コロナ禍でも衰えない訪日旅行への関心も予断を許さない現状が

中国国内で高まる国内旅行ニーズ。注目を集める海南島。

そこで高まるのが「インバウンドは復活するのか?」だ。

コロナ禍で出国観光がままならない中、中国消費者たちは日本への旅行をどのようにとらえているのだろうか。

トレンドExpressの簡易クチコミ分析を使って訪日旅行に関するクチコミを探ってみた。

年間クチコミ件数は国内旅行に匹敵する訪日旅行

早いもので日本の街角から訪日旅行客の姿が消えてすでに1年以上が経過している。

2020年の春節までは、数多くの中国消費者が日本、それも東京や大阪のゴールデンルートのみならず、各地の観光スポットに出現していた。

2019年には959万人という中国消費者が日本を旅し、そしてショッピングを楽しんでいたのである。

 

しかしそれも2020年には急転。インバウンドビジネスも、長い雌伏の時が続いている。

トレンドExpressでは、将来のインバウンド需要を予測すべく、国内旅行、海外旅行、訪日旅行および海南島旅行に関するクチコミ簡易分析を行った。

期間は2020年7月から2021年6月の直近1年間で、SNS「微博(ウェイボ)」のクチコミを取得した。

 

まず、国内・海外旅行および訪日旅行に関するクチコミ総数の比較を見てみよう。

【グラフ】直近1年間の国内旅行、海外旅行、訪日旅行クチコミ件数比較

出所:Trend Express China調べ

これを見ると最も多かったのが「国内旅行」のキーワードで7万8000件余りに達しており、国内旅行に対する関心度の高さが見える。

特に国内旅行ではこれまで見てきたように若者を中心に、自動車旅行に加え校外でのキャンプニーズなどの新たな旅の楽しみ方も増えており、国内旅行を盛り上げている。

 

翻って「海外旅行」では年間を通しても1万件に満たなかった。

新型コロナウイルスによって各国が門を閉ざし、中国も自国の帰国者へ対する厳しい隔離政策を取ったことで、海外への渡航は事実上不可能になっている。

そのためクチコミにおいても海外旅行に関するクチコミが激減しているのである。

 

ただ興味深いのは「訪日旅行」のキーワードのクチコミ件数が約6万6000件に達しており、国内旅行ほどではないが、極めて大きな数値に達している点である。

 

各クチコミのポジティブ・ネガティブ比率を見ても、訪日旅行に関するポジティブクチコミは全体の15.4%と高い値を示している(国内旅行は10.3%。海外旅行は15.4%)。

【グラフ】国内旅行、海外旅行、訪日旅行クチコミのポジネガ比率比較

出所:Trend Express China調べ

やはりコロナ禍においても中国消費者の日本への旅行はポジティブな期待値が高い事が見て取れる。

注目の観光地&コト消費ニーズも、観光熱が冷める兆しが

続いて、中国消費者のコロナ禍においても訪日旅行に関するクチコミキーワードを見てみよう。

【グラフ】訪日旅行クチコミキーワードランキング

出所:Trend Express China調べ

訪日旅行に関するキーワードランキングには、もちろん「コロナ状況」「患者数」といったキーワードもあるが、「東京」、「京都」、「北海道」、「富士山」といった観光地や、「さくら」、「神社」、「温泉」といったおなじみの観光コンテンツが上位にあり、コロナ禍においても日本への観光は依然として高い興味を得ているようである。

 

また「和服」や「グルメ」といった、観光地での楽しみもクチコミに上がっている。

さらには「電車」とあるのは、中国消費者に人気の江ノ島電鉄の踏切を想像するが、多くの中国消費者は東京などの大都市内でも移動に電車やバスなどの公共機関を活用していることが多い。

特に日本のドラマやアニメなどのコンテンツファンにとっては、作品に登場する電車風景などは中国で見ることのできない、いわゆる「日本の風物詩」なのである。

 

ちなみに「ショッピング」というキーワードは上位になく、旅の目的が日本というコンテンツを楽しもうとする純粋な「観光」に近づいているようにも見える。

実際に旅に来ることができないため、より「風情を感じたい」というコト消費への関心が高まっているのではないかとも予想される。

 

ただ、若干楽観視できないのは、訪日旅行に関するクチコミ件数の月ごとの推移である。

2020年7月頃には9000件近い投稿があり、12月までの平均でも6600件ほどあったが、今年に入ると平均4000件程度と下落している。

【グラフ】訪日旅行に関する月ごとのクチコミ件数の推移

出所:Trend Express China調べ

原因は日本における新型コロナウイルスの状況である。

クチコミキーワードでも「疫情」や「肺炎」など、新型コロナウイルスの状況に関するキーワードが上がっている。

 

ひと昔前とは異なり、中国にいてもSNS等を通じて日本の状況をほぼリアルタイムで把握することが可能な時代に。

特に日本に関心のある人ほど、WeChatやWeiboの日本情報アカウントや日本在住中国人による発信などを通じて、素早く的確に日本の情報をキャッチしているのである。

 

こうした消費者にとっては、日本の主要都市で緊急事態宣言の解除・発令が繰り返されることで、「まだ駄目か」、「いつになったら」という思いがつのり、「あぁ、まだしばらくはダメだな…」と日本への旅行熱意も冷め気味になっているのではないだろうか。

 

こうした中、いつインバウンドが回復するかは見通しが立たないのが現在の状況。連日メディアで報道されているように、最大の観光地である東京でも患者数が増加している。

インバウンド復活にはワクチン接種の普及などにより、新型コロナウイルスの蔓延状態から脱却する必要がある。

 

しかし同時に重要なことは、こうした日本に関心があり、日本の旅行を楽しみにしている消費者の熱量が冷めないよう、日本の観光情報、「いつか日本に行きたい」と思われる日本の魅力を発信し続けていくことであろう。

 

そしてまた、日本ファンたちが安心して日本を楽しんでもらえる日が戻ることを願いたい。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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