【column】2021年ダブルイレブン、クチコミ上でのライブコマースの状況は?

すでに商戦の花形となっているのが「ライブコマース」。2021年のダブルイレブンでも、KOLを活用したものや旗艦店発信のものなど、数多くのライブコマースが展開された。こうしたライブコマースはどのようにクチコミに反映させられているのだろうか?

Weiboのクチコミから、2021年W11のライブの状況を見てみることにしよう。

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主力はT-Mall、JD.comとなるライブの戦場

Weiboにおける「W11×ライブ」のクチコミ調査の結果を見てみる。

【グラフ】「W11×ライブ」での言及プラットホーム

出所:Trend Express China調べ

クチコミ件数の順に見てみると、やはりT-MallおよびTaobaoがもっとも多く、それに京東が続く形になっていることが見て取れ、クチコミ上でも2大プラットホームが依然として高い割合を占めていることが分かる。

消費者から見ても、T-Mall、Taobao、JD.comに関しては別格扱い。商品を購入する場として認知、活用されている様である。

 

それに比べて抖音は拼多多に次ぐものの、まだ若干低い値になっている。


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やはり「EC」機能という面で、商戦期には若干不利な状況にあるといえるだろう。

ただし、抖音自体は「興趣電商(インタレストEC)」という新たなEC概念を打ち出していること、また上述のように抖音をT-Mall、JD.comに次ぐプラットホームとしてそのキャンペーンに参加するメーカーが増えていることなどを鑑みると、今後の伸びしろは期待できる。


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増える「ライブコマース購入」投稿。主力は10代へ

ではWeiboにおけるW11ライブに関するクチコミ、その中身を見てみよう。

【グラフ】「W11×ライブ」クチコミ件数の推移

出所:Trend Express China調べ

「W11×ライブ」のクチコミでは、2019年、2020年に比べてクチコミ件数を減らしている。実は「W11」全体のクチコミ件数は、2019年、2020年にくらべて大きく数を減らしている(詳細は後日配信の『2021年W11振り返りレポート』参照のこと)。

しかし、「W11×ライブ」クチコミ件数の減少度合いは「W11」クチコミの減少と比べて明らかに低い。

 

この結果を踏まえ、同じくWeibo上の「W11×ライブ×買った」と、ライブで買ったというクチコミ投稿がされた件数を見てみる。

【グラフ】「W11×ライブ×買った」クチコミ件数の推移

出所:Trend Express China調べ

なんと2021年は増加に転じている。

W11自体にはあまりSNS投稿する必要を感じていないが、ライブコマースでの購入は投稿したい、という非常に不思議な状況である。

 

その背景を想像してみるが、「W11」で単純に安いものを買うという行為自体はすでに何ら珍しいものではないが、W11の「ライブコマースでショッピングをした」という体験はSNS上で“晒す”に足る価値を有しているといえるだろう。

つまりは単純な購入自体にはあまり意味合いが薄く、コンテンツを通じた購入は、例えればエンターテイメントを通じて購入したような感覚になり、SNS投稿が誘発されると考えることができるかもしれない。

 

では、Weibo上に「W11×ライブ×買った」とクチコミ投稿を行った消費者の年齢層比率を見てみよう。

【グラフ】「W11×ライブ×買った」クチコミの年齢層比率

出所:Trend Express China

2021年の状況を見てみると10代および20代の若者層で約70%近い比率を占めていることが見て取れる。

それに比して単純に「W11」について書き込んでいた際の主力であった30代は2割強に留まっており、全体的には「下振れ」、若年化していることが見える。

 

この年齢層の比率を、過去2年と比較してみる。

【グラフ】「W11×ライブ×買った」クチコミの年齢層比率の推移

出所:Trend Express China

これをみると2019年、2020年に比して10代の占める割合が非常に大きく伸びていることが見て取れる。

20代、30代は若干比率を減らしているが、20代は依然として高い比率を見せている。

 

つまりは前述のように「W11で購入する」ことではなく「ライブによって購入する」ということをエンターテイメント感覚でとらえているのは若者層。特に10代~20代が中心となっていることが分かる。

今後の商戦もこうしたZ世代がライブコマースの中核消費者として商戦を動かしていくと考えられる。

日本ブランドも新市場で成長。ライブコマース購入言及ブランド

こうした10代、20代を中心にしたW11のライブコマースによる購入体験。その言及されるブランドを件数ごとにランキング化し、2020年および2019年と比較してみた。

【表】「W11×ライブ×買った」クチコミ言及ブランドランキング

出所:Trend Express China調べ

1位はやはり「Apple」(ほぼiPhoneと考えられる)が占めているが、それ以外は変動が非常に激しい。

2位には化粧品部門として「Loreal」がランクインし、その他の化粧品ブランドとの差を大きくしている。

 

またデジタル商品に関してはかつての上位に存在していた「Huawei(華為)」そして「OPPO」は後方に下がり、「Xiaomi(小米)」が上位に上がってきている。

 

またデジタル家電でいえば日本の「SONY」もトップ10に入り「W11×買った」のランキング向上がライブによる影響が大きかったのではと想像される。

 

また11位には同じく日本の「Nintendo」の名前が見える。

「SONY」の中に「Play Station」も含まれていると考えられるが、こうしたコンシューマーゲーム機市場も、新たな空間であり、またライブコマースとの親和性も高いのではと考えられる。

さらにT-Mallのメイクアップ部門で9位に入ったCPBの姿も見え、新しい顔ぶれもライブ効果によるものといえるだろう。

 

ただ中国の「Perfect Diary(完美日記)」は欧米勢の攻勢もあってか、伸び悩みを見せている。

同ブランドの母体となっている会社は、上場こそ果たしたもののマーケティングコストの大きさから赤字経営が続いている。

中国ブランドは初期の爆発力は極めて強いが、その継続力に難が生じるケースが多いが、「Perfect Diary(完美日記)」においても同様の悩みに取りつかれているようである。

 

ライブコマースが、いわゆる体験型消費として特に若年層のクチコミを誘発している中国大型商戦。

今後はこうした構図も頭に入れつつ戦い方を考えていく必要があるだろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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