2021年は日本でも関連報道がされた618商戦。徐々にではあるが、全体の成果に関する情報が出始めている。
今回はそれら公開されている情報から、2021年618の模様を見てみよう。
目次
JD.comが3,400億元の売上。スキンケアは上位陣が安泰
すでに日本の報道でも紹介されているように2021年618は、JD.comのオーダー金額が3,438億元と、W11越えとはならなかったが、2020年の2,692億元を上回る成果を達成している。
【グラフ】618とW11の交易額の推移
出所:それぞれの公式発表を基に中国トレンドExpressにて作成
T-Mall、そして今回の台風の目ともいえる抖音(Douyin)はオーダー金額数の発表はまだない。
ただ、抖音に関してはライブコマースにおいて、期間中に配信されたライブの総時間が2852万時間に達した事、累計で372億人が視聴し、1000万元以上のGMVを獲得したライブスペースが153あったことが公式に発表されている。
しかしながら、各プラットホームでの公式発表の度合いがまちまちで、全体像をとらえるには真は若干の時間を擁しそうである。
そうした中国の商戦において日本から見て気になるところがコスメ、特にスキンケアブランド。まずはそのT-Mallにおけるランキングを見てみよう。
中国のEC、小売媒体である「億邦動力(ebrun.com)」では、ECdatawayのデータを基に期間中のランキング推移を発表しており、それを参考にする。
【表】2021年天猫618スキンケアブランドの順位変動
出所:ECdataway
結果を見れば、期間を通じて「L`oreal」、「Estee Lauder」、「Lancome」、「Olay」、そして「The history of Whoo」など海外ブランドが上位を占める結果となった。
日本ブランドにおいてはやはり「Shiseido」が健闘し、トップ5に食い込んでいる。
同時に注目しておきたいのは最終段階でトップ10には入ることはできなかったが、5月末の予約期から6月3日時点ではKOSEの「COSME DECORTE」がトップ10内に姿を見せ、人気の伸びを見せている。
最終段階で中国の敏感肌向けスキンケアブランドとして人気の高い「WINONA」が急上昇を果たしたこともあり、トップ10入りはならなかったが、今後W11に向けた動きが注目されるブランドである。
順位が激しく動いたメイクアップ。商戦の新たな戦い方?
興味深い動きを見せたのが天猫プラットホームのメイクアップブランドの動きである。まずは下の表を見てもらいたい。
【表】2021年天猫618メイクアップブランドの順位変動
出所:ECdataway
最終的な結果を見れば、「花西子」が首位に、昨年はトップ10外だった「COLOR KEY」が3位、そして「完美日記(PerfectDiary)」が4位と、上位5ブランドの内3ブランドを中国ブランドが占めている。
しかし時空列に沿ってみると、当日のスタートダッシュに成功した中国ブランドは「COLOR KEY」であり、上位を占めたのは欧米系のブランドであった。
「花西子」も10位、「完美日記(PerfectDiary)」はトップ10外と、昨年のW11の結果を覆すスタートであったといえる。
その状況が変化を見せたのが6月1日以降。すなわち618の予約期間が終了し、本格的な商戦が始まったタイミングである。
6月1日から3日までで、影を潜めていた「完美日記(PerfectDiary)」が一気に7位まで浮上。
中国ブランドでは先陣を切っていた「COLOR KEY」もいったんの沈みを見せたが、その後上昇に転じ、さらに「花西子」も10位から徐々に順位を上げていった。
終わってみれば前述のように2020年W11時に「COLOR KEY」が加わり、中国ブランドが欧米ブランドを抑え込む結果となった。
「COLOR KEY」は若い世代にも人気の高い90後の女優“迪麗熱巴(Dilraba)” を起用。
同時に今年は同じく若者に人気の日本発IPであるハロー・キティとのタイアップ商品(リップグロス、アイペンシル)を発売した。
この人気アイドルとIPコラボの組み合わせでスタートダッシュに成功し、リップグロスは予約期で100万本、アイペンシルも50万本以上の販売件数に。
従来のセオリー通りの天猫だけではなくそのほかすべてのチャネルの合計で、2.3億元の売上を達成している。
不思議なのは「花西子」、「完美日記(PerfectDiary)」の動きである。
特に後者は6月1日以前には全くランキングに上がっておらず、予約期には各ブランドの動きを追っていた中国メディアからも戸惑いの様子が見て取れた。
考えられるのは、両ブランドはともに巨大なファンコミュニティを抱えている点である。一つの可能性としては、両ブランドとも予約期の重点を自ブランドにおけるコミュニティに向け、ECプラットホームでの販促活動は6月1日以降に置くという戦略である。
実際に「618の重点は会員の獲得」と語るブランドの声もあるように、商戦をファンマーケティングにおける新規会員の獲得の場とみる動きも徐々に生まれている。
▼参考記事
【column】618大型商戦に潜むファンマーケティング争奪戦 大型商戦の新たな戦略は?
その動きの中で、618商戦には参加するものの、予約期においては既に獲得した会員(ファン)へのサービスを手厚くして、ファン層による購入を活性化させる。
そして、本格商戦においては新規会員獲得を目的として、新規購入者を惹きつけるプロモーションを展開する…。
今回のメイクアップブランドの順位変動からは、そんな戦略があったように見える。
もちろん、あくまでも仮説ではあるが、こうした動きもあながち空論とは言えないのではなかろうか。
これらメイクアップブランドの動きから、今後の商戦の戦い方を考えたいところである。