2021年の中国商戦期も本格的にスタートした。T-MallやJD.comは例年よりも前倒しで618の予約期を開始させた。
その一因となっているのはショート動画サービス抖音の本格的な商戦参入であるだろう。当初はユーザーによる動画投稿・共有サービスとして登場した同アプリは、現在ではそれを超えてEC機能や「抖一抖」というコミュニティ機能を付随させ、新たなSNS像を作り上げている。
前回は抖音のECについての情報を紹介したが、今回は基礎的な内容も含めて、改めて抖音について振り返って見たい。
目次
618でも引き続き台風の目に
まずは、現在進行中の618である。
今年は大きな動きがあった。
それは中国EC業界トップ2の1つ、JD.comが抖音の持つEC機能である「抖音小店」へ正式に出店した事である。
JD.comは抖音小店内で、今年200億元のGMVを目指すことを表明しており、非常に強い意気込みを感じさせている。
その抖音による618、6月1日の結果がすでにデータ分析され、公表されている。
それを見ると京東1600万元余りを販売して、単日で2位につけている。
巨大ECプラットフォーマーとして人気のJD.comも抖音とのタイアップによる効果を求めているのが、現在のEC-SNSの関係図式なのである。
改めて考える。抖音はその他のSNSと何が違うのか。
まず抖音は小紅書(RED)などとは異なり、ユーザーが自分から情報を探しに検索していくものではなく、自動的に次から次へと動画が流れてくるSNSである。
そうした動画に「いいね」や「コメント」などを行っていく中で、AIがユーザーの嗜好を分析し、お薦めの動画を表示させていく。
それが「中毒性がある」などといわれる要因になっている。
こうしたシステムは、抖音を他のSNSと一線を画した存在としているといえるだろう。
一般的なSNSは、フォロワーが「発信者」につくことが多い。
発信者の属性によってその投稿内容が見られ、フォロワーが増えてくるケースが多いのが現状である。
しかし、抖音はコンテンツ、すなわち投稿された動画の質に依存している。
抖音ではどのようなユーザーの投稿でも、ほぼ必ずどこかの人が見るような仕組みがなされている。
その中で閲覧数が一定数を超えると、関連の内容に興味がある別のユーザーに自動的におススメされていく(「おすすめフィード」)。
そうすると、それを見たユーザーは「いいね」ボタンや「コメント」などを残したり、その動画投稿者をフォローするといったアクションにつながってくる。
結果として投稿者にフォロワーはついてくるのであるが、小紅書(RED)のように「有名人による投稿だからフォローする」のではなく、非常に「クオリティの高い動画なのでフォローする」といった図式になっているのである。
そのため、抖音によるKOL動画投稿であっても、「どんなクリエイティブの動画を投稿するか」のほうが、「どのKOLに投稿させるか」よりも重要性を帯びてくるのが抖音なのである。
逆説的だが、KOL動画を配信しても、そのクオリティが低ければ、おすすめフィードには乗ってこず、効果が上がらない、という一因になる。
ユーザー視点で見れば、次から次へと自分気に入りそうな、かつ一定レベル以上のクオリティ動画が表示されるため、それを求めてユーザーが集まり、まさに「トラフィックの宝箱」と化しているのである。
抖音マーケティング、単純な“投稿”に終わらない施策
そうした中国における新たなSNS像をもたらした抖音。
中国において最も注目されるマーケティングの場となっており、一般消費材からラグジュアリーブランドまでが抖音への広告投下を展開し、消費者へのアプローチを図っている。
すでに知られている通り、抖音はトラフィックの宝庫である。
人気KOLによる紹介動画をここに投下すれば、非常に高い効果が得られると思われている。
しかしそれは必ずしも正確ではない。
前述のように、抖音が他のSNSと最も異なることは、「投稿者」に「ユーザー」が付いているのではなく、「投稿された動画の価値にユーザーが付いている」のである。
そのため、KOLが投稿した商品紹介動画も、投稿時には再生回数が伸びても、ユーザーの多くはすぐ次の動画へと移っていってしまう。
よほどクリエイティブな動画で無ければ、1回のKOL投稿でバズるという可能性は比較的低い。
そうした状況下で抖音が可能としているのが、こうしたKOL動画をインフィード広告として活用するという点である。
インフィード広告であれば、あらかじめ設定された条件の元、抖音の持つ嗜好解析機能をベースに、動画で紹介されている商品・内容に興味を持つ可能性の高いユーザー向けて動画が表示される(もちろんこの際には“広告”の表示が明記される)。
そうした表示されたインフィードKOL動画では、そのまま抖音小店をはじめ、T-Mallの旗艦店への転移も可能であるため(ライブにおいては外部ECへの転移はできない)、再生数を伸ばし、それを刈り取りに結びつける可能性を高めることができるワケである。
抖音の持つトラフィックを有効に生かすためには、その特性や機能の熟知、そしてユーザーの心を満たすクオリティの動画をどこまで押し出せるのかがカギなのである。
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