見えない中国を見える化するデータ分析とは? 中国データを語るウェブセミナーリポート Vol.1

市場の重要性は認知されていても、なかなか見えづらいのが中国の市場であり消費者。それでも各種データを集めてとにかく分析しているのが現状ながら、そうしたデータをどのように扱えばよいのだろうか?

2021年9月、そんな「中国のデータ分析」を語るウェブセミナーが開催された。

株式会社トレンドExpressの『見えない中国市場を「見える化」 データ分析による課題解決実践法!』である。

当日は中国市場の最前線で中国のデータを基にしたマーケティング活動を展開されている佳麗宝化粧品(中国)有限公司(カネボウ中国)の宮下和也董事が登壇し、自らの体験を紹介。

100名以上が視聴した注目のセミナーをレポートしていこう。

 

<登壇者>

宮下 和也

Profile

佳麗宝化粧品(中国)有限公司 董事 事業統括本部統括本部長

兼)花王中国投資公司 化粧品事業部市場本部長

96年  花王入社

家庭品(パーソナルケア)事業本部

※スキンケア~ヘアケアの各ブランド戦略を担当

09年  KCMK(販売戦略部門)・化粧品担当

※日本国内の化粧品販売MKを担当

12年  ソフィーナ事業部 ブランドマネジャー

20年  佳麗宝化粧品(中国)有限公司

董事 事業統括本部統括本部長

兼)花王中国投資公司 化粧品事業部市場本部長

 

<モデレーター>

濱野 智成

Profile

トレンドExpress代表取締役社長

大学卒業後、世界有数のコンサルティングファームであるデロイト・トーマツ・グループに入社。

120社以上への経営コンサルティング支援を行い、グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。

株式会社ホットリンクに参画後、COO(最高執行責任者)としてグローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事、コーポレート部門を統括。

新規事業として立ち上げた株式会社トレンドExpressをカーブアウト型で分社化して代表取締役社長に就任。

累計資金調達12.8億円を先導し、クロスボーダービジネスの先駆者として東京と上海をベースに活動中。

中国は市場データの宝の山? しかし見られる範囲に限界も

かたやブランドの中国市場マーケッターとして、かたやデータをベースにした市場開拓サポート提供者として、日々中国のデータにふれ中国市場と向かい合っている2人の話は、中国のデータ環境についてから始まった。

 

濵野 私たちの共通の話題として、中国市場と日本市場でやっぱりそのデータセットが違うよねっていうのがあるかなと思っております。その市場におけるデータセットの違いを把握して、どんなデータを収集して行くべきなのか?宮下様が中国に行かれてから実践されている内容も含めて、お話しいただけますでしょうか。

 

宮下 私は2020年の春、初めて中国に赴任しました。

赴任前から「中国はいろんな分野のデジタルシフトが一気に進んでいて、データ量が非常に豊富だから、マーケティングやる上では、宝の山だよ」っていうようなことを聞きながら来たんです

確かに受けた実感としては、データは本当に豊富で、怖いくらいいろんなものがつながっているというところは確かにあります。

生活していても電話番号1つでインフラがすべて繋がっている。僕が自転車に乗るのも、携帯を使えば、その辺にあるシェア自転車を借りてどこまででも行ける。

そういうことも含めて非常に便利だし、すべてが繋がっていて、生活行動パターンが購買データとすべて結びついている強さというのがあり、取ろうと思えばそうしたデータも取れる、非常に凄い国だなというのは思いました。

ただ実際に仕事の中で、そのデータを使いこなしていく上で、データ量は非常に豊富なのですが、それぞれのプラットホームの内側で閉じちゃってるといいますか、それらを俯瞰できる、プラットホーム間をまたいだデータというのは無いんですね。

「化粧品市場って、はたしてどのぐらいの規模があるのか」、「それぞれのチャネルでどのぐらい規模やシェアがあるのか」といった、自分たちのポジショニングを見たりする時に使いたいような、つながったデータという点では、まだ欠けていると感じています。

 

濵野 確かに、個別のデータは出てくるんですが、全体像を網羅したデータという物にはなかなかお目にかかれませんよね。特に化粧品市場も幅が広いですから。

 

宮下 はい、中国市場というのは非常に範囲が広いです。化粧品で例えれば、その国内の事業と越境事業と TR(トラベルリテール)、つまり 免税の事業といったものが絡み合って市場が形成されています。

ところが、それぞれを俯瞰した市場全体を把握したデータというのが意外と存在しない。全体を俯瞰したという意味では、まだ整っていないところがあります。

なので、弊社ではそういったものを自分なりに発想して、いろいろなデータを組み合わせながら使っていくというようなことをしています。

「量的」、「質的」という言葉で説明しますと、その「量的」な分析ツールだとか、手法というのは相当発達しているんです。

例えば、どのぐらいのコストを投入したら、どのくらいのトラフィックを得られて、どのぐらいのコンバージョンから、どのぐらいの GMVつまり セルアウトが期待できるかということが、もう計算式にかかって出てくるんです。

しかし徐々に市場も飽和してきています。そういう飽和してきたときは、今度「質」が問われてくるんですけど、なかなかこの「質的」なレベルのデータ解析といった部分はまだまだこれから発展の余地があるということを、仕事をして行くなかで実感しています。

不足している「質的データ」。それを補うには?

続いての話題は、そうした環境において、どのように「見たい中国市場」を見ていくかに移った。範囲が限られる中でデータから中国市場を見るには?参加者の関心も集まった。

 

濵野 中国では本当に使えるデータがあったり、それを活用すれば本当にいろんなものが見えたりと言うことに関しては優位性がありますが、「質的データ」というものが大きなテーマですね。一つはデータを横断できないという課題と、あとはその「質的データ」というものに対して深掘りする部分は、中国はまだ発展途上の部分があるということですね。

では、そうしたデータへのアプローチはどうしていらっしゃいますか?

 

宮下 溢れるデータを統合的にまとめるという点に関して、今のところプラットフォーマーが主導権を握っていて、なかなか我々のようなメーカーなどには主導権は得られていません。

そうした部分は、協働するといいますか、足りていないものは、例えば天猫さんのTMICのデータを使って、マクロ的な潮流分析であるとか、そのカテゴリーのニーズ把握であるとか、または作ってみたコンセプトとか、パッケージのテストなど、一連のマーケティング活動におけるデータを活用していきます。

確かにECのユーザーに限られるとか、若い年齢層に偏るなど課題はあるのですが、そういったデジタルデータを活用したマーケティングは、主にプラットホームとの協働によって補管する事ができるかなと思っています。

ただ、それも完全なデータではなくて、やはりその背景にあるもの。「じゃあ、なんでこのニーズが高いのか」、「社会的な潮流があるのか」などのデータ背景の部分は、結局はアナログ的な伝統的マーケティング手法を組み合わせて、補完していくといった手法をとっています。

あとは市場での我々のポジショニング、さっき言ったように、市場全体がまだ把握できてない、そういう状況下においてはいろいろなツールを使って市場ポジションを見たり、リアルでは主要なチャネルから一部データをいただきながら、補完的に全体の市場を類推するというようなことをしています。

 

濵野 やはり地道なデータ収集というか思考を積み上げての市場把握をされているんですね。

 

宮下 そうですね。「質的」なアプローチとしては、やはり SNS でどのように自分たちのブランドなどが話題になっているかなどを解析しています。

ただWeiboや小紅書(RED)などチャネルはあるのですが、それを統合的に、タイムリーに分析したりするツールがまだ整っていなかったんです。

その部分は現在、トレンドExpressさんの協力で、毎月一回、前の月のブランドに対しての話題を量的、質的のすべて洗い出し、そこの背景になる「なんでこういうふうに反応するんだろう?」、「なんでこの言葉が急に出てきたのだろう」といった事を、弊社の中国市場部メンバー、一部日本のメンバーも加わって議論しています。

そうすることでかなりお互いの理解も深まりますし、それで想像していくことが大事なのかなと考えています。

 

濵野 ありがとうございます。私も皆さんの取り組み、「“なぜ”を突き詰める」その市場や消費者の解像度上げていくってことには、花王さん、カネボウさんの一つの企業文化なのかなと思います。

 

まだまだ白熱した議論。次回はこうしたデータを活用した中国マーケティング、より具体的な実践内容へと続く

次回はこちら。

見えない中国を見える化するデータ分析とは? 中国データを語るウェブセミナーリポート Vol.2

 

※人気のウェブセミナーの完全版動画はこちらから視聴可能です。

『見えない中国市場を「見える化」 データ分析による課題解決実践法!』

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

資料を申し込み