インバウンドからオールバウンドへ~グローバル消費を取り込む戦略の最前線

2025年9月24日、NOVARCA主催のセミナー「オールバウンド戦略セミナー」を開催しました。
本セミナーは、インバウンド消費の回復と越境ECの急成長を背景に、インバウンドとアウトバウンドを統合した「オールバウンド戦略」の重要性を議論する場として行われました。

当日は観光・化粧品・空港事業の第一線を牽引するリーダーたちが登壇し、具体的なデータや実践事例を交えた議論を展開。会場は終始熱気に包まれ、「生の声」と「リアルな数字」が交錯する濃密な時間となりました。

登壇者紹介

<モデレーター>

– 濵野 智成(NOVARCA 代表取締役社長 CEO)

<登壇者>

– 森 智彦 氏(資生堂ジャパン株式会社 事業戦略開発部 ツーリストマーケティング開発グループ グループマネージャー)

– 大西 洋 氏(株式会社羽田未来総合研究所 代表取締役社長 執行役員)

– 木津 裕美 氏(花王株式会社 化粧品事業部門 プレステージブランドビジネスグループ KANEBO ブランドマネジャー)

オールバウンド戦略とは何か

濵野:「インバウンドはゴールではなくスタートです。訪日をきっかけに顧客と出会い、その後の越境ECや現地購買につなげる。ブランドにとってインバウンドは“巨大なショールーム”であり、世界に挑むための起点なのです」

2019年から2025年にかけての訪日客数推移では、中国・韓国・台湾・香港・米国の5地域で全体の80%超を占めています。特に米国は2025年に入り前年比+25%の成長を見せ、新たな主力市場となりつつあります。

マクロデータが示す変化

濵野:「中国は依然トップですが、米国やASEANからの消費も力強く伸びています。特定市場に依存せず、多市場に分散する戦略が求められています」

– 中国:20%超
– 米国:2025年4-6月期に第2位
– 東アジア:医薬品カテゴリでシェア90%以上

森氏:「台湾や米国からの化粧品需要が伸びています。ELIXIRの訪日売上が火種となり、台湾市場では越境EC経由で前年比20%以上の成長が確認できました」

企業の取り組み事例

資生堂

森氏:「訪日客は旅行者であると同時に、帰国すれば現地の生活者です。従来の縦割り組織では顧客を深く理解できません。横断的に顧客を捉える組織体制が不可欠でした。コロナ前やコロナ中も含めて、常にデータ観測と業界のプロフェッショナルとして伴走いただける背景から、NOVARCAさんと戦略的なパートナーシップを組みました。」

KANEBO

木津氏:「中国SNS上におけるUGC拡大を大きく寄与していると実感しております。最近はインバウンドコミュニケーションのプロジェクトもご一緒しています。」

羽田未来総合研究所

大西氏:「羽田は世界と日本をつなぐ玄関口です。2025年上半期の国際線利用者は前年比+6.6%。ここでの購買データや来店ログを分析すれば、旅行者が次に何を買うかを先読みできるのです」

 データドリブンで成長を加速

濵野:「SKU別売上、国別購買単価、UGC数――これらを定点観測し、毎月のオールバウンド会議で次の打ち手を決める。感覚ではなく数字に基づく意思決定が不可欠です」

森氏:「POSデータとSNSの口コミを突き合わせると、“訪日で話題になった商品が現地で売れる”ことが明確になります。数字があるからこそ早期判断が可能です」

木津氏:「UGCの急増が売上に直結するのをデータで確認できるのは大きな強みです。特定商品のUGCが増えたタイミングで、売上の伸びが顕著に見られました

大西氏:「空港は多数の購買データを持つマーケット。これをブランドと共有することで、現地市場の攻略に活用できます」

 

まとめ ― 登壇者の言葉に見る未来へのヒント

森氏(資生堂):「旅行者を“一度きり”ではなく“生活者”として捉える。帰国後の購買行動までを見据えた戦略設計が不可欠」

木津氏(KANEBO):「現地消費者にインサイトに基づき、コミュニケーションをローカライズして、ブランドのファンを真摯に創り続けることが、オールバウンド戦略ではとても重要視」

大西氏(羽田未来総合研究所):「空港は“世界の交差点”。ここをデータと購買体験の拠点にし、日本ブランドが世界で選ばれる仕組みを築きたい」

濵野(NOVARCA):「オールバウンド戦略は旅前・旅中・旅後をシームレスにつなぐ挑戦。インバウンドをきっかけに、グローバル消費者基盤を築くことが日本ブランドの未来を決めます」

NOVARCAでは、オールバウンド戦略の設計・データ活用・KOS連携など、今回のセミナーで紹介したノウハウを活かしたコンサルティング・支援を行っています。

– 自社ブランドのオールバウンド戦略を検討したい
– 越境ECやインバウンド需要の最新データが欲しい
– セミナーで紹介された事例の詳細を知りたい

NOVARCAへのお問合せはこちら: https://www.novarca.jp/contact/

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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