2022年がスタート。
相変わらず新型コロナウイルスの影響下にあるとはいえ、いまだその消費力に多くの期待が向けられている中国市場。特にZ世代を中心とする若者への消費訴求は中国市場攻略においても非常に重要となっている。
そこで上手に活用したいのが「小紅書(RED)」である。
トレンドExpressでは自社のクチコミ分析ノウハウを用いて2020年、2021年の小紅書投稿で言及が多かっブランドをピックアップ、ランキング化を行った。
2022年最初はその様子を見てみることとしよう。
目次
増加するクチコミ件数。2021年で投稿されたブランドは?
ご存知のように小紅書(RED)は、自身が購入したり使用して好感を得た商品を紹介、情報を共有する場であり、企業側から見れば消費者に自身の商品への興味を植え付ける「種草」の場である。
自然、この場で言及される数が多ければ多いほど、より多くの消費者の目に触れることになり、商品に興味を持てもらえる可能性が高い。
またユーザーは20代の女性が中心であることから、小紅書(RED)の投稿件数とは、いわば若い女性たちからの人気のバロメーターなのである。
【グラフ】小紅書(RED)ユーザーの男女比
出所:『小红书内容营销数据洞察白皮书』
【グラフ】小紅書(RED)ユーザーの年齢比率
出所:『小红书内容营销数据洞察白皮书』
トレンドExpressではその小紅書(RED)で言及されたブランド名を、自社のクチコミ分析ノウハウを用いて収集、件数ごとのランキングトップ30を作製した。
収集期間は下記の通り
- 2020年:2019年12月1日~2020年11月30日
- 2021年:2020年12月1日~2021年11月30日
まず、1年間のブランドに言及された小紅書(RED)クチコミ件数の総数を比べてみると、2020年分は340万件余りであったのに対して、2021年分は1,000万件を超えているのが見て取れる。
【グラフ】言及ブランド名トップ30の合計クチコミ数
出所:Trend Express China調べ
これは世界的なコロナ禍にあっても成長を続ける中国市場に対して、世界各国のブランドが注目、マーケティング活動を活発化させたこと、またそれに対抗する形で新鋭の中国国産ブランドが成長し、クチコミマーケティングを含めたSNSマーケティングに資本と投下していったこと、これらの状況から消費者もより多くの商品を体験しその結果を投稿していく環境にあったことなど、複数の要素が絡み合った結果と言えるだろう。
裏を返せば、それだけ小紅書(RED)内における話題作りでも競争が激化しているともいえるだろう。
では気になるランキングを見てみよう。
【表】小紅書(RED)におけるブランド言及件数トップ30
出所:Trend Express China調べ
これを見ると、2021年には「Florasis」すなわち「花西子」が大きく件数を伸ばし、約75万件という最多の件数を得たことになる。
また日本のSONYはスマートホン、デジカメ(ミラーレス一眼、コンパクト)、またイヤホン・ヘッドホンなどの音響設備、そしてコンシューマーゲームPlayStationなど、複数の商品に関する投稿が見られている。
その背景にはもちろんSONY自体のマーケティング活動もあるだろうが、こうした商品が主に若者世代のファッション感覚とマッチした事も挙げられるだろう。
その下には同様にデジタルブランドが並んでいるが、「VIVO」や「Xiaomi」、「HONOR」などはカメラ機能に優れり、または外観デザイン性に優れたりしたスマホが小紅書(RED)ユーザーの琴線に触れたと考えられる。
また日本のブランドではカネボウ化粧品の「Freeplus」がトップ10にランクインしている。
中国では近年、特定の肌悩みに効果のある「効能性化粧品」が注目されているが、その中でも敏感肌は多くの中国消費者が抱える悩みとなっており、敏感肌用の化粧品はニーズが高い。
小紅書(RED)においても敏感肌ケア手法やおススメ化粧品の情報が多く投稿されているように、注目テーマなのである。
同様に中国ブランドである「WINONA」は2020年に比べると相対的なランキングは落としているが、クチコミ件数は増加をしているのも、そうした背景によるものと考えられる。
少しに気になるのは2020年の1位だった「PerfectDiary(完美日記)」がランクだけではなく、投稿件数も落としていることだろう。
同ブランドは新鋭中国メイクブランドの代表格として、国貨ブームを牽引してきたブランドだが、2021年のダブルイレブンなどの商戦を見る限り、やや「息切れ」を起こしているような気配がある。
運営会社も上場を果たしているものの、そのマーケティング投資が先行していたためか赤字経営が続いている。
これまでは絨毯爆撃型のマーケティングをしていたが、今後ひょっとするとマーケティングに用いるプラットホームなどを集約してくる可能性がある。
2022年の動きには注目しておきたい。
広告レギュレーション強化の小紅書。大手ブランドも注意
中国若者向け訴求においては非常に効果的なプラットホームである小紅書(RED)。多くの企業がマーケティング活動に活用しているが、そのなかで多く用いられてきたのがKOCによる投稿である。
KOCはKOLほどのフォロワー数や影響力を有しているわけではないが、コスメや健康、フォトなどへの造詣が深い一般人で、その分野においては多くの消費者が参考にしているユーザーである。
こうしたKOC投稿を広く行うことで、商品への認知や興味喚起などの効果をもたらしてきたのだが、2021年から小紅書(RED)側でレギュレーションの厳格化を行っており、一部では違反ブランドに関する投稿の禁止や、検索ヒット差し止めなどの措置が取られている。
その背景にあるのは、現在の中国では「純粋な一般人投稿」と「企業が依頼して行っているKOCなどの投稿」を明確に区別するという傾向にある。
つまりは「一般人投稿のように見せかけた企業マーケティング」、いわゆる「ステルスマーケティング」に対してはネガティブな印象が増えつつあり、プラットホーム側としてもその管理を強化する動きがあるのだ。
小紅書(RED)ではすでに2021年10月ごろに29のブランドを「虚偽広告規定に抵触」としてアカウント停止処分を下している。
この29のブランドは主に国産の小型ブランドが多かったのだが、2022年に入って、より大きな動きがあった。
2022年1月5日、21のブランドに対して「マーケティング規約違反」としてアカウント停止、検索ヒット差し止め処分を行っている。
そのブランドには現在中国でも人気を高めている韓国の「The history of Whoo」という、比較的大手のブランドが含まれており、小紅書(RED)の本気度がうかがえる内容となっている。
どうしても「企業広告に対する警戒心の高い中国消費者」に対して、明確に広告として告知することに難色を示すブランドも多いが、今後は明確な広告表示が求められる点は頭に入れておきたい。
特に前出の「効能型化粧品」や「健康補助食品」など、機能・効果をうたう内容を含む場合は細心の注意が必要となるだろう。