【column】妊婦さんも世代交代。変わる意識の中で成長する中国マタニティコスメ

減少傾向にあるという中国の出生人口。

しかし、それでも年間1000万人近くの子供が産まれており、同時に同数の「妊婦さん」が存在していることになる。

その母親たちも新たな世代へと入りつつあり、世代交代、そして社会の変化に伴ってその思考が大きく変化。結果として新たな市場を形成しつつある。

その代表が、妊婦さんたちのお化粧、マタニティコスメである。

今回は100億元市場ともいわれるマタニティコスメ市場をクチコミから見て行こう。

競争に打ち勝てるより健康的な子供を産むためのこだわり

もともと中国では「出産」に対するこだわりが根強く残っている。

 

「適齢期になったら結婚」、「結婚したら子供」という、伝統的な意識が強いお国柄ではあるのだが、出産に関しては非常に多くの注意事項があった。

 

そこには数年前まで実施されていた「計画生育(一人っ子政策)」という抑制政策、そして「優生優育」という、より健康な子供を産むべきという国の方針も影響していた。

さらに、日本でも広く知られている「高考(大学統一入試)」に代表される、学歴・偏差値社会がある。

過度な競争を生き抜くためにも、「より優秀な、健康的な子供を出産する」ことが求められていたのである。

 

そのため、中国消費者は妊娠、出産に関して時には過敏ともとれるような対応を取ってきた。

 

例えば、結婚し第一子を考えている夫婦は、その時点から飲食に気を使い始める。

特に女性はより健康な子供を産むために「色のついた飲み物」や「カフェイン」を絶ち、不純物を摂取しないように心がける。

また、事前から葉酸サプリなどの接種を始めるケースも多いようである。

 

もちろん男性側も、半年前ぐらいから禁煙を始めたり、アルコールの接種を控えたりと体調には気を使い始める。時には男性向けの「健康な精子を育むサプリ」などもSNS上に流れている。

 

とにかく、胎児に悪影響を与えるためのリスクをできる限り排除していくのである。

 

そこにはもちろんコスメ商品も含まれる。

 

肌につける化粧品にまで気を使い、特に色素などを含んだカラーメイク、時にはスキンケアまでを控える傾向があった。

化学物質などが肌を通じて妊婦、もしくは妊娠準備期の女性の体内に入り、その結果、胎児に悪影響を与えることを危惧しているのである。

 

化粧品購入時にECや百貨店などで「妊婦が使っても大丈夫か?」などと確認するケースも」依然として存在している。

 

そのため、妊娠期には選りすぐった商品で、簡単なスキンケアにとどめ、メイクを避けるのが常識であった。

クチコミから見る新世代における新たな「妊娠期の過ごし方」

しかし、そうした傾向も変化が訪れている。

いわゆる80年代後半から90年代生まれという、新世代が母親になる中で「美しさを保った妊婦さんに」という意識が強まっているのである。

 

そこで注目されているのはマタニティコスメという領域である。

トレンドExpressではその消費者意識を知るため、妊娠期におけるコスメに関するクチコミについてWeiboの簡易分析を行った。

まず「孕期化妆(妊娠期コスメ)」というクチコミでは、年間で2万2000件余りの投稿が見られた。

「孕期×护肤(妊娠期×スキンケア)」、「孕期×彩妆(妊娠期×メイクアップ)」という複合条件においては前者で2万9800件、後者では6400件程度と、よりスキンケアに関するクチコミが多い様子が見て取れた。

【グラフ】妊娠期におけるコスメ、スキンケア、メイクアップの直近1年投稿数

出所:トレンドExpress調べ

【グラフ】妊娠期のコスメに関するクチコミ件数推移

出所:トレンドExpress調べ

スキンケアに関心が集まる理由としては、やはり妊娠中はメイクアップを避ける傾向がある事。しかし同時に妊婦さんとしては妊娠に伴う体調変化、肌荒れやシミなどを防ぎたいという思いがあるようである。

 

注意してみておきたいのが、そのクチコミの中身である。

【表】妊娠期におけるコスメ、スキンケア、メイクアップのクチコミキーワード

出所:トレンドExpress調べ

「妊娠期コスメ」や「スキンケア」において共通するキーワードとして「無添加」というものが上がっている。

 

妊婦さんのコスメが徐々に解禁されつつあるとはいえ、何でもよいわけではなく、胎児に影響を与えない無添加化粧品のニーズが高まっていると考えられる。

 

そうしたクチコミの中で関心を向けられているのが「植物主義(PLANT’ISM)」というブランドである。

 

これは化学成分ではなく、植物、漢方由来の原材料を用いたスキンケア、メイクアップ商品で、主に妊婦さんをターゲットにし展開している中国国産ブランド。体験共有SNS・小紅書(RED)においても、妊娠期の安心商品として紹介されている投稿が多く存在し、妊婦層に浸透し始めている。

 

「魚子(魚卵)」というキーワードも興味深い。

一部では「魚卵エキス」や「魚卵プラセンタ」といったヒアルロン酸、コラーゲン、ビタミンを多く含み、かつ胎児に影響がない成分の化粧品も「妊婦さんでも使用可」といったフレーズで売り出している。

 

クチコミキーワードからは妊娠期間でも細心の注意を払いつつ、美しい肌を保とうとする中国女性の苦労が透けて見えるのである。

新旧の意見が飛び交う妊娠期間。その心を組むことも必須

興味深いのは「妊娠期コスメ」に関するクチコミの中には「夫」や「姑(夫の母)」といったキーワードがみられることである。

 

妊娠出産は中国でも日本同様「家族の大事」である。

そのため、一家をあげて妊婦さんをサポートする姿が見られる。あまり家事をしない夫が厨房に立ったり、遠方に住む妊婦さんの母親が手伝いに駆け付けたりといった姿が見られるのである。

 

しかし、妊婦さんを悩ませるのも、実はそうした家族のサポートであったりすることも多い。

女性の妊娠、さらにその時期のコスメに関しては、妊婦さん同様、その母親世代がそれぞれの考え方を持っており、主に年配世代が「自身の経験を基に」いろいろなアドバイスをする姿を多く見かける。

 

しかし、その情報は現代女性の得る情報とは異なる場合があり、往々にしてトラブルを生みやすい。

時にはその方法論や考え方によって「嫁・姑の争い」に発展するという事も耳にする。

 

逆に言えば、妊婦さんたちは、そうした意見を持った存在たちに取り囲まれている状況にあるのが現状なようだ。

こうしたトラブルに心を砕いている妊婦さんに寄り添うブランディングも喜ばれるかもしれない。

 

時代が変わり、認識もキレイな姿でいたいと安心コスメを求める中国の女性が増加中。

そうした市場で妊婦さんが安心してコスメを使用できるためには、妊婦さんだけでなく、その周辺の存在に対する訴求、啓蒙活動も必要となりそうである。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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