歌は世につれ世は歌につれ…
などというのは昭和歌謡の定番文句だが、時代と共に変わるもののひとつに「女性のメイクトレンド」というものがある。
特に猛スピードで変わり続ける中国では、メイクトレンドの移り変わりも早く、消費者たちも敏感。常に情報アンテナを立てて生活している。
株式会社NOVARCAでは中国版Instagram「小紅書(RED)」のクチコミ分析ノウハウを用いて、2023年そして2024年の第1四半期のメイクスタイルのクチコミ分析を試みた。
目次
中国のメイクトレンドを小紅書クチコミから考える。
日本でも「華流メイク」などという言葉や、中国メイクアップブランドの代表格「完美日記(PerfectDiary)」、「花西子(Florasis)」の日本進出などによって、中国のメイクも一部で受け入れられ始めている。
そんな中国のメイクトレンド、今回調査したキーワードと期間は以下の通りである
<キーワード>
- 妆容|妆容风格
- 网红妆
- 素颜妆
- 早八人妆容
- 日系妆容
- 韩系妆容
<期間>
2023年1月~2024年4月
その中でも日本でよく知られたのは「網紅(ワンホン)メイク」だろう。
今は中国では日常に溶け込んでいる「種草」や「ライブコマース」を牽引したKOLたちのメイクアップのスタイル。
それが今、どうなっているのかが気になるところ。
まず小紅書上における「メイクスタイル」に関する投稿だが、2023年1年間で約530万件もの投稿件数を誇っている。
数値を見ると、やはり新型コロナの蔓延が終了した2023年3月以降増加を続け、2024年4月の時点では1ヶ月で80万件が投稿されている。
【グラフ】小紅書「メイクスタイル」投稿件数の推移
出所:株式会社NOVARCA調べ
2月に下落が見えるのはその月が春節に当たり、KOLなどの専門発信者たちが春節休暇などで発信をしなかったりというのが影響している。
そのかわり春節後の3月、特に3月8日の「3.8婦女節」のキャンペーンなどで急増しているわけである。
ではどんなことがつぶやかれていたのか、キーワードランキングを見てみよう。
【表】小紅書「メイクスタイル」投稿2023年と2024年Q1頻出キーワード上位30
出所:株式会社NOVARCA調べ
まず双方ともウェディング系のキーワードが上位に上がっている。
中国では結婚式(日本でいう披露宴)ももちろんだが、ウェディングフォトには非常に気合を入れ、様々なスタイルのアイドル写真集波の写真を撮影する。
そのため、そのメイクにも多くの労力を費やす。
筆者も撮影時に中国の皇帝・皇后が、お色替えをしてルイ16世とマリー・アントワネットになって再登場してきたのを目撃している。
それだけ結婚に関するメイクには気を遣うのである。
さらに美肌ニーズの高い中国、「ベースメイク」の様な美肌ニーズも相変わらずのようだ。
注目は「アイメイク」や「アイシャドウ」というワードのように、目元メイクに気を遣う部分。
2024年に入ると「まつ毛エクステ」や「美瞳コンタクト」などの目自体のメイクが上位に姿を見せており、そうしたものを含めたアイメイクの在り方が求められていると言えるだろう。
また双方に「韓国系」の文字が見え、日本企業としては見過ごせないところだが、この分析は次回に譲るとしよう。
メイクの網紅(ワンホン)時代は過ぎ去った?
ではメイクトレンドやや大雑把だが、3種類のスタイルに分けて見てみよう。
その結果は下のグラフを見てほしい。
【グラフ】3種類のメイクスタイルの2023年投稿件数
出所:株式会社NOVARCA調べ
見てみるとワンホンメイクはかえって少なく、変わって「素顔メイク」が大きく上回っている状況となっている。
推移を見ると、実は2023年全体を通して見ると「素顔メイク」は「ワンホンメイク」を上回っている。
以前から「白開水(おさ湯)メイク」と言われるように、素顔勝負のメイクが徐々に大きな支持を受けてきたことが目立っているようだ。
【グラフ】ワンホンメイクと素顔メイクの月次投稿件数推移
出所:株式会社NOVARCA調べ
ではワンホンメイクは消えていくのかというとそうではない。
キーワードランキングを見てみるとその特性がわかる。
【表】ワンホンメイクの頻出キーワード上位30
出所:株式会社NOVARCA調べ
上位にある「延吉」とは中国東北地方、吉林省にある朝鮮族自治州の名前。この土地では朝鮮族が韓国と同様の暮らしをしている場所である。
この場所でチマチョゴリを着て、フォトグラファーに撮影してもらうということで人気になった土地である。
さらに2024年Q1には「人物撮影」などのワードが上がっているように、ウェディングや観光地によるフォトグラファーを用いた記念撮影(特に少数民族系)の際に、いわゆるワンホンメイクを行うようになってきている様子が見える。
つまり普段使いの「素顔メイク」、非日常を味わう「ワンホンメイク」という使い訳をしているのだろう。
気になるのは「早八人メイク」である。
数としては少ないが、実はアップトレンドにあるメイクスタイルである。
この理解のためには、中国における「早八人」のライフスタイルに関して理解していく必要がある。
そのため、次回、その生活状況から合わせてクチコミ分析を試みてみたいと思う。
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