【市場分析】2022年中国スキンケア界の新トレンド 機能性スキンケアで日本の商機はいかに

中国の化粧品業界で「功效型护肤」というスキンケアを指すキーワードが注目されている。

その指すところは「肌の悩みを改善するための機能を有し、その成分を含んだスキンケア化粧品」という事である。

日本とは異なり、医療と化粧品の間に明確な壁を設けている中国にあって、この新トレンドはその両者の間に存在しうる新たなセグメントとして注目されている。

今回は中国国内の産業レポートとクチコミ分析からそのトレンドの概要を追いかけてみよう。

新たに登場したスキンケアのセグメント

そもそも「功效型护肤」を日本では何と呼べばよいのだろうか? ここでは便宜上「機能性スキンケア」という日本語訳をし、この記事でもそれで通すこととする。

冒頭でも述べたように、特定の肌悩みに対応した機能を有するスキンケア化粧品である。

 

中国では日本と異なり「化粧品」と「薬品」が厳しく分けられている。

化粧品業界においてもOTCまたはサプリメント業界においても、それぞれの広告訴求に厳しい制限が設けられていることは、日本の同業界でも広く知られている。

 

ただ、近年は消費者の肌悩みが多様化しており、そうしたニーズ沿って新たな化粧品が生まれている。

現在は化粧品業界において「非特殊用途化粧品(一般化粧品)」と「特殊用途化粧品(美白やシミ除去などの機能を有する化粧品)」という新たな分け方が生まれ、消費変化に対応している。

 

そうした中、今回紹介する「機能性スキンケア」は、既存のセグメントにまたがりながら、「敏感肌」を代表とする「何かしらの機能・効能を有する成分が豊かな」化粧品とされている。

法整備においても2021年5月から『化妆品功效宣称评价规范』に従い、エビデンスがあり当局の許可があれば、その機能を訴求することが可能となっており、2022年1月1日より新たに申請が正式に開始されている。

 

中国のシンクタンク艾瑞諮詢では『2021年中国功效型护肤品行业研究报告』というレポートを発行している。

その調べでは、機能性スキンケアが誕生したばかりの2016年には74.2億元(約1340億円)程度であったが、年間で30%程度の成長を続け、2019年に急成長。2021年には概算で352.3億元(約6363億元)、2023年までに589.7億(約1兆円)規模にまで拡大すると予想している。

【グラフ】「機能性スキンケア」市場規模の推移と予測(単位:億元)

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

2019年ごろは、中国消費者においていわゆる成分党が登場し、躍進した時期であることから、機能性スキンケアニーズの背景に成分党の存在があることは間違いなさそうである。

クチコミで見る機能性スキンケア市場

ではクチコミにはこうしたトレンドはどのように反映されているのだろうか。中国トレンドExpress編集部ではWeiboの簡易クチコミ分析を実施した。

その結果をみると、2021年は前年よりも倍近い件数が確認できた。

【グラフ】「功效型护肤品」年間クチコミ件数

出所:Trend Express China調べ

また月ごとに見ても2021年に入り徐々に件数が伸びて言っていることが見える。特に「婦人節」や「W11シーズン」で増加がみられることから、訴求ワードとしても使われていると考えられる。

【グラフ】「功效型护肤品」月次クチコミ件数の推移

出所:Trend Express China調べ

さらにキーワードのポジネガ比率を2020年と2021年を比べてみる。

2021年はポジティブワードが増加していることが見て取れる。それに伴いネガティブワードも若干増えているが、ポジティブの伸びほどの顕著さはない。

【グラフ】「功效型护肤品」年間クチコミにおけるポジネガ比率

出所:Trend Express China調べ

Weiboのクチコミにおいても「功效型护肤」というスキンケアキーワードをポジティブなものとして受け取り、それを発信していると考えることができる。

 

中国側の消費者情報メディアにおいても「功效型护肤」が注目されている。

その論調はいわゆる「成分党」と呼ばれた消費者グループを吸収し、かつ中国の行政においても一定のレギュレーションが定められた(後述)ことによって、より市場が正式化、かつ拡大することが認められるためである。

2022年が「功效型护肤元年」という認識が中国側でも定着している様子が見られる。

そのユーザー属性はいかに

続いて、その使用者像を前述の艾瑞諮詢が制作したレポートから見て行こう。

同レポートでは機能性スキンケアの消費者層1,000人に向けたアンケート結果を実施している。

 

まず全体の70%強が女性であり、機能性スキンケアの主力はやはり女性となっている。ただ、男性も1/4以上は存在しており、スキンケアへの意識の高い男性も機能性スキンケアを利用している様子である。

【グラフ】2021年「機能性スキンケア」購入者の男女比

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

年齢別にみると、女性は20代からの使用が多く、特に社会に出てから(20代後半~30代前半)がもっともコアな消費者層となっている。

【グラフ】2021年「機能性スキンケア」購入者の年齢比

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

ここには最近広がる「アーリーアンチエイジング」の影響もあると考えられる。男性はそれに反し30代後半以降の比率が増える。社会的な地位、経済的な自由度とともに加齢による変化を感じ始めてから使用を始めるケースがあると考えられる。

 

また機能性スキンケアユーザーが、その商品の使用を始めるために、スキンケアの意識の何が変わったのか、またコロナ情勢下においてどのような肌の悩みを抱えているかが調査されている。

【グラフ】「機能性スキンケア」ユーザースキンケア意識変化趨勢

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

 

【グラフ】コロナ下における肌の悩み

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

意識では「成分や機能」および「商品の安全性」への意識が男女ともに高まっていることが見て取れ、「機能性スキンケア」ニーズのベースを形作っていると考えられる。

また肌の悩みにおいては「毛穴の開き」、「敏感肌・炎症」などが上げられており、「機能性スキンケア」市場がこれらの悩みをターゲットに形成されているといえる。

いずれも、コロナにおけるライフスタイルの変化が肌に与えるマイナス影響に消費者が関心を寄せた結果といえる。

 

最後に機能性スキンケアユーザーがどの国の商品を選んでいるかというアンケートを見てみよう。

【グラフ】「機能性スキンケア」商品原産国

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

これを見ると中国ブランドが6割以上に達しており、次いでフランス、そして日本となっている。

現地である中国ではいち早く消費者の傾向をつかんでいるためか、「微諾娜WINONA」のような商品が資本を集め、市場に登場しており、それがシェアを獲得していると考えられる。

 

日本においては他国と異なり非処方薬においてもより細かく設定がされており、また薬と化粧品の中間商品である「薬部外品」といった領域が法的に認められていることから、関連商品も多い。

中国の機能性スキンケア市場の拡大は、そうした商品のチャンスともなるだろう。

【グラフ】「機能性スキンケア」の購入理由(国産・海外)

出所:2021年中国功效型护肤品行业研究报告

また購入理由においては国内、海外ブランドともに「コスパ・安全性」が最も多く、海外製品に関しては「ブランドの歴史と信頼性」がそれに次いでいる。日本ブランド進出にはブランドストーリーも併せて訴求する必要があるだろう。

 

法整備が整い、中国国内企業でも参入が続いている機能性スキンケア市場。日本が強みを持つ分野であるからこそ、その動きに注意を払いつつ商機を狙いたいところである。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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