中国Z世代を中心に高まっている美瞳カラコンニーズ。そしてそのニーズの高まりに呼応するように集まる資本。
今まさに勢いに乗っての市場形成がなされる中で、「老舗」と言ってもよいブランドが存在している。
2008年に登場していた「4iNLOOK」がそれである。
今回は同じくWeiboのクチコミ調査から、この中国カラーコンタクトレンズ業界における老舗ブランドを探ってみよう。
▼前回の記事はこちら
中国カラコン市場における「完美日記」か? 注目の新鋭ブランドをクチコミ調査
目次
中国カラコン業界の老舗はニューリテールモデルが人気
4iNLOOKは2008年に設立されたコンタクトレンズ、なかでもカラーコンタクトレンズの販売を行う企業。
前回紹介したMoodyが2018年設立だったことを考えれば「老舗」と言っていい企業。2020年ダブルイレブンではGMV1億元を突破、美瞳コンタクトレンズではトップを獲得しているブランドである。
その伸び率は、2019年比で300%を超えており、昨年下半期から徐々に高まったカラーコンタクト人気に見事に乗り、成長を果たしたのである。
こうした好調を背景に2021年2月に1億元のラウンドB+の資金調達を行い、合計調達金額も4億元に達した。
今後の動きが注目されるブランドである。
同ブランドの特徴はオンライン―オフライン一体型の、やや古い言い方をすればニューリテールモデルの販売を展開しているという点である。
ただ、同社はカラーコンタクトレンズメーカーとして、というよりは「小売店」、カラーコンタクトレンズに特化したセレクトショップとしての印象が強いのはそのためだ。
大型ショッピングモールにオフラインショップを展開し、実際に消費者が商品を確認して購入するスタイルで展開しているのである。
店内には大手コンタクトレンズブランドの洗浄液なども売られているほか、販売されているカラーコンタクトレンズも、統一されたブランドではない。
そのため実質的には複数のコンタクトレンズメーカーから商品を調達し、販売しているOEM商品のセレクトショップに近しい業態といえるだろう。
その店舗数はコロナの影響を受けつつも拡大を続けており、同ブランドの拠点のある上海を中心とした一線・新一線都市に400店舗程度を展開しているといわれている。
消費者側としては非常に複数のコンタクトレンズから、実際に数多くの商品の中から店頭では直接手に取って選べることが人気のひとつにもなっている。
オンラインでも充実しており、自社ホームページはもちろんのこと、T-Mallでも旗艦店を設置し、ECでのカラーコンタクトレンズ販売を行っている。
ただ、オフラインの店頭とオンラインショップでは商品に若干の違いがあり、消費者は自身に合ったスタイルで、自分に合った商品を選ぶことができるのである。
クチコミ簡易分析で見る4iNLOOK
中国トレンドExpressでは先のMoody同様、同ブランドに対してもWeiboによるクチコミ簡易分析を行っている。
まずは両ブランドに対する消費者の印象、ポジティブ・ネガティブ率を比べてみる。
【グラフ】4iNLOOKとMoodyのポジ・ネガ比率
出所:TrendExpress China調べ
これを見ると、両ブランドともに同じような印象を受けているように見える。ただMoodyの側がポジティブ、ネガティブともに多いのに比べ、4iNLOOKはポジティブ率は低いものの、ネガティブ率は非常に低い値になっている。
結果としてはニュートラルゾーンがMoodyよりも広くなっており、「まず外れなく選ぶのであれば4iNLOOK」といった印象が消費者に根付いているのではと考えられる。
ではその4iNLOOKのクチコミ件数の月次推移を見てみよう。
【グラフ】4iNLOOKのWeibo月次クチコミ件数の推移
出所:TrendExpress China調べ
これを見ると、2020年の状況から下降気味ではあるが、2021年に入り春節セールなどの影響か上昇。
また資金調達後の5月以降は再度、件数の増加がみられている。ここからダブルイレブン期に入り、どのように推移するのかは注目しておきたい。
「かわいい美少女系」のカラコン。日系イメージで展開
続いて、クチコミのキーワードを見てみる。
【グラフ】4iNLOOKのクチコミキーワードランキング上位30
出所:TrendExpress China調べ
3位に「トリートメント液」が入っているのは、同ブランドではトリートメント液を生産(OEM)していないため、他社大手ブランドのトリートメント液を販売している。
そのため消費者にとっては「トリートメント液が切れた時に手軽に安心して購入できる」という印象が強いためと考えられる(24位の「hydron」がそれにあたる)。
少々分かりにくいのが11位「あひる」。
こちらは同社が販売している商品ブランドPop Magicが「小黄鴨」というネーミングであるため。
比較的「かわいい」イメージの商品で、Z世代を中心とした若者に人気となっており、それに伴ってクチコミ件数でも上位に入っていると考えられる。
また注意しておきたいのが28位「美少女」というキーワード。
実は同ブランド、「日本の美少女」をイメージしてブランド展開を行っている傾向がみられる。
一部商品では、日本で販売されている商品と同じ商品名が見られたり、やや怪しい日本語が使われていたり、日本の芸能人名がキャッチコピーの中に使われていたりという行為が見て取れる。
この背景にあるのは、同ブランドが走り出した2008年当時から現在まで、カラーコンタクトレンズと言えば韓国や日本のものが人気が高く、いわゆる「日系可愛い女子」にとっては日本風のカラーコンタクトレンズニーズが高いという背景があると考えられる。
一部の中国メディアでは4iNLOOK創始者のインタビューを行っているが、その中でも「カラコン市場は日本ブランドが先行している。中国ブランドはこれからそれを追いかける」といったニュアンスの発言をしており、中国カラーコンタクト業界の老舗ブランドでも日本のカラーコンタクトを重要視している傾向が見て取れる。
こうした新市場にどのようにアプローチしていくのか。日本企業も考え時だろう。