アフター・コロナでどうなる中国アイメイク市場 強気で攻めるローカルブランド

中国のコスメ、特にメイク市場が大きな転機を迎えている。

「口紅の販売量が激減、アイメイクが急増」というものである。その背景については「マスクを着けていることから口元メイクの需要が減り、露出している目元が“新たに”クローズアップされた」というものである。

しかし、本当にそうなのだろうか? もしそうであれば、マスク着用時期が過ぎ去れば、アイメイクはすたれていくという事になる。

今後のアイメイク市場を占ううえで、再度中国の状況を分析してみた。

減退するメイク市場。そのなかで…。

ベイン・アンド・カンパニーとT-Mallによるレポートでは2020年春節1日目から13日間のコスメ類売上総額は前年同時期に比して30%下落。特にハイエンド化粧品に関しては40%の下落というのが現状だった。

 

なかでも人気商品だった口紅の売り上げ下落は著しく、2020年の春節前と春節後では、その売り上げも約半数になっているとの報道も見られ、これまでの「メイクといったらまず口紅」という風潮、李佳琦が「口紅王子」といわれるほど口紅が売れた時代が過ぎ去ったかのような印象を与えている。

 

そうしたなかで、伸びているのがアイメイク。

 

Taobao系列ECデータをもとにした中国国内の報道を見ていると、4月に入り口紅やリップグロスなどの口元メイクの売上が急回復をしているが、それでも3月中30日間の成長率を見る限り、アイメイクの成長率には及ばないといわれている。

 

実際にT-Mall Globalでも今年の1月~3月、アイメイクのオーダー数は急速に増えており、アイシャドーの売上においては前年同時期比40%増。

新型コロナによる外出規制が緩和し、企業活動が徐々に再開される中にあっても、売れ筋トップテンにはアイシャドー、アイブロウペンシル、マスカラなどのアイメイクが並んでいた。

こうしたメイク業界におけるアイメイクの伸びは、「新型コロナウイルス対策で消費者がマスクをしたせいだ」といわれてきた。

口元は見えないため、見えている目元のメイクをきちんと、という消費者心理が作用したと考えられている。

アイメイクニーズはマスクだけのせいなのか?

しかし、このアイメイクの躍進、果たしてそれはマスク着用という特殊事情によるものなのだろうか?

 

昨年、中国トレンドExpressが中国のメイク事情のクチコミ調査を行った際、「メイク×テクニック」というキーワードでメイク技術における意識も調べている。

 

その際、具体的なメイクテク日記に関するクチコミでは「アイメイク」が上位になっており、アイメイクの手法、技術について関心が高い様子が見て取れた。

【グラフ】「メイク×テクニック」のクチコミ状況

中国のコスメ業界、輸入代理商などでは、やや早い段階からアイメイクニーズの存在を感じ取っていた。

そもそも若い女性は中国に限らずメイクには高い関心を払っている。特に近年は影響力の高いインフルエンサー、KOLの情報をメイク商品情報から手軽に得られるようになっているという環境が出来上がっている。

その中で中国の消費者は、単純に「メイクをする」という段階から「より自身の個性を表現する」時代に。

それも「まず艶やかな口紅を」という入門から、「自身の気質を表現できるアイメイクを」という時代へと変化をしている。

 

全体としてはメイクアップ市場の自然な変化であり、メイク市場全体を押し上げることにつながっているのである。

 

さらにアイメイクは現在中国のプロモーションの主流となっている小紅書や抖音といった、ビジュアルで表現し、それによって拡散する手法にマッチしている、メイク前と後の違いを明確に見ることができる。

 

こうした余勢をかい、すでに多くのメイクアップブランドが多くのアイメイクのプロモーションを展開していた。

それがこの新型コロナウイルスの影響を受け、予想以上の伸びを見せていたわけである。

 

そうした点から見るに、新型コロナウイルスがあったためにアイメイクが初めてクローズアップされたわけではなく、アイメイクのニーズが徐々に拡大しているなか、新型コロナウイルスが発生し、その伸びを押し上げたのである。


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注意すべきはローカルブランドの攻勢

いずれにせよ、急成長を見せている中国のアイメイク市場。その姿に、ローカルブランド、特に新鋭ブランドが攻勢を強めている。

中国の新鋭ブランドはご存知の通り中国のSNSやKOL、KOCそして私域流量(Private Traffic)の運用に慣れている。

大量のプロモーション投資をし、短期間で自社の知名度を上げている。さらに価格もローカルブランドならではのパフォーマンスを打ち出し、市場を広げているのである。

 

以下、注目すべきローカルブランドを上げていこう。

【完美日記】

すでに説明はいらないほどメジャーになった同ブランド。2020年の「女王節」ではアニマルアイシャドーが爆売れしたことでより注目が高まっている(4分で2000個の販売という情報も)

【VENUS MARBLE】

12色大理石アイシャドーパットが単品で年間250万個を売り上げている。

【美康粉黛】

同ブランドは2019年、人気国産マンガ『魔道祖師』とのタイアップによるアイシャドーを販売。販売開始とともに売り切れている。

【HEYLULU】

こちらもアイシャドーがライブ開始1秒で売り切れという記録を残している。また同ブランドのアイライナーも人気商品となっている。

【UKISS】

メイク初心者向けとして霊眸娃娃アイライナーを発売。低下価格で学生などの若年層を取り込んでいる。

【SUSISU】

ラッキーコイン9色アイシャドーパレット。ファンタジー人気に伴い、西洋風のコイン型アイシャドーパレットを発売。その外見からSNS映えとして話題に。

こうしたブランドは新型コロナという環境を利用し、かついわゆる「コロナ後」を見据えてプロモーションを強化しているという。

今後、成長している中国メイクアップ市場では、こうした存在を意識しつつマーケティングを展開していくことが不可欠であり、これらを圧倒する情報量を展開できるかがカギとなるだろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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