ダブルイレブンで元年到来 加速する中国「医療美容」はZ世代が主に

中国の大型商戦は単純に交易額だけでない注目ポイントがある。それは新たな消費ブームの起点となる事である。

昨年は「下沈市場」、すなわち3線以下の都市市場開拓が注目され、2020年もコロナ禍がありながらもそれが継続された。

そして今年、最高の交易額を達成したダブルイレブンでも新たな消費ブームが生まれている。そのキーワードは「医美」である。


2020年ダブルイレブンは医療美容元年に

「医美」とは「医療美容」の略で、日本では「〇〇医療外科」といった名前で存在している、美容施術を専門にしたクリニックである。

 

今年のダブルイレブンは実は「医療美容EC元年」と呼ばれるほど、医療美容が盛り上がり、今後の医療美容市場の伸びが注目されている。

 

その代表格が中国のアリババ系医療美容プラットホーム「新氧」である。同プラットホームではダブルイレブンに先立つ10月14日からキャンペーンを開始、1000件を超える医療美容クリニックとの提携の元、お得な医療美容サービスの販売を行った。

その結果は10月14日0時から11月11日24時まで、同プラットホームオンライン成約額が同時期に比べて213%増。プラットホームでのライブは5000時間を超え、3000万人が視聴したと発表されている

 

医療美容がここまで盛り上がるのはダブルイレブン始まって以来のことだ。

 

11月11日24時までの同プラットホームでの日平均検索数は2019年同期比で「プロポーション」が70%、「皮膚美容類」が68%、「顔の輪郭関連」が100%、「唇の整形」が186%、それぞれ増加している。

キャンペーン期間中は参加している1000件もの医療美容機関が総額1億元にも上るキャンペーンクーポンを発行、同時に施術も5割引きサービスなどを展開するなど、本家T-Mallにも劣らぬ大盤振る舞い。

 

さらにはそのライブコマース(?)を展開し11月7日から9日までの「スーパーライブ期間」を経た、11日当日も人気ライバーなどと提携し4時間、167万人視聴、最高オーダー単価8万元を記録したとも公表されている。

 

まさに、医療美容もEC、ライブコマース時代へとなったのである。

拡大を続ける中国での「医療美容」市場とは?

では中国における医療美容はどのような状況にあるのだろう。

日本でもかつては「美容整形」といった印象が強く、美を得る手法でありながら、どこか公にできない存在であった。

しかし、中国ではそうした美容整形に対して若干ハードルが低い。

 

一つには伝統的に「外的美しさは内的な美を現す」といった古い考え方があったが、同時に90年代末ごろから韓国の美容整形クリニックが中国で展開し、サービスを展開していた。

 

特に二重施術などのいわゆるプチ整形は「就職用に」と若年層に浸透し、比較的広い範囲で受け入れられてきた。

中国では外的手法によって自身の美しさを磨く、高める、という意識は元来強かったのである。

 

現在ではかつての美容整形(プチ整形)加え「ヒアルロン酸注射」などの比較的手軽にできる施術も注目を集め、医療美容市場が大きく成長しているのである。

 

中国の調査会社「艾媒諮詢」によると、中国における医療美容市場は2015年に870億元ていどであったものが、2020年には4倍近い3150億元に達する予想されているが、今年のダブルイレブンでの盛り上がりを受け、2021年にはさらに大きく成長するものと予想されている。

【グラフ】中国医療美容業界の市場規模の推移(単位:億元)

出所:2020-2021年中国美容美发行业细分领域及总体趋势研究报告(艾媒諮詢)

メイン消費者はZ世代。成分党、アンチエイジングニーズを吸収

拡大する中国の医療美容。今、それを支えているのはZ世代、すなわち95後世代であり、今年のダブルイレブンでもこうしたZ世代による消費がオンライン医療美容消費を盛り上げた。

 

前述の艾媒諮詢の調査では、2018年における医療美容消費の主力は20~25歳という若年層が中心であることが見て取れる。さらに19歳以下も20%近い比率を見せている。

【グラフ】中国医療美容消費者の年齢層分布

出所:2020-2021年中国美容美发行业细分领域及总体趋势研究报告(艾媒諮詢)

さらにもう一つの医療美容プラットホームAPP「更美」における2020年ダブルイレブン平均客単価を見てみると、もっとも高いのは80後世代ではあるが、90後、00後の消費金額も決して少なくはなく、1人2000元以上の消費を行っている。

 

こうした消費をするのは北京や上海など、大都市の経済的に豊かな家庭の若者が多いようであるが、これまで化粧品などによるスキンケアに飽き足らず、美を求めて、より効果の高い外的施術へと興味が向いていることを示している。

 

さらにZ世代は、「成分党」ともいわれる、化粧品やサプリメントの成分に注目し、評価するという消費者が少なくない。

こうした成分党から見れば、肌や美に有効な成分を、医学的に効果の高い方法で接収するという点を高く評価しているのではと予想される。

またよく知られているように中国では若年層(20代)からアンチエイジングを始める女性も多く、そうした層も取り込んでいるとみられる。

 

しかしながら、市場拡大と同時に問題となっているのは悪質な医療美容業者の増加である。沿岸部大都市は一定レベルの「大手」が登場して、提供する品質の競争が起こっているが、地方都市では情報の展開は大都市レベルでありながら、サービスの質や業者モラルの低さも問題となっている。

 

美に敏感な中国消費者の後押しを受けている中国の医療美容だが、元年を迎えた今年以降が健康発展の正念場となりそうだ。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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