【クチコミ分析】 中国消費者スキンケアニーズの変化は? クチコミ分析定点観測で見えてくるトレンド

新型コロナウイルスからの立ち直り、そして新たな消費ニーズの誕生などから世界的な注目を集めている中国の消費市場。

特に日本ブランドを含めた世界のブランドおよび中国国産ブランドがしのぎを削っているのがスキンケア市場である。

ではこうしたスキンケア市場で、消費者のニーズにはどういった変化があったのだろうか?

今回は中国消費者の視点に立って、クチコミデータから中国のスキンケア市場のニーズ変化を見てみたい。

拡大するスキンケア市場規模。クチコミ件数も増加傾向

中国における化粧品市場、そしてスキンケア市場は成長が見込まれている。

2020年10月に中国のシンクタンクである中商産業研究院の調べでは、2020年の中国スキンケア市場の規模は2444.1億元。2023年には3200億元余り、2025年には4000億元に迫る勢いがあると分析している。

【グラフ】中国のスキンケア市場規模の予測推移(単位:億元)

出所:中商産業研究院調べ

株式会社トレンドExpressでは、Weibo上で「スキンケア」を意味する「护肤」キーワードがどのように発信されているかを知るために、クチコミ簡易分析を行った。

期間は2020年1月~12月、そして2021年1月から12月を比較させてみることとした。

 

まずクチコミの総数を比較してみると2020年は約290万件、2021年は340万件余りと、約19%の増加がみられている。

【グラフ】2020年と2021年の「スキンケア」クチコミ総数の比較

出所:Trend Express China

またそれを月次で見てみると、一定の起伏はあるが2020年年初から2021年にかけて徐々に伸びて行っているのが見て取れる。

【グラフ】2020年1月から2021年12月までの「スキンケア」クチコミ件数推移

出所:Trend Express China

また、それぞれの月を比べてみると、2020年はコロナの外出規制などが緩和されつつあった2月から3月かけて急激に伸びを見せており、その後は落ち着きを見せている。

特にこの2か月は2021年を単月では上回る勢いを見せており、コロナ禍における肌の悩みや3月8日の国際婦人デー商戦における、いわゆる「リベンジ消費」の影響がみられる。

ただ、それ以外の月では2021年は前年を上回っており、リベンジ消費ではなく、理性的なスキンケア意識の高まりを感じさせる。

【グラフ】2020年1月から2021年12月までの「スキンケア」クチコミ件数対比

出所:Trend Express China

こうしたスキンケア意識の高まりは、以下に紹介するクチコミキーワードを見ることで、その変化を知ることができる。

変わらぬ保湿・補水ニーズ。新たなニーズの片鱗も?

では、「スキンケア」というワードは、どのようなキーワードがつぶやかれていたのだろうか。

2020年と2021年のクチコミワードを比較し、気になる部分をピックアップしてみよう。

【表】2020年と2021年「スキンケア」クチコミキーワード上位30比較

出所:Trend Express China

まず通じて件数が高いのは「保湿」、「補水」である。ただ2021年の件数は倍以上に増えている。

元来、中国では「乾燥肌」を気にする消費者が多いが、近年はその「補水」「保湿」効果への関心度が高まっていると考えられる。

こうした「保湿」、「補水」悩みに対するためか、「クリーム」や「乳液」といったキーワードも2020年に比べて順位を上げ、クチコミ件数も大きく増加している。

 

そうした中で「敏感肌」というキーワードも肌悩みとしての注目度を高めており、敏感肌を主とする、肌悩みを解決するための化粧品「功效型护肤品(機能性スキンケア)」と呼ばれる新しい化粧品の商品セグメントが開かれている。

これについては2022年の化粧品業界のホットワードとなると考えられているため、次回、掘り下げて分析してみたい。

 

注目すべきは「成分」というワードである。

このワードだけ見れば、2021年のクチコミ数は減少に転じている。しかし、2021年には「ヒアルロン酸」や「ザクロ」といった、前年には無かった具体的な成分名が上がってきており、漠然と「成分」という認識から、より細分化された具体的な成分名とその効果が結び付けて考えられている、もしくは商品の訴求として発信されていると考えることができる。

 

ブランド「KANS(韓束)」は、上海に拠点を置く中国の大手化粧品グループである上美集団傘下のブランド。

「アジア人の肌質を研究し、科学的なアンチエイジングを」という謳い文句によって、2020年にもシワ改善のアイテムを売り出すなど、アンチエイジング商品に強みを持っているブランドである。

こうした点が、年配層以外に若者の間に広がる「アーリーアンチエイジング」の影響もあって、クチコミ件数が伸びたのではと考えられる。

 

また、同ブランドは2021年4月には中国の水泳ナショナルチームとのタイアップをするなど、1年延期された東京オリンピックの影響も一定レベルでクチコミ件数増加に寄与していると予測される。

 

もうひとつブランドとしてクチコミランキングに姿を見せたのが「INOHERB(相宜本草)」である。

同ブランドは「本草」、分かりやすく言えば漢方由来の化粧品を研究開発、販売しているブランドであり、上海中医薬大学との共同研究などによって、その権威性を高めている。

 

上記のように「敏感肌」や「成分」が注目されている中で再評価されているのが中医(漢方)由来の化粧品である。

中医は元来、自然由来の薬剤を使用していることから副作用もなく、肌に優しいとされている。同時に成分党の一部では古くからの漢方薬剤の持つ効果効能に注目したり、漢方的な食品を摂取する「養生」という概念が広まるなど、その効果の見直しが進んでいると考えられる。

こうした背景から敏感肌などの悩みを抱えている消費者に、中医由来の化粧品が受け入れられていると思われる。

 

ますます市場競争が苛烈になる中国のスキンケア市場。その動きを読むためにも、こうした定点的な観測結果を踏まえた戦略策定が必要となるだろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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