中国Z世代「美白」「クリーンビューティ」に続く 新しい勢力「アーリーアンチエイジング」とは?Vol.2~クチコミ分析から読む~

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アフターコロナのトレンドとして、新勢力になっている“抗初老(カンチューラオ)”、いわゆるアーリーアンチエイジング市場。前回に続き、今回はトレンドExpressの有するクチコミ分析の簡易調査機能を用いて、消費者のトレンドや、注目ブランド、ブランドの施策などを探ってみた。

▼前回の記事は
中国Z世代「美白」「クリーンビューティ」に続く 中国コスメの新しい勢力「アーリーアンチエイジング」とは?

商戦期にクチコミ増。人気ブランドはSK-Ⅱのみにあらず

まずは「抗初老(アーリーアンチエイジング)」のみでクチコミ推移を見ていくと、3月、6月そして11月にクチコミ件数が緩やかに上昇していることが見られる。それは婦人節、618、W11といった商戦期にあたり、こうした商戦のマーケティング活動においても「抗初老」というキーワードが試用されていることが想像できる。

【グラフ】「抗初老」キーワード件数の月次推移

 

全体を見ると、通常時には1.3万程度で推移し、商戦期には1.5〜2万程度までクチコミ件数が増加することが見られる。

季節や温度に影響される市場ではないため、通年通して気になるテーマとして一定のクチコミが醸成されているといえるだろう。

またポジネガ比率ではニュートラルな内容が圧倒的に多く、抗初老を始めた報告や、抗初老に関するおすすめ商品を伺う投稿などが多いと考えられる。

【グラフ】「抗初老」キーワードのポジネガ比率

 続いて、クチコミの具体的な中身に関して見てみよう。Weibo上で「抗初老」のワードと、関連があるワードランキングは下記のようになっている。

【表】「抗初老」関連キーワードランキング

各部分で網掛けになっているのは、赤が成分、青がブランド、緑が具体的なブランドや商品である。

 

まずランキング上位には、美容液の意味を示す「エキス」や「エッセンス」、保湿関連のワードのほか、「パック」、「クリーム」、「アイクリーム」と言ったワードが入っている。

抗初老のスキンケア方法として、「クリームやパックで保湿をしっかりしつつ、アドオンで美容液も使用して対策」を行なっていることが考えられる。

中でも具体的な商品は、韓束(中国のブランド)のパック、ロレアルのアイクリーム、SK-Ⅱの美容液が抗初老のアイテムとして上がっている。

SK-Ⅱは、中国ではアンチエイジングケアの走りとして有名なブランドであり、以前から根強く支持されている。アーリーアンチエイジングをする際も、購入ブランドの候補としてSK-Ⅱが検討されていることがわかる。

韓束は、アジア人の肌に適した専門的な商品を提供する中国のブランドである。ブランドの使命としてアンチエイジングも掲げており、アジア人の肌に合った商品で、かつアンチエイジングも両方とも専門的な研究をしていることから人気が出ている。

 効果は“アイロン”級の「丸美」が奮闘。鍵はZ世代にマッチしたSNSの使い方

ロレアルやSK-Ⅱ、また韓束など、メジャーなブランドが上がっているが、それに混じって登場しているのが「丸美MARUBI」である。

 

同ブランドはエイジングケアに特化した中国のブランドである。

他のブランドと比較するとやや安価であり、若者でも手に入りやすい金額になっていることから、アーリーアンチエイジングを始めようとする若者に人気になっていると思われる。

なかでもアイクリームが人気であるほか、美顔器とエイジングクリームが一体化した商品が人気である。美顔器ブームや、クリーム・美顔器一体化という商品の目新しさ、希少性から話題になっている。


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また丸美は、SNSでのマーケティングも、メインターゲットであるZ世代に刺さる展開をしていることが見受けられる。

 

Weibo、小紅書(RED)、抖音(douyin)などの複数のプラットホームで数多くのKOLによる投稿が見られ、各々が使い心地や使い方の紹介をしている。

一般的なプロモーションのように見えるが、これがこの商品と非常にマッチした方法なのである。

というのも、丸美のこの商品はクリームと美顔器が一体になっている目新しい品のため、何も知識がない状態では適切な使用方法などが分かりづらく、心理的に使用することに敷居が高い印象を受ける。

しかし、KOLや一般人が使用している様子をSNSに大量に投稿することによって、消費者は実際に他者が試用している様子を目にし、自身の使用方法をイメージしやすいのである。

そして何よりも、美顔器からクリームが出てきて、それをコロコロと顔の上でマッサージしている珍しい様子は、新しいもの好きのZ世代に「試したい」という欲求を起こさせる。

 

さらに「いざ購入」となった際の金額も、アイクリームに関しては6本セットで380元程度と手が届きやすく、購入に至る心理的ハードルも低い。

 

つまり「何か気になるものがあれば、まずはSNSで検索をする」Z世代と相性がいい商品であり、Z世代の “种草”心(誰かのおすすめ紹介から、自分が欲しいという気持ちにさせられること)をくすぐる仕組みになっている。

 

丸美は代言人も大陸だけではなく、台湾・香港出身の人気芸能人(彭于晏、梁朝偉、周迅、魯豫、楊子姍)も起用しており、グローバルに展開することを視野に入れていることがうかがえる。

複数のSNSプラットホームを通じ、商品情報をふんだんに発信するプロモーション方法も含め、アーリーアンチエイジング分野の「花西子」や「完美日記(PerfectDiary)」といった位置付けである。

丸美のクリーム一体型の美顔器。林墨という代言人を起用

小紅書(RED)でのアイクリーム美顔器のKOL投稿。美顔器からエイジングクリームが出てくるという珍しい商品

中国では化粧品には正式な商品名とは別に、馴染みやすいあだ名・愛称がつけられることが多いが、この抗初老化粧品にも、面白いニックネームが付けられている。

 

例えば丸美のアイクリームのニックネーム「アイロンクリーム」である。

その意は「目元のシワをアイロンのように伸ばしてくれる」というものである。このキャッチーなネーミングが消費者に刺さり、覚えやすいため話題になっている。

中央2つ目の文章内の「纹路烫头」がシワのばしアイロンクリームの意味である

こうした印象的なニックネームも、丸美商品に興味を寄せるきっかけとなっている可能性も高い。

 

アーリーアンチエイジングの市場の担い手は、当然ながらZ世代を多く含んだ20代が中心となる。

クチコミ簡易調査を見てもすでに複数のブランドが名前に上がるほどブランドの間の競争も顕在化している。

そのなかでZ世代にアプローチするためには、彼らのツボを抑えた商品を売っていくことが不可欠だ。商品のアンチエイジングの効果があることは大前提で、話題性としてキャッチーな名前と、SNSでのプロモーションが不可欠になる。

アーリーアンチエイジングも、やはり「成分」が命

さて視線をクチコミワードにもどすと「アンチリンクル」「ナイアシンアミド」「酵母」などがランクインしているほか、「成分」というワード自体もランクインしていることが見て取れる。

化粧品に含まれている美容成分を重視する「成分党」がトレンドとなっているように、アーリーアンチエイジング市場も成分軸から見る概念が流行。

関連キーワードランキングにも特に美容液は何の成分が配合されているのか注視される傾向が強い。

それぞれの成分の効用の投稿なども存在

さらに、抗初老との関連キーワードランキングに「葡萄の種(グレープシード)」がランクインしているように、美容成分だけでなくサプリメントや食など、内服してアンチエイジング対策を取っていることも見られる。

グレープシードのサプリの投稿。アーリーアンチエイジングに効果ありと紹介されている

アイロン並みの「シワ伸ばし」効果やより有益な成分など、中国Z世代はアンチエイジングにおいても多数の情報を取得し、研究に励んでいる様子。

同市場の伸びしろも期待できるとともに、その市場競争も激しくなると予想される。早めの対策が肝心である。

 

▼本記事でも活用している消費者心理、プレーヤー動向を細かく分析するトレンドExpressの「中国SNS分析」について、詳しくお知りになりたい方は、「こちら」までお問い合わせください。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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