる。

今後の動静も注視しておきたい。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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