The COLORIST、WOW COLOURなど、急拡大している中国のコスメセレクトショップ。しかし、セレクトショップ自体は以前からも中国国内に存在していた。
これら以前のセレクトショップはどうなったのだろうか?
今回はその市場変化を眺めてみよう。
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目次
1年で交代した主役。中国コスメセレクトショップ業界
中国の人気ショップとなっている、The COLORIST、WOW COLOUR。
現在は2店舗以外にもNOISY Beauty、HARMAY(話梅)、H.E.A.T(喜燃)など、コスメセレクトショップ業界における新鋭ブランドは増加している。
代表格たる2店舗は次々に店舗を増やし、「WOW COLOURは2021には1000店舗」という計画も報道されるなど、快進撃を続けている。
では、これらのブランド以前にはコスメセレクトショップは存在していなかったのか?というと、そうではない。
最大手では欧米系のSEPHORAが繁華街や大手ショッピングモールに展開していた。また香港系のSaSaやmannings、イギリスのSpace NKなどが中国市場で展開していた。
また、ドラッグストアとしても知られるWatsons(屈臣氏)も、一部はコスメセレクトショップの機能を果たしていたの。
以前の中国コスメセレクトショップは、彼らが「主役」であった。
しかし2020年に入ってからはSEPHORAやSaSa、mannings、Watsonsでは軒並み店舗数を減少させ、2020年4月にはSpace NKも中国市場から撤退する旨を発表した。
背景にあったのはもちろん新型コロナウイルス蔓延による外出自粛である。
こうした老舗とThe COLORISTを代表とする新鋭セレクトショップの違いは、運営会社の専門の違いである。
新鋭セレクトショップの多くは「〇〇科技有限公司」という名称で、もともとオンラインビジネスを得意とする企業。スタート時点からオフライン店舗を展開しつつ、オンラインでも刈り取るというビジネスモデルをイメージしてきた。
いち早くWeChatのミニプログラムを活用し、SNSへの広告投下、さらにデータ分析による「刺さる情報発信」への特化など、現代的ないわゆるデータドリブンビジネスを展開していた。
さらにThe COLORISTのクチコミを見ると、コロナ禍が最もひどかった2020年2月はクチコミ件数を減らしているが、3月から急激に件数が上昇。コロナ状況下においても一定のマーケティング活動を展開しており、そして外出規制緩和後、それを一気に拡大させたのではないかと予想される。
【グラフ】The COLORISTのWeiboクチコミ件数推移
新型コロナウイルス状況化においても、自粛ムードに流されることなく、一定レベルのクチコミ醸成を行っていなければ、こうした加速は難しい。
それに比して店舗を減らした従来型の店舗は、新型コロナによる運営自粛、来店者数減少への対応に追われ、マーケティングに二の足を踏んでしまったのかもしれない。
時代の転換期に乗れなかった従来型セレクトショップ
中国コスメセレクトショップ市場変化を考える時、中国のコスメ市場、特にメイクアップ市場の変化も考慮しなくてはならない。
すなわちローカルブランドの台頭である。
2019年ごろを境に、中国では完美日記(Perfect Diary)をはじCOLOR KEY、VNK、Judy Color Lab、HOLD LIVEなど、ローカルメイクアップブランドが一気に市場を伸ばした。
2019年のダブルイレブン、2020年の38婦人節や618の商戦においても、こうしたブランドは目覚ましい活躍を見せてきた。
そうした新鋭ローカルブランドを支えているのは中国Z世代を代表とする若者たち。
ローカルコスメブランド側は、その思考を熟知し、視覚的に個性、自己表現欲を刺激するSNS投稿を大量に展開。その心をつかんできた。
しかし、前出のローカルセレクトショップは、その動きに対応しきれていなかった。
SEPHORAを例にとれは、現在でも主力は依然として欧米系メイクアップであり、ローカルブランドの取り扱いは少ない。
そもそも、同ブランドが展開を始めた時には、ローカルメイクブランド自体があまりなく、棚のほとんどを外資系のブランドが締め、それによって消費者を惹きつけていた。
しかし、市場は今、「国潮」や「国貨」ブームも手伝って、ローカルメイクが大きく成長し、消費者のニーズも大きくそちらへと傾いていった。
特にこうしたローカルコスメブランドは、常に数多くのカラーバリエーションをそろえ、さらに絶えず新商品を世に送り出す。
それはSKU単位でも膨大な量となる。
新鋭のセレクトショップはそれに対応する店舗づくりをし、店内のSKUも数千というケースも少なくない。
そして目の前にそれらが並べられる姿を求めて消費者は新鋭セレクトショップを訪れる。
だが従来型のセレクトショップにはそれだけの商品をそろえる棚がない。
こうしたところに大きな消費者とのミスマッチが生まれていた。
さらにそれがコロナウイルスの外出制限によってさらなる打撃を受けた。来店者数は激減、テナント維持が難しくなり、展開している店舗を閉めざるを得なくなった。
逆にその話題性によって特に若者消費者の心をつかんでいた新鋭セレクトショップは、コロナ直後からマーケティング活動を本格化、外出規制緩和直後に、一気に市場の主役の地位を奪うという結果となって表れたのである。
わずか1年、いや半年程度の出来事である。
確かに新型コロナウイルスという予期せぬ大きな災害が起こってしまった影響はあったが、中国の消費者嗜好の変化は、企業(この場合は店舗)の対応能力とっては短時間でこれまで大きな市場変化を起こしてしまう。
今後の市場展開でも、これは常に考えておかなければならない。