新型コロナウイルス蔓延以降、世界中で欠かせなくなった生活必需品が「マスク」。一部の国ではワクチンの浸透などからマスク着用の解禁が始まっているが、それでも日本はもちろん多くの国で奨励されている。
そうしたマスク環境の中で注目されているのが「目元のオシャレ」だ。
一部ではアイシャドウやアイライナーなど、目元を飾るメイクアップの売れ行きが伸びていたという現象もあったが、現在、中国では「瞳」を彩るアイテムが若者、そして資本家からの熱視線を浴びているという。
9月は中国で高まる「瞳のオシャレ」を、クチコミ分析などを用いつつ眺めていくことにしよう。
目次
市場は徐々に拡大傾向 人気ブランドの参入も
中国では今、「美瞳(mei tong)」ニーズがZ世代を中心に高まっている。
美瞳とは読んで字のごとく、「瞳」を美しく見せること。すなわち瞳の色を変えたり、大きく見せたりするカラーコンタクトレンズの事。
現在中国ではカラーコンタクトレンズ市場が消費者、投資家双方からの注目を集めている。
人気を示す現象の1つが、日本の中国事業界隈でもよく知られた「完美日記(PerfectDiary)」のカラーコンタクトレンズ市場への本格参入だろう。
すでに中国国産メイクアップブランドとしてその地位を確たるものとした同ブランドが、ついなるターゲットとして選んだのがカラーコンタクトレンズ市場だったというのは、決して思い付きなどではなく、そのニーズを読んだものだったと考えられる。
市場全体を俯瞰できるデータは決して多くは無いのだが、わずかに中国のシンクタンク智研諮詢が美瞳市場の市場規模および予測値を算出している。
【グラフ】美瞳市場の市場規模とその予測値の推移(単位:億元)
出所:智研諮詢(https://www.chyxx.com/industry/202011/907789.html)
このデータによると2015年には約7億元余りであった美瞳市場も、少しずつ成長を続け、2020年には17.5億元、さらに2026年ごろには約35億元にまで達するとの予想がなされている。
コンタクトレンズには1日用から1ヶ月、半年、1年用などの違いがあるが、平均単価としては100~200元程度である。
その単価の商品で年間17億元は、比較的多くの数が流通していると考えることができる。そしてそれは年々増加傾向にあるのである。
資本が集まる中国美瞳カラコン市場
今年2月には中国国内の設立わずか3年程度のスタートアップMoodyが「ラウンドB」および「B+」、総額3.8億元の資金調達を行っている。
同ブランドの天猫旗艦店を見てみると「人気断貨王(売り切れ王)」というキャッチコピーとともに、非常に異なる商品シリーズ、かつシリーズごと複数の色を持ったカラーコンタクトレンズが並んでおり、Z世代が求める「より自身に合った色」を選ぶことが可能となっている。
コンタクトレンズだけでなく「ヒアルロン酸入り保湿点眼液」など、目の渇きに悩む女性向けケア商品なども販売されており、まさに「瞳の総合ケア」というメッセージを発信している。
しかも同ブランドだけではなく、同じく中国ブランド4iNLOOKもMoodyと全く同じ時期に数億元規模の資金調達を行っており、同じように市場開拓に力を入れているという情報もあり、中国ベンチャーキャピタルの資金が業界に流れ込んでいることが見て取れる。
中国トレンドExpress編集部ではその人気の状況を知るべく、「美瞳」に関してWeiboクチコミ簡易分析を実施したが、そこからも資本の流入による盛り上がりが見て取れる。
【グラフ】「美瞳」に関する月次クチコミ件数推移
出所:Trend Express China調べ
これを見てみても、2021年に入ってからクチコミ件数が急増、それは5月以降も反映されており、クチコミ件数の増加、すなわち市場の盛り上がりが見て取れる。
資金調達を行った新鋭ブランドが、調達した資金を使用してマーケティング活動をさらに活発化させていることがその背景にあると考えられ、いずれのブランドも一気に市場を取りに行っているように見える。
中国Z世代の美瞳ニーズ 目的はひとえに「顔値」アップのため!
こうして資本家も巻き込んだ中国の美瞳コンタクトレンズだが、その背景にあるのは消費ニーズの高さゆえに他ならない。
中国ではそもそも近視率が高い。
一説では国内の約半数に達する7億人が近視とされており、眼鏡やコンタクトレンズなどの需要が非常に大きいのである。
さらにその7億人の内16歳から24歳の、いわゆるZ世代と呼ばれる若年層が多くの比率を占めており、コンタクトレンズ市場の多くをZ世代が担っている。
この世代の特徴といえば、そう「SNS世代」である。
特に映える写真や自撮り写真をSNSにアップし、それによって自己承認欲を満たすという点においては、他の世代を抜きんでたものがある。
その中でも自撮り写真における「顔値(顔面偏差値)」には非常に高い関心・注意を払う傾向が強く、映えるメイク術に加えて写真加工アプリなどの使用もお手の物である。
こうした顔値の延長線上にあり、より個性を引き立たせ、彩を与えるアイテムが瞳を鮮やかに見せる「美瞳コンタクトレンズ」というわけである。
同じく智研諮詢の調査で美瞳コンタクトレンズを使用する理由を見てみよう。
【グラフ】美瞳コンタクトを使う理由
出所:智研諮詢(https://www.chyxx.com/industry/202011/907789.html)
これを見ると圧倒的に「顔値アップ」を理由として挙げている。
また小紅書の「美瞳」や「美瞳×顔値」などで検索すると、数万件の投稿が確認でき、いずれも美瞳コンタクトレンズの効果、また複数カラーのイメージ比較など、多様なノートが投稿されている。
まさに「映える中国SNS女子」の必須アイテムとなっているのである。
次回はこうした現代、中国Z世代女子にとっての必須アイテムとなりつつある美瞳コンタクトニーズをクチコミ分析を用いてみていこう。