中国のトレンドの移り変わりは早い。
特にメイクアップの業界において、中国ブランドは急激に躍進するものの、突然その勢いを失うことも多い。
実は2022年の618でもそんな動きが垣間見える。
これまで市場で輝いていたブランドの光が弱まるとともに、新たなブランドが一気に存在感を見せる。
今回は2022年618商戦で登場した新たな中国メイクブランドをクチコミ調査してみた。
目次
欧米勢に割って入った急成長の中国メイクブランド
2022年T-Mall618のメイクアップブランドランキングを見てみると、やや意外な点が見て取れる。
【表】2022年618商戦T-Mallコスメブランドランキング
出所:Nint任拓
メイクアップのランキングにおいてもトップ10のうち、7ブランドを海外勢が占めた。
注目の中国ブランドは3ブランドが入ったが、かつて中国メイクのけん引役であった「PERFECT DIARY(完美日記)」が姿を消している。
同ブランドは「私域流量(Private Traffic)」やライブコマースの大量投下など、現在一般化しているマーケティング手法を大々的に行い、一気にスターダムに駆け上がったブランドだが、ここにきてやや“息切れ”を起こしている様子である。
中国メイクアップブランドでは「花西子」が3位に、「COLORKEY」が10位と上位に食い込んではいるが、昨年のダブルイレブン以降、欧米勢に押されている印象が強い。
そんななか代わってトップ10に躍り込んだ中国メイクアップブランドがある。
「TIMAGE彩棠」である。
同ブランド、急にT-Mallランキングに姿を見せているが、情報は決して多くはない。
そこで、少しでも状況を知るべく、Weiboによる簡易分析を試みた。
創始者自らがブランディングに寄与する「TIMAGE」
同ブランドは2012年にアイライナーを売り出し、2014年に商標登録を行った中国国内ブランドである(http://www.caitangtimage.com/)。
創始者は唐毅氏。中国ではトップクラスのメイクアップアーティストと呼ばれる人材であり、多くの映画やドラマなどのメイクも担当しているという人物である。
その唐氏が「中国の女性の持つ本来の美しさを引き立たせるメイク」というものをブランドメッセージに立ち上げたブランドとなっている。
まずはそのWeiboクチコミ月次推移を見てみよう。
【グラフ】TIMAGEの直近1年間のWeiboクチコミ件数推移
出所:Trend Express China調べ
これを見るとクチコミ件数は月平均で2000件程度と、大手国際ブランドに比べると多くはない。
2021年10月にクチコミ件数が大きく跳ね上がっているが、これはダブルイレブンシーズンに一定のマーケティングを行った形跡が見られ、かの「李佳琦」を起用したライブコマースも行った形跡がみられる。
ダブルイレブン以降、若干月次クチコミのベースアップがみられ、商戦期マーケティングを活用して、認知度向上などにつなげられているものと見える。
そして2022年の5月、618商戦期に入りまた再びクチコミの増加がみられるように、前年の商戦の成果を今年の商戦に持ち込んでいる動きがみられる。
ただ、同ブランドでは有名人の代言人などはほとんど行っておらず、大々的なマーケティングを行っている様には見受けられない。
それでもWeiboのフォロワー数11万人、小紅書のノート数としては1万件程度に達しているのは、がんばっていると言えるだろう。
同ブランドで発信されている内容の多くが「メイクアップノウハウ」である。
特に創始者でメイクアップアーティストである唐毅氏自らが講師となり、自分の顔立ちをより際立たせるノウハウ動画を小紅書、そして抖音などで多く投稿している。
実際に抖音における唐氏個人のアカウントには235万人ものフォロワーが存在しており、投稿されているレクチャー動画にも数万件から100万件ちかい「いいね」が付くこともある。
いわば創始者がKOL的な役割を果たしつつ、「役に立つノウハウレクチャー」というコンテンツを配信し続けていることで、ブランドの知名度や興味関心につなげているのではと考えられる。
注目されるベースメイク。ナチュラルメイクブームに乗れるか
では、同ブランドにおいてどのようなキーワードがつぶやかれているのだろうか。クチコミの頻出ワードを見てみるとこととする。
【表】TIMAGEクチコミの頻出キーワード上位30
出所:Trend Express China調べ
これを見ると「コンシーラー」、「ベースクリーム」、「ベースメイク」、「ファンデーション」、などのベースメイク商品が並んでいる。
メイクアップブランドとはいいながらも、口紅やアイシャドウなどのカラーメイクではなく、その下地部分の商品に注力している、もしくは消費者の注目を集めていることが分かる。
実際に抖音などにおける唐氏の動画を見てみると、がっちりとしたメイクアップを行うというよりは、ベースメイクのノウハウによって顔を明るく見せる方法や、より立体的に見せる方法などが紹介されており、これまでの「チャイボーグ」を思わせるメイクとはやや異なる印象を受ける。
むしろ、現在注目を集めつつある「白開水メイク」のような、ナチュラルメイクで、どのようにより引き立たせるか、という点にポイントが置かれている。
そのため、リンクする商品もカラーメイクよりも、ベースメイクの方がより注目されているものと思われる。
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また「オイルコントロール」や「肌にぴったり」というキーワードも見られ、その使用感においても一定の評価を見ることができる。
さらに興味深いことに、ライバルであるローカルメイクブランド「MAOGEPING」や、同じく2022年の618で躍進した「PROYA」の名前も見える。
予想ではあるが、同ブランドはこうしたブランドと併用されることが多いのではないだろうか。
スキンケアにおいては「PROYA」、カラーメイクでは「MAOGEPING」、そしてその間に位置するベースメイクにおいては「TIMAGE」を利用するという消費層が一定レベルでいるように感じられる。
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芸能人による代言とは異なり、創始者が広告塔になり有益コンテンツを配信するモデルで伸びつつある同ブランド。
さらに商品の中心となっているベースメイク商品は、昨今のナチュラルメイクブームが追い風を受ける形となっている様子でもある。
この勢いがどこまで続くか、下半期の商戦も注目したい。