コロナ禍の夏休み 中国の旅行ニーズをクチコミから見る

中国消費者の新たな爆買い聖地「海南島」で何が起こっているのか。
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8月。夏真っ盛りであり、世界共通のバケーションシーズンである。

もちろん中国でも同様である。

しかしながら、2020年から夏の過ごし方が一変した。新型コロナウイルスによって、移動範囲がそれ以前に比べて大きく縮小した。

現在でもその状況は続いているが、中国国内の観光と海外旅行への関心事についてクチコミ調査を中心に見ていこう。

2020年国慶節からの本回復、高い中国国内旅行への関心

トレンドExpressではWeiboにおける「国内旅行」、「海外旅行」、「海南島旅行」、「海南島免税ショッピング」、そして「訪日旅行」、それぞれのクチコミ簡易調査を実施した。期間は2020年7月から2021年6月までの1年間である。

 

その中で「国内旅行」と「海外旅行」に関するクチコミ件数は、以下のような推移を見せている。

【グラフ】「国内旅行」・「海外旅行」クチコミ件数推移

出所:TrendExpress China調べ

まず「国内旅行」に関しては2020年7月以降、月平均で6,500件程度のクチコミ件数が見える。

ただし、2020年では本来高まるべき7月、8月のクチコミ件数は思ったよりも多くなく、9月および10月に集中している。

9月に9,345件 、10月には16,675件と一気に突出しているのは、やはり外出規制に対するリベンジ観光によるものが大きいと予想される。

中国では比較的早い段階で2020年の新型コロナウイルスの影響が薄まってきたが、観光業としての復活は10月の国慶節シーズンだったことが見て取れる。

 

それと対照的なのが「海外旅行」に関するクチコミ件数である。

1年間を通じて1万件未満、月平均でも790件程度しか見られない。

中国では比較的早い段階で日常生活が回復しつつあったが、日本を含めた海外では新型コロナウイルスが猛威を振るっており、どこも国を閉ざしていた。

同時に中国も蔓延がいったん下火になったものの、再度の蔓延、特に「海外からの流入」を極度に警戒していたため、中国消費者も海外に出かけたくても出かけられないという状況にあったことがクチコミ件数にも現れている。

 

クチコミのポジティブ・ネガティブの比較を見てみても、その状況が分かる。

【グラフ】「国内旅行」・「海外旅行」クチコミのポジ・ネガ比率比較

出所:TrendExpress China調べ

国内旅行に関してはポジティブワードが10%を占めているが、海外旅行に関しては7%程度と、国内旅行に比して低い値になっている。

 

これを見てみると、海外旅行に行けない分、国内旅行を楽しもうという意識が高まっているのかもしれない。

国内は民族風情旅行、海外では「コロナ情勢」に注目

ここから、この「国内旅行」および「海外旅行」のクチコミの中身を見ていこう。

以下の表はそれぞれのワードと同時にクチコミをされたキーワード上位30である。

【表】「国内旅行」、「海外旅行」クチコミキーワードランキング

出所:TrendExpress China調べ

やはり「疫情(コロナ情勢)」というキーワードがともに上位にあり、いまだ観光意識に影響を与えていることが分かる。

特に海外旅行に関してはトップに来ており、同時に「ワクチン」や「患者数」、「ウイルス」、「PCR」、「マスク」、「コロナ(肺炎)」など、新型コロナウイルスに関するキーワードが高い。

当然のことながら、海外旅行において新型コロナウイルスが障壁となっていることは間違いなく、旅行先として興味のある国「韓国」、「日本」、「アメリカ」、「イギリス」などの新型コロナ患者数などの情勢が気になっている様子である。

 

今後はこれらの国のコロナ対策及び情勢、海外からの入国条件の変化などによって、クチコミも大きく変化してくると考えられる。

 

それに比べて国内旅行は「コロナ色」が若干薄く、「観光エリア」や最近人気の「文化」旅行などのキーワードが上位になっている。

また「正常な状態(中国語では“常態”)が上位に挙がっており、国内旅行の意識の上ではコロナウイルスの脅威は弱まり、以前のような観光ができると考えている様子が見て取れる。

 

また「ステーションワゴン」とあるのは、現在中国では自家用車で旅行に出る「自駕游」が人気であり、こうした旅行の車種として人気が上がっている様である(都市型SUVなども同様)。

 

具体的なエリアとしては「三亜」、「貴州」、「福建」などが上がっているが、これらの都市は少数民族の風情を味わえる観光地である。

国内旅行の高まりももちろんだが、国潮など「中国」特に「中華民族を形成する要素としての少数民族文化」を味わう旅が人気となっている。

 

こうした旅行はZ世代に多く見られるが、同時に豪華な旅行というよりは「価格を抑えた、格安旅行」へのニーズが高まっていることにも注意が必要だ。

こうした旅行は団体旅行とはまた異なり、民宿などやLCCを活用し、リーズナブルにかつ自由に、自分らしい旅を求めている。

 

上述の自動車旅行ももちろんだが、よりこうした個性的な旅行の広がりにも注目しておきたい。

 

興味深いのは「国内旅行」、「海外旅行」の双方で海南省の「三亜」がキーワードとして挙がっていることである。

国内旅行としてはビーチリゾートとして、同時に2020年7月から離島免税制度が拡大されたことから海外旅行に変わる免税(リーズナブル)ショッピングのメッカとして人気が高いのである。

 

この海南島旅行に関しては次回、より深く掘り下げて分析してみたい。

 

ただ、2021年8月に至って、中国側の状況もあまり楽観視できなくなってきた。

7月20日に江蘇省南京市において新型コロナウイルス患者が検出されて以来、新型コロナウイルス、しかもデルタ株と思われる患者が中国各地で増加してきたのである。

目下のところ一部の都市では大規模なPCR検査や移動制限が行われているとの報道もなされている。

 

そのあおりを受けて国内旅行の「おあずけ」を食ってしまった消費者も増加中だ。

中国だけではなく、世界を自由に観光できる日が早期に訪れてほしいものである。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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