【column】618の注目ブランドをクチコミ分析~スキンケア編

1ヶ月ほど前に過ぎた618商戦。

2022年の618におけるT-Mallスキンケアの動きを見てみると、意外なブランドが上位に進出していた。

そのブランドは、いったいどのような背景を持つブランドなのか。

今回は618の急躍進で注目を集めた中国スキンケアブランドを、トレンドExpressのクチコミ簡易分析をもって見てみよう。

大手外資ブランドの中に食い込んだ中国ローカルブランド

これまでとは異なる雰囲気の中で終わった2022年の618。

そのコスメブランドは下の表に見えるように、多くが欧米系ブランドが占める状況にあった。

【表】2022年618商戦T-Mallコスメブランドランキング

出所:Nint 任拓

スキンケアブランドは「LOREAL」、「Estee Lauder」、「LANCOME」といった大手欧米系ブランドが盤石の状態。日本勢からは資生堂も安定のトップ10入りを果たしている。

 

その中で注目すべきがローカルブランド勢の動きである。

「WINONA(微諾娜)」は敏感肌用のスキンケアブランドとして、618だけでなくダブルイレブンにおいてもトップ10の常連ブランドとなっている。

 

そのWINONAだけでなく、資生堂やLA MERを押さえて5位に入ったのが「PROYA(珀莱雅)」というブランドである。

 

中国にいると時折みかけるブランドではあったが、WINONAほどの人気はない印象のブランドであった。

しかし2021年末にトレンドExpressが行ったアンケート(対象:18歳以上~49歳以下の一線から三線以下の都市の住む女性2,000人)では、実に20%余りの回答者が、同ブランドの商品を使用していると回答している(参考:本調査ではEstee Lauderが最も高く55%)。

 

そのユーザー比率を年齢と都市別に見てみると、幅広い都市かつ年齢層に使用されている様ではあるが、二線都市の20代および三線都市以下の40代の回答率が若干高く、主に地方都市に浸透している傾向がみられるブランドである。

【表】「現在使っているスキンケア品のブランド(MA)」の「PROYA」選択状況

出所:トレンドExpress調べ

そうした背景を頭に入れつつ、今回は同ブランドのWeiboクチコミ簡易分析を試みた。

躍進した「PROYA(珀莱雅)」を簡易クチコミ分析

PROYAは2003年、浙江省杭州市を拠点として生まれた中国ローカルブランドである。

ブランド名は「Pure(純潔)」、「Resource(資源)、「Ocean (海洋)」、「Young(若さ)」、「Aesthetics(美学)」より取られており、深海スキンケア研究をベースに生み出された商品というのが特徴である。

人気商品となっているのは「紅宝石精華」と呼ばれるエッセンシャルオイルで、特に小じわを目立たなくするなどのアンチエイジング効果が高いとされ、また価格も400元程度と手ごろであるため、地方都市の年配層を始め、アーリーアンチエイジング意識の高い二線都市の若者にも使用されていると思われる。

ではそのPROYAの簡易分析におけるクチコミ推移を見てみよう。

【グラフ】PROYA直近1年間の月次クチコミ件数の推移

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、もちろん一番の山は10月、すなわちダブルイレブン直前のマーケティング期間となっている。

その後、3.8婦人節のある3月に小さな突出期間があり、さらにそこから618に向かって伸びて行くという典型的な姿を示している。

このうち、3.8婦人節に関しては後述する。

 

それぞれの商戦後、クチコミ件数の平均値が若干上がっている状況から、商戦期のマーケティングを活用して、地道にクチコミを蓄積させているものと見ることができる。

 

またブランドの需要を見るために、そのクチコミのポジティブ・ネガティブの比率を見てみる。

【グラフ】PROYAクチコミのポジ・ネガ比率

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、ポジティブ率は13%程度と一般的ではあるが、ネガティブ率が1.7%と非常に低い値を示していることが分かる。

同ブランドは商品の研究開発という点を非常に強く押し出しているが、ユーザーのイメージとしても、そのイメージに合った品質が担保されていると考えられる。

 

ただし、同ブランドにも商品の回収にまで及んだ事件が2022年4月に起こっている。

ユーザーから同ブランドの「羽感日焼け止め」商品の質感が、サンプルと実物で異なっているとの指摘がなされたことである。

 

それに対して同ブランドはすぐに生産拠点の検査を行い、今回の質感の差が、同社の生産工程において不安定さがあったことを認めて、真摯に対応する旨を発表。

こうした対応があってか、同事件は大きな炎上に至っておらず、またポジネガ推移にも大きな影響がみられていない。

 

では同ブランドに関して、どのようなキーワードとともに投稿されているのだろうか。

下の表を見てもらいたい。

【表】PROYAクチコミの頻出ワード上位30

出所:Trend Express China調べ

同ブランドは一貫して「小S(徐熙媛)」や「佟麗婭」、さらに2014年には「章小怡」、2022年は「章若楠」などの有名芸能人を代言人やイメージキャラクターとして起用してきている。

しかし、クチコミキーワードにおいてはそうした芸能人の名前は見えず、主には同社の製品やそれに含まれる成分に関するワードが非常に多くみられている。

 

これは同社がプロモーションの一環として、自社の研究員による成分やスキンケアの専門知識を発信し研究開発のブランドという権威性を伝えてきたことが要因として考えられる。

 

上位にある「ルビー(紅宝石)」は、同社の人気商品であるアンチエイジング商品シリーズを指しているものと思われ、その権威性や成分などの専門性、そして効果が注目されていると言えるだろう。

「寄り添う」ブランドイメージが女性の支持を生む

さて、同ブランドのプロモーションで特徴的なのが「3.8婦人節」におけるイメージ動画である。

 

同ブランドは一貫して「現代女性に寄り添う」という姿勢を示し、毎年の婦人節ではそれを動画にして配信してきた。

 

2021年にはメディア『中国婦人報』とのタイアップで「そもそも男らしく、女らしく、のような性別で線を引くのはやめよう」と訴えた。


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また2022年の婦人節においても、女性の獅子舞演舞者にスポットを上げ、「女性だからできないなどという事はない」というメッセージを強く発信した。

 

現代中国は建国以来、男女の平等を訴えており、女性の社会進出も進んでいる。

有名大手企業やベンチャーにおいても、女性経営者の数も少なくはない。

しかし、結婚や出産、育児(子供の教育含む)などの面においては、いまだに保守的な価値観が強く、それ故にストレスを抱え込む女性も多くいる。

 

同ブランドではそうした女性の「心」にも目を向け、そのストレスや悩みを受け止め、寄り添うメッセージを送り続けているのである。

実際にクチコミの月次件数においても、3月に増加がみられるのはそうした背景によるものでありと推測される。

また「3.8婦人節」同ブランドのクチコミキーワードにおいてもが上位にランキングしている点からも、少なからぬ反響があったと想像できる。

 

専門的な権威性を持って商品の信頼性を高め、かつ現代女性の心に寄り添うメッセージを送り続けるPROYA。

そうして女性の支持者を集めた同ブランドが、今後の中国コスメ業界において台風の目となれるか注目したい所である。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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