【column】2021年ダブルイレブンは中国エコ消費の転換期たりえるか?

2021年3月、『中国トレンドExpress』上で、中国のサステナブル消費について述べた記事を公開した。その際、筆者は「中国においては、世界的な意識におけるサステナブル、エコと消費との間に一定の距離がある」と述べた。

しかし、年末に至って少しずつその大環境が変わり始めているかもしれない、そんな気配が見えてきた。

それが2021年ダブルイレブンである。

どうしても交易額やブランドランキング、ライブコマースの行方が気になるが、今回は少しダブルイレブンと中国の環境意識の側面からクチコミ分析を使ってみてみよう。

▼参考記事
中国サステナブル回顧録 世界のトレンドとなったSDGsと中国

例年を超える環境関連のクチコミ投稿

ダブルイレブンにおける「ローカーボン」や「グリーン」、「環境保護」というメッセージがどれだけ広がっており、かつ例年と異なっているかを知るために、トレンドExpressのクチコミ分析ノウハウを利用した簡易分析を試みた。

 

対象となるSNSはWeibo、期間は2019年、2020年、2021年各年の10月1日から11月15日まで。取得したキーワードは以下の5種類である。

  • 「ダブルイレブン×環保」
  • 「ダブルイレブン×ローカーボン」
  • 「ダブルイレブン×グリーン」
  • 「ダブルイレブン×SDGs」
  • 「ダブルイレブン×公益」

いずれも、ダブルイレブンと環境などに影響しているキーワードをピックアップしたけである。

 

まずは2021年のダブルイレブンで、どのくらいクチコミがなされたのかを確認してみよう。

【グラフ】2021年ダブルイレブン環境関連のキーワードクチコミ数

出所:Trend Express China調べ

2021年のダブルイレブンで訴えられたキーワードとしては「緑色(グリーン)」、そして「環保(環境保護)」である。

こうしたストレートな表現は、環境問題に対してあまり知識のない世代や消費者に対しても刺さりやすく、上海などの部分的大都市で行なわれているゴミの分別条例などと相まって、親近感を以て受け入れられやすいと考えられる。

 

続いてそれを2019年および2020年の総数と比べてみると、中国消費業界における新たなキーワードが浮かび上がってくる。

【グラフ】3年間のダブルイレブンと環境キーワードの数

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、例年のダブルイレブンでは常に「環境保護」そして「グリーン」というキーワードは常に述べられている。

つまりは、ダブルイレブンにおいて直近3年間では一貫して「環境保護」に関するメッセージが発せられていた、という事になるだろう。

 

ただ2020年は主力が「新型コロナウイルスの克服」、「Afterコロナ」へ向かったためか、環境関連のメッセージは若干下火になっているのが分かる。

 

そして2021年だが、「公益」というキーワードは前年並みだが、それ以外は前2年間を上回っていることが見て取れる。

増加率が高いものとしては「環保」、「緑色」、そして「低碳(ローカーボン)」である。

 

特に「ローカーボン」に関しては前年79件という件数から一気に1457件。実に18倍のクチコミ件数に急増したことが見て取れる。

まさに「ローカーボン」提唱元年ともいうべき出来事と言えるだろう。

マーケティングメッセージとして発信された「ローカーボン」

ここからはクチコミを「ローカーボン」に集中して見てみよう。まずは、期間中にどのようにクチコミがされていったかである。

【グラフ】ダブルイレブン期における「ローカーボン」日ごとのクチコミ推移

出所:Trend Express China調べ

全体を見れば、ほぼすべての日で2019年、2020年を上回った件数が投稿されていることが見て取れる。

 

注目すべきは複数ある「山」である。

まず、10月20日のダブルイレブン予約開始時期に合わせてローカーボンメッセージが発せられている。

同日はT-Mallが2021年ダブルイレブンのメインテーマを「ローカーボン・グリーン」と発信した日でもあり、多くのメディアが報じたこともあって、クチコミ件数も高い「山」を作っている。

 

その後が10月28日。すなわち第1次予約期終了間際の日曜日である。

この日は予約期終了前の週末休みとあって、プロモーション活動が過熱した日でもあることから、T-Mall自身もメインテーマである「ローカーボン」を積極的に発信していたと想像できる。

 

そして予約が終了し、第1期の支払い開始の際に、大きな「山」ができている。

 

簡単に言えば、大手ブランドが行っている、ダブルイレブンのマーケティングノウハウにのっとって、メインテーマのメッセージを発信していたことになる。

それに比べると2019年、2020年はダブルイレブン当日および翌日に若干の上昇がみられるが、それ以外の日はほぼフラット。マーケティング活動として「ローカーボン」の発信を行っていなかったといえる。

消費者へ浸透していく「ローカーボン」思考

では、こうした「ローカーボン」のマーケティング発信。クチコミ上はどのように受け取られていたのだろうか?

「ダブルイレブン×ローカーボン」のクチコミ、ポジネガ比率を見てみることとしよう。

【グラフ】「ダブルイレブン×ローカーボン」のポジネガ比率の変化

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、明らかに「ダブルイレブン×ローカーボン」の意識がポジティブなものへと変化していることが分かる。

 

前2年分においては10%未満であったポジティブ比率は、一気に17%を超えるまでになり、ネガティブ比率も2%余りに留まっている。

2021年ダブルイレブンにいてT-Mallがメインテーマとすることによって、中国消費者の「ローカーボン」思考は一定程度の影響を受けていると考えてよいであろう。

 

となると、今後の中国消費者訴求において、自社の「ローカーボン」、「エコロジー」的特徴などは、一定の訴求力を持つことになるだろう。

これまでは、直接的にどのような機能、効果、メリットがあるか(デメリットがないか)を求めてきた中国の消費者も、そこにプラスアルファで環境への配慮をチェックし始める可能性が現れることになるやもしれない。

 

さらに、T-Mallダブルイレブン前夜祭でも「環境保護は世界の大国国民としてしての責務」といったメッセージも流され、いわば「世界で注目される中国国民のステイタス」といった印象付けも行われている。

もちろんその背景には「2060年までに二酸化炭素排出を実質的ゼロに」と、習近平国家主席が国際的に宣言したというものがあるだろうし、ローカーボンが今回のメインテーマとなった理由にはこうした中国政府の意向に忖度をしたアリババの思惑もあるだろう。

 

いずれにせよ、こうしたローカーボン思考が2022年も続くのか、そして中国の消費行動にどのような変化をもたらすのか、継続して見て行きたい。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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