中国のアフターコロナトレンドとして、化粧品業界では「成分党(化粧品に使用されている成分が安全であるかどうかを気にする勢力)」「肌への修復力の高さ(マスク荒れ防止)」が人気トレンドとして挙げられる。
最近、それに加えてじわじわと話題になってきているのが「抗初老(カンチューラオ)」である。
抗初老とは、20代から早期にエイジングケアを行うアーリーアンチエイジングのことだ。なぜ今アーリーアンチエイジングが人気なのか、理由や背景について探ってみよう。
目次
アーリーアンチエイジングの担い手はやはりZ世代。流行の背景とは?
アーリーアンチエイジングとはその名の通り、老化防止のため20代からシミ・シワ対策や、顔のコラーゲン・ハリを保つ対策を取ることだ。具体的な手法は、美容液やクリーム頼りにはなるが、美顔器や医療美容に頼る場合もある。
日本ではアーリーアンチエイジングと聞くとあまり馴染みのない言葉だが、中国では以前から、アーリーアンリエイジングに対してある程度の認識はあった。
例えば中国では20代の若者が、エイジングケアに注力した商品、例えばSKⅡなどに注目し、使用している点である。
これは「アーリーアンチエイジング」と呼べるものの、初期にはこうした定義や名称が確立しておらず、ニーズはあったが独立した市場としては形成されてこなかった。
だが最近、この「アーリーアンチエイジング」が市場として注目されており、更なる盛り上がりを見せている。
2018年から2020年にかけて、ECでのエイジング商品全体の消費比率は、Z世代を含めた90后や95后が約半数を占めるようになっている。
▼参考記事
安全成分、强效修护、抗击初老,后疫情时代护肤消费有哪些新热点?(CBNDate)中文
つまり、エイジングケア商品の中でも、約過半数がアーリーアンチエイジング対策の化粧品の売れ行きで占められているということだ。
2021年時点では20代=Z世代となるが、そのZ世代が2020年に購入したスキンケア用品は下記のような構成になっている。
【グラフ】2020年にZ世代が購入したもの
出所:亿邦动力(ebrun)『“抗初老”热潮下 什么品类会成为新风向?』
単純な購入の多さだと保湿関連が一番多く、ついで美白が占めている。ここまでは巷で言われているトレンド通りである。
しかし伸び率に注目してみると、アーリーアンチエイジングが32%と一番と大きな伸びを見せている。先のエイジング商品の売り上げ構成比率のことも考慮すると、アーリーアンチエイジング市場の需要が高まっていることが理解できる。
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さて中国のZ世代は、日本のZ世代と同じく「映え」や「顔の盛れ」を気にする世代である。
ここ最近アーリーアンチエイジングが注目されていることは前述のグラフにあるように理解できると思うが、Z世代はどういったきっかけでアーリーアンチエイジングに興味を持ったのだろうか。
根底にあるのは「Z世代の美意識の高さ」である。
具体的な理由としては2つが挙げられる。
1つは、ブルーライトや寝不足によって将来的にできるであろう、クマ・皺・シミを防止したいという理由だ。
デジタルネイティブと言われているZ世代では、学業・プライベートともにスマフォ・PCを見ている時間が他の世代と比較して長い。加えて、勉強や仕事、遊び、SNSなど、夜更かしによる睡眠不足も顕著である。
ブルーライト×寝不足という、肌への負担が大きい原因にまみれた生活をしている。
そしてもう一つ、アーリーアンチエイジングに注目するきっかけになったのが、「美顔器の流行」である。
前述のようにZ世代は美容や美しさのキープには余念がない世代であり、美顔器は「家で気軽に顔をケアできる」という手軽さが受け入れられている。
まだまだ80后90后が美顔器市場の購買中心層となっているが、伸び率で見るとZ世代が他の世代を圧倒しており、今後の美顔器市場を支える世代になると言われている。Z世代の美容方法は美容液など化粧品に頼るだけでなく、美顔器も手段の一つなのである。
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さらにもともと美顔器への関心が高かったことに加え、コロナ期の外出自粛も後押しする要因となっている。
外出自粛によりライブコマースを見る機会が増えたこと、ライブコマースで美顔器自体の紹介が増えたこと、自粛でサロンなどにも行けないため家で巣篭もりケアできる製品の需要が増えたためだ。
Z世代は、他の世代と比較して美意識や、自己実現欲求なども高い。「今の生活スタイルは崩さないまま、将来的にも美しくあるため対策は取りたい」という欲求を満たすのがアーリーアンチエイジングだったのだ。
SNSでのアーリーアンチエイジングに関する反応は?
じわじわと注目されているアーリーアンチエイジング市場は、SNSでの反応はどうだろうか。
小紅書(RED)では「抗初老」で27万ノート、抖音(douyin)では「抗初老」で3,600投稿見られ、アーリーアンチエイジングに関する投稿は少なくはないことが見られる。
筆者が目視した限りでは、医療系KOLがアーリーアンチエイジングの医学的な対策投稿をしている様子も見られる。
また「〇〇の美容成分がアンチエイジングに効果がある」「アーリーアンチエイジングには〇〇を食べるといい」といった成分党のような分析をした投稿も見られる。
最近の傾向として、成分党に加え、化粧品を科学的に分解して見ていくことが流行していることも見られる。
次回はトレンドExpressのクチコミ簡易分析を使って、Weiboでの反応や、消費者に人気のブランド、どういった商品が求められているのか等、より詳しく見ていこうと思う。