中国の主力消費者たる「早八人」たちの メイクトレンドとは?

素顔メイクが広がりつつある中国のメイクトレンド。
それを牽引しているのが「早八」と呼ばれる層である。
言われてしばらく経つ言葉ではあるが、今、その存在感をコスメ業界でも強めている風潮が所々に見られている。
今回は前回の素顔メイクトレンド隆興につづいて、それを牽引している中国の「早八」と言われる消費者を中心に、そのニーズを見て行こう。

▼前回の記事

新型コロナウイルス後の中国 メイクアップトレンドはどう変わる?


早八人(早八党)とは?

中国の素顔メイクトレンドを見るために、中国の重要なワード「早八人(もしくは早八党)」について理解しておこう。

同ワードはすでに2022年前後にはネット上に登場しているキーワードで、当初の意味としては「早朝8時の第一限目に間に合わせる女子大生」といったニュアンスだった。
つまり朝早く飛び起きて、急いで投稿する人たちという意味である。

それが徐々に大人になり、就職するようになるとそこに朝出勤する人たちも含まれる。
特に北京や上海などの大都市では、ホワイトカラーの多くは「鎮郷結合部」と呼ばれる郊外に住むことが多く、都市中心部に出るまでに時間がかかる。

そのためにどうしても早く起きて家を出ねばならない。
子供がいればそこに子供の登校の送り迎えが加わるため、朝はとにかくバタバタする。
そうした生活を送っている女性たち、ということである。

小紅書における「早八人(早八党含む)」のクチコミワードを見てみよう。

【表】小紅書における2023年「早八人(早八党含む)」のクチコミワード

出所:株式会社NOVARCA調べ

【表】小紅書における2024年Q1「早八人(早八党含む)」のクチコミワード

出所:株式会社NOVARCA調べ

見てわかるように、主力は通勤族、学生たちである。
そして「素顔」というワードが2023年通年、2024年Q1でも上位に見え、素顔メイクを牽引しているのが見える。
理由は至極明晰で、朝短時間でパッとメイクをして外出する必要があるためである。
そしてそのメイクでは「口紅」、「アイライナー」に混じって「ベースメイク」が上位に見える。

ほぼスッピンに近い状態のメイクであるからこそ、ファンデーションなどの肌を美しく見せるメイクは非常に重要である。
一部の業界では「2024年はベースメイクの年になる」などと言われるゆえんである。

ちなみに「早八人」たちは大学生からホワイトカラー層で、いうなればメイクトレンドに敏感で、新しい流行を作り出す世代。

小紅書でも、このキーワードの投稿が増加しているのが見える。

【グラフ】小紅書における「早八人(早八党含む)」のクチコミ投稿件数推移

出所:株式会社NOVARCA調べ

2020年以降、新型コロナによる巣ごもり生活。その転換後はフルコロナと登校、出社の機会はなかったが、社会の正常化と共に「早八」たちの活動も増え、彼女たちをターゲットにしたマーケティングも活性化していると考えられる。

そのため、今後も「早八」たちの気持ちを理解する必要が生じるだろう。

早八たちが求めるメイクスタイルとは?

もう少し、早八人たちの求めるメイクというものを深堀してみたい。
なぜなら下のグラフをみると、「早八人×メイクスタイル」というキーワードでの小紅書投稿は増加を続けており、2023年4月に2,000件程度だったものが、1年後の2024年4月には8,800件と、4倍以上に達しているからである。

グラフの動きは「早八人」ワードによる動きとほぼ同様の増加を見せており、メイクトレンドとしては見過ごせぬ勢力を見せているのである。

【グラフ】小紅書「早八人×メイクスタイル」クチコミ投稿件数推移

出所:株式会社NOVARCA調べ

ではそのキーワードである。
基本的には大学生から社会人1~3年程度の若手を想像しながら見ていただくのがいいだろう(「通勤」というキーワードがあり、この「早八」という言葉の対象が当初の大学生から社会人の若手にも広がっていることを示している)。

【グラフ】小紅書における2023年「早八人(早八党含む)×メイクスタイル」のクチコミワード

出所:株式会社NOVARCA調べ

見るとまず「素顔(すっぴん)」、アイテムとしては「口紅」と「ベースメイク」が非常に重要であることがわかる。

特にベースメイクに関しては「リキッド」、「素顔霜(フェイスクリーム)」、「パウダー」、「ルースパウダー」、「コンシーラー」など非常に数が多く、メイクアイテムの大半を占めている。

そして面白いのが「アイシャドウ」や「まつ毛エクステ」などのアイテムである。
以前のメイクスタイルでもアイメイクは重視されたが、それが継承されているようにも感じる。
また、下位ながら「美瞳(カラコン)」の使用頻度が高いのも、今どきの若者風である。

【グラフ】小紅書における2024年Q1「早八人(早八党含む)×メイクスタイル」のクチコミワード

出所:株式会社NOVARCA調べ

2024年に入っても早八メイクの勢いはとどまらない。
「早八の素顔メイク」はベースメイクを基本にしながら、そこにアイメイクを加える形で成立している。
自然に見えるきれいな肌に、「アイシャドウ」や「まつ毛エクステ」など目元のインパクトをつけていくのがオーソドックスな形となりそうだ。

またこれまでなかった「薇諾娜(WINONA)」が上昇しているあたりは、やや注意が必要。
国産ブランドだけあって、この層の取り込みに力を注いでいるのかもしれない。

重要度を増すベースメイクに消費者は何を求めるか?

早八人たちの活動によってニーズが高まりつつあるベースメイク。
小紅書のクチコミの「底粧(ベースメイク)」でも徐々にではあるが、上昇傾向にあるのが見て取れる。

【グラフ】小紅書における「底粧(ベースメイク)」の投稿件数推移

出所:株式会社NOVARCA調べ

2月に落ち込みが見えるのは、おそらく春節などで登校や出勤する機会が減ったことによるものと考えられる。
それだけ生活に密着しているとも言えるだろう。

【表】小紅書における2023年「底粧(ベースメイク)」のクチコミキーワード

出所:株式会社NOVARCA調べ

ベースメイクのキーワードを見てみると、もちろん「ファンデーション」、特に「リキッドファンデーション」への言及が非常に多いことが見て取れる。
同時に「コンシーラー」のように気になる部分や、そもそも写真加工でも標準機能として備えられているように、普通にある毛穴も見えなくするのが中国流。
手軽にさっと塗ることができ、自然な形で毛穴などが目立たなくなるという商品に人気が集まる。

これを早八人たちにしぼれば短時間で「手軽に」行える商品に人気が集まるのだろう。

ただ注目しておきたいのが「養膚(肌を養う)」というポイントである。

ベースメイクとして肌を自然に、かつ美しく見せるというのがベースメイクの基本だが、同時にそこに「肌を養う」という補助機能を求める傾向が強いのが見える。
「肌を養う」とは「保湿」機能や、つけていることで肌が活性化し若さを保つといったニュアンスがあるようだ。
セレブ系のファンデーション(単価1,000元以上)になって来ると「アンチエイジング」といった、より明確な機能も登場するようになる。
ベースメイクはメイクアップ商品でありながら、スキンケア的要素を付加されていることが前提なのである。

こうした要素をいかにしてベースメイク商品に盛り込み、かつ訴求するかが、今後のベースメイク商戦のポイントとなるだろう。

さて、各キーワードランキングで「韓系(韓国メイク)」が存在感を見せていたことに気づかれた読者も多いと思う。
そのため次回は、直近の「韓国メイク」と「日系メイク」のクチコミの様子を分析してみたいと思う。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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