【column】2021年ダブルイレブンを戸惑いつつクチコミで見る―ライト版―

トレンドExpressでは現在、2021年のダブルイレブンをクチコミ分析から見てみるという恒例の『ダブルイレブン振り返りレポート』2021年版を作成中である。

今回は作成中レポートから一部をピックアップしてお届けしたいのだが、2021年はクチコミでも例年とは異なる状況が現れており、現在鋭意精査中である。

そのため、今回はあくまでも「現時点での分析から見える傾向」として読んでいただきたい。

ダブルイレブン全体を通したクチコミに異変?

2021年のダブルイレブンは、異例尽くしであった。

「前夜祭」における名物であるカウントダウンはなく、取引総額の速報もない。ただ粛々と過ぎ去る11月11日を、筆者は過ごしていた。


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こうしたダブルイレブンの状況を知るべく、トレンドExpressが2020年から作っているのが『ダブルイレブン振り返りレポート』であり、ダブルイレブンに関連したクチコミ分析から当年のダブルイレブンを客観的に見て行くものである。

 

今年もその制作を進めており、「ダブルイレブン」、「ダブルイレブン×買った」、「ダブルイレブン×ライブ」、「ダブルイレブン×ライブ×買った」といったキーワードで、中国SNSにおけるダブルイレブンの状況を調べている。

※期間は2021年10月20日~11月19日

 

まず驚いたのが「ダブルイレブン」全体を示すキーワードの少なさである。

現在、実数は再度精査中であるためいったんここでの公開は控えるが、新型コロナ後のリベンジ消費に沸き立った2020年と比べると大きくその数を減らす模様である。

 

その背景にあるのはダブルイレブンシーズン中、市場監督管理局などの行政からメディアを通じて「理性消費」というメッセージが多く発信されている。

これは消費者保護の観点から、メーカーによるやや恣意的な価格操作(商戦前に価格を上げ、それを下げて見せるような行為)を禁止する注意事項も含まれており、消費者には購入にあたって衝動的な判断を戒める

こうした点から、ダブルイレブン商戦全体として、過度に消費を扇動するようなメッセージ、マーケティングを自粛する動きがあったのではないかと予想される。

では、クチコミをしたペルソナを簡単に見てみよう

【グラフ】Weibo2021年と2020年「W11」クチコミ投稿者の年齢比率対比

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、メインとなっているのは30代で2020年より大きく伸びている。また注目したいのは10代の比率が高まっている。

それに反して40代および50代は減少、特に50代以上の比率は大きく下がっている。

もともとスタートしてから10年以上を経過しているダブルイレブン、平均年齢も若干上がりつつある中で、アリババグループを含めたプラットホーム各社ともに現在の消費の主力となっている若年層、Z世代取り込みに注力していた。

特に今年は抖音などの若者に支持を受けている新たなプラットホームの台頭もあり、ダブルイレブン全体としての若者化は進んだのではないかと予想される。

日本勢が健闘。「買った」クチコミランキング

では、「ダブルイレブン×買った」というキーワードで検出されたブランドランキングを、2020年、2019年と並べてみてみよう。

ただし、2021年に関して上述のように精査中であるので、今後変更の可能性もあることを付記しておく。

【表】Weibo「ダブルイレブン×買った」ブランドランキング上位30

出所:Trend Express China調べ

まずはデジタル・スマホ領域。

相変わらず「Apple(iPhone)」が君臨を続けているが、2020年までと比べると、「Xiaomi(小米)」がランクを上げており、それまでの「Huawei(華為)」や「OPPO」、「VIVO」などの中華系デジタルブランドを圧倒する勢いを見せている。

そのあとは化粧品勢のシェア争いが続いている。

天猫スキンケア部門で1位となったLorealが上位に上り、Estee Louderについで欧米勢が顔を見せている。

中国ブランドでは「Florasis(花西子)」がクチコミ件数では3位に入っており健闘、「PerfectDiary(完美日記)」は若干伸び悩みを見せ前年よりもランクを下げた。

 

ただ、コスメ市場における中国勢は10位に入ったスキンケアの「WINONA」があるが、それ以外は続かず、また「PerfectDiary」も欧米勢に抑え込まれた感が見える。

 

日本勢では「SHISEIDO(資生堂)」も着実にランクを上げているほか、欧米メーカーながら日系との認識をされている「SK-Ⅱ」などを含めてランクインをしている。

また興味深いのは音響分野などで人気を高めた「Sony」もクチコミ件数を伸ばし、トップ20以内に入っているなど、ダブルイレブンにおける新たな日本ブランドとしてランクインを果たした。

 

またダブルイレブンでもお菓子を非常に多く売れる商品であるが、中国の新興お菓子ブランドである「Three Squirrels(三只松鼠)」がクチコミ件数を伸ばし、トップ10にまで上昇している。

日本のお菓子も中国で一定の人気を得ているが、そのマーケティングや商品開発の研究対象として、同ブランドの動向には注意をしておいた方がいいだろう。

 

こうしたランキングを、その国別に整理し、クチコミ件数の比率を2020年と対比させてみた。

【グラフ】「ダブルイレブン×買った」国別の比率対比

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、コスメ業界では欧米系が中国系を抑え込む形になっていたが、全体を見るとクチコミ件数では中国ブランドが優位な状況にある。

ただ双方ともに前年に比べて比率を減らしており、その隙間に日系ブランドのクチコミが割り込んだ形になる。

もちろん業界によってその状況は異なるが、クチコミ件数の比率を見る限り、日系としては大健闘したともいえるだろう。

 

ただ、現時点のクチコミ件数を見ていると、2020年までは上位5~10ブランドにクチコミが集中していたが、2021年には件数から見れば「横一線」という傾向がみられる。

精査中であるためお見せできないが、これが事実であれば、クチコミから見る市場争いは「どこか1ブランドが強い」という状況から、消費者が各々好きなブランドを手に取り、つぶやいていくという競争状態に陥るのではと想像される。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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