前回紹介した中国の新鋭コスメセレクトショップ「The colorist」。SNS映えするカラフルな店舗デザインとブランドの多さ、そしてすべてを試せるという点から、多くの中国女性の注目を集めている。
しかし同店も「一強」とならない様子が、中国のコスメセレクトショップ業界から見えてくる。
The coloristのライバルと目される、同コンセプトの店舗の様子をクチコミ分析で比較しながら見ていこう。
目次
早くも競合ブランドが。運営はよく知るあの会社
これまでのコスメセレクトショップとは全く異なるコンセプトで耳目を奪ったThe colorist(中国名:調色師)であるが、早くもライバルが登場している。
それが「WOW COLOUR」である。
この会社の運営元は実は日本ともゆかりがある企業。
それは「名創優品」、店舗名「MINISO(ミニソー)である。
中国事業を行っている方であればすぐに思い出すはずだ。
登場した当初は「店名はダイソー、ロゴはユニクロ、コンセプトは無印良品」などいったざわめきが日本のネットを中心に流れた企業である。
中国国内でも「偽日系」と呼ばれ、一時期、ホームページ上に記載されている日本の住所が「存在していない住所」などとも指摘されていた。
当初こそ日本商品のコピーをにおわせる商品を販売していたが、その後独自の商品開発に力を入れており、迷走状態から脱出。
「MINISO」ブランドを世界展開するまでになっている。
その同社が2020年1月、中国のコスメ業界に展開したセレクトショップが「WOW Color」である。
1月4日の1店舗目のオープンにおいては早々に「グローバル1号店」とのキャッチフレーズを使用。海外展開への展望をにおわせた。
当日は多くのアイドルを招いたセレモニーを展開し、1日の売上21万6000元の売上を達成、来店者数は1.5万人に及んだ。
その後はコロナ禍にあっても着実に店舗を増やし、2020年6月には中国国内で300店舗を開店させている。
The coloristとはなにが違う?店舗の様子は。
The coloristと向こうを張って登場した「WOW COLOUR」。
そのブランドラインアップも強力でCROXX、Dreamtimes、橘朵、CLIO、LB、girlcult、COLORKEY、VNK、LEEMEMBER、HOLD LIVEなど、Z世代を中心に人気の高い国産ブランドのほか、日系ではDr. Ci:Labo、HABAなど、欧米系ではElizabeth Ardenなどをそろえ、The colorist同様に6000SKUを超える商品を販売している。
店内のイメージを見ると、ポップなThe coloristに対して、やや大人なイメージを漂わせている。
ただ、若者が最も気にする「お試し」機能はThe coloristと同様で、数多くのラインアップから好きなものを選んで試せるという点も備わっている。
中国ではすでにすべてのものがECで購入できる時代になっているが、その反面「商品を体験する」機会が減っており、消費者にとってはそれを新たなリスクと感じている部分がある。
それゆえにKOLの発信からそのまま購買するのではなく、周囲の友人やECサイトのレビュー、またソーシャルバイヤーへの質問という形で情報を収集するのである。
そうした消費者にとってコスメ、特にすぐに効果を見ることができるメイクアップ商品を試す場という意味では非常に重要な場となっている。
また同店内では、売れ筋商品、人気商品がTOP20が常に液晶で表示されており、「周りの人が買っている。自分も」という消費欲を刺激する仕掛けもなされるなど、消費者の意識利用した販売促進施策が展開されている。
クチコミキーワードから見る差別化は?
では、この両店舗、消費者どのように見ているのだろうか。
Weiboのクチコミキーワードを比較してみよう。
【表】2店舗のクチコミ頻出キーワード
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
これを見ると、WOW COLOURでは「ギフトパック」などのお得な商品、また「サービス」などのお得なキャンペーンが上位に入っている。
しかしながら、そのほかの「天国」や「安価」、「打卡」といったキーワードは非常に似通っている。
また「広場」や「万達」などのキーワードから同店が特に「万達グループ」のショッピングモール内に進出している点を示している。
クチコミキーワードから見ると、消費者の印象ではあまり差別化がされておらず、どちらも話題のコスメセレクトショップという位置づけでとらえられている。
この状況を今後、それぞれがどのように差別化していくかが、今後の課題といえるだろう。
別れる情報プラットホーム
キーワード上ではあまり大きな差の見えないThe coloristとWOW COLOURの2ブランド。しかしその情報の拡散状況には大きな差が見える。
下の図は直近1年間、両店舗が小紅書のノート数とWeibo上の件数を比較したものである。
【グラフ】2店舗のSNSプラットホームクチコミ件数
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
これを見ると、The coloristは小紅書とWeiboを平均的に振り分けているが、WOW COLOURは完全に小紅書集中型となっている。
比率でみると、The coloristが約半々という割合に対して、WOW COLOURは8割以上を小紅書に振り分けている。
【グラフ】2店舗のSNSプラットホーム比率
出所:数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ
小紅書の内容を見てみると、前回紹介したようにThe coloristではその店舗のオシャレ感に関する投稿が、すなわち「打卡」投稿が中心になっているが、WOW Colourに関しては「礼包」。すなわちお得なキャンペーンパックに関する投稿が目に付く。
単純な見た目ではなく、その販売戦略を打ち出し、それを伝えるテキスト量を確保するための小紅書勝負、と予想することもできるだろう。
この戦略の帰結は現在のところ「伯仲」状態となっている。と同時に、同店以外にも数多くのセレクトショップが登場し始めている。
その市場がどのようになるのかは、長期的な視点で観察する必要があるだろう。
次回はそうした「セレクトショップ市場」全体をまとめてみたい。