内面から美しく 中国で広がる「食べる」美容市場

美しくありたい。

そう思うのは洋の東西、性別の如何に関わらず、誰もが思う事。中国では特にその意識と欲求は高く、常に新しい美容ニーズが生まれている。

その中で、2020年から徐々に注目を集めているのが「口服美容」、つまり経口服用によって得られる美容効果のこと。

2021年1月にはその新しい動きも見られた中国の服用型美容市場を俯瞰してみよう。

内面から美しく。「食べる」美容に注目

中国ではとにかく美容に関する市場が伸びている。

毎年5月に上海で開催される国際美容博覧会も年々規模が拡大しており、化粧品市場自体も世界でもトップクラスの規模となっている。

一般的なメイクアップはもちろんながら、美白、アンチエイジング、保湿といった機能性を持ったスキンケア化粧品も、いまだ高い人気を得ている。

 

さらに2020年には「医療美容元年」などともいわれ、医療美容(日本でいう美容医療)が大きくクローズアップされた。

なかでもヒアルロン酸注射や水光注射、ボトックスなど、比較的手軽にでき、高い美容作用のある成分を直接取り込むことで、よりよい美容効果を得ようとする若者が増加しているのである。

 

その中で、徐々に注目を受けているのが「口服美容」。

「口服」とは「服用(経口服用)」のこと。すなわち口から摂取する美容成分という事である。

最も分かりやすいものとしてはコラーゲンゼリーやコラーゲンドリンクなどが上げられる。同時に一時期ホットワードにもなった「美白丸」などの美白サプリなども入ってくるだろう。

 

この服用型美容については、2018年ごろからすでに注目が始まっていた。

 

中国のシンクタンクであるCBN DataとT-Mall Globalが2019年初に共同で行なった『2019口服美容消費趨勢報告』を見ると、オンラインにおける「顔値経済(美しく見せるための消費)」において、もっとも増加しているのが服用型美容商となっている。

 

一部のメディアでは、その市場規模は「2022年までに238億元に達する」とさえ言われており、ドリンクの世界的大手企業であるコカ・コーラ社も同業界への参入を行っているとされる。(出所:口服美容市场将达238亿元,新入局的可口可乐打算怎么做?

また服用する美容商材にはどのような効果を求めいているのだろうか?

同レポートのECプラットホームにおける検索状況結果を見てみると、「美白(シミ消し含む)」が最も多く、次いで「アンチエイジング」、そしてそれからだいぶ減少するが「補水保湿」といった効果を求めている。

特に「美白」、「アンチエイジング」、この2つの効果がずば抜けており、より透き通った肌、そして若々しい自分を求めていることが分かる。

こうした服用型美容商材への興味関心の高さの背景にあるのは、もちろん「顔値経済」といわれるような、美への追究であるのだが、同時に中国特有の要素も存在している。

 

一つには「成分党」と呼ばれるように、商材に含まれる成分に着目し、そのより純なものを摂取することで美しくあろうとする意識である。

こうした消費者は「どんな成分を」、「どのように」、「どれだけ」摂取すればよいかなど、専門的な意識を有しており、こだわりが強い。

 

もう一つは中国に古くからある「内面から体を整える」という漢方的な意識である。

近年は棗やクコ、大豆や黒ゴマなど、中国では比較的身近にある食材を使った「養生」と呼ばれる料理レシピを多く見かける。

化粧品や医療美容などの「外側」からだけでなく、普段食べるものからも美容効果他の高いものを摂取し、美しさを保とうというのである。


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中国では「美」の追究が、まさに「内側」へと進んでいるわけである。

新たな成分の許可で動き出す服用型美容市場

2021年1月、この服用型美容商材に新たな動きがあった。

それは「ヒアルロン酸を大衆食品の原料として認める」というものである。

 

ヒアルロン酸は美肌効果をもたらす成分として、医療美容やなどで使われてきた商材である。しかしその範囲は上記のような、制限付き(容量用法が限られる)、医学的成分としての扱いで、中国での経口服用型ヒアルロン酸の大部分は海外からの輸入。越境ECやソーシャルバイヤーなどに頼らなければならなかった。

 

そもそも、こうした服用型美容商材の大部分は海外からの物が多い。

CBN DataとT-Mall Globalのレポートでも、オーストラリア、日本、ドイツ、フランスそしてアメリカからの輸入が多く紹介されている。

日本では早くからそうした「機能性食品」が展開されてきたことから、コラーゲンを素材に用いた食品も多く、また欧米では2000年ごろから先のヒアルロン酸の食品利用も始まっていた。

 

そうした流れに中国も遅れを見せていたが、2021年に入ってようやく一般食品への許可が発せられた。

それに対し、中国の企業も動きを活性化。製薬大手の華熙生物ではヒアルロン酸ウォーターを開発し、3月には販売を開始している。

 

そのほかのメーカーも、同様にヒアルロン酸食品の研究開発、商品化に着手。同時に海外のメーカーも同様の商品の中国市場進出を計画しているとの情報も飛び交っている。

 

新たな成分も認可によって、中国服用型美容商材の市場もより活性化していくことが予想される。

 

次回はそんな服用型美容市場をクチコミ分析してみよう。

▼次回記事
食べる美容に消費者は何を求める? 中国SNSクチコミ分析で見てみよう

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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