【mini column】中国スキンケアの新潮流?よりシンプルなケアへ

常に念入りなスキンケアを行う中国の消費者。しかし、そのスキンケアの手法が徐々に変わりつつある。

メイクアップにおいても、ガッチリ系のメイクから、より素顔の美しさを引き立たせるメイクも浸透しつつあるが、スキンケアにおいてもかつての「良いものをより多く使う」ケアから、「必要なものに集中する」ケアが広がりを見せている。

今回は今、中国のコスメ業界に広がる新しいスキンケアのトレンドをクチコミ簡易分析を含めてみてみよう。


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徐々に広がる「精簡スキンケア」とは?

現在、Weiboや小紅書で注目されているスキンケアキーワードが「精簡」である。

 

「精」とは肌質に合った化粧品や肌へのダメージの少ない化粧品を選択して使用すること。

「簡」とはスキンケアのステップをより簡略化、シンプルなものにするということである。

 

この精簡スキンケアという考え方自体は、2019年の末ごろにKOLである「駱王宇」が、「不必要な化粧品を取り除いて、スキンケアのコストを乳液、クリーム、UVケアに集中させる」ことを述べたのが最初と言われている。

 

その後、その考え方に皮膚科の医師ブロガーなどが賛同し、徐々に「精簡スキンケア」の考え方が浸透。

現在では小紅書にも11万件もの関連投稿がなされており、多くの投稿が「精簡スキンケア」の手法、「実はこの化粧品は必要なかった」、「精簡スキンケアで使える化粧品ブランド」など、知識やノウハウを紹介するものである。

 

具体的にはこれまで一般的だった「洗顔、化粧水、リペア、エッセンス、乳液、アイクリーム/フェイスクリーム、UVクリーム」という7つのステップを「洗顔、保湿、UVケア」の3つに集約させるというが主流であるようだ。

 

これまでの中国では、成分党を含めて「より効果のあるもの」、「肌にいい成分」を多く肌に取り込むために、それぞれの効果の高い化粧品をそろえ、使っていくというものが主流だった。

しかし、この精簡スキンケアではこれまでの化粧品から「必要・不要」を分け、「不要なものは使わない」という逆方向のケアによって肌を整えようというのである。

背景にあるのはやはり、中国女性の大部分が感じている「敏感肌」、「乾燥肌」などの肌のデリケートな悩みであるようで、使用する化粧品も肌のダメージの少ないオーガニックなどの「CleanBeauty」意識と共通する部分もある。

トレンド先んじたブランドへ注目が。スキンケアの新トレンドをクチコミ分析

では、この「精簡スキンケア」というワードがWeibo上でどのようにつぶやかれているのか、クチコミ簡易分析を使って見てみよう。

 

まずは直近1年間、「精简护肤(精簡スキンケア)」というキーワードの投稿件数状況を見てみよう。

【グラフ】Weibo「精簡スキンケア」月次投稿件数の推移

出所:Trend Express China調べ

これを見ると、12か月間で34,000件もの投稿がみられている。

集中しているのは2021年11月のダブルイレブン商戦期。そして2022年に入ってから2月、4月に投稿数の山ができているのが分かる。

推測だが2月は翌月の「3.8婦女節」、そして4月は「618」商戦の直前であることから、精簡スキンケアを使ったプロモーション投稿が増加したのではと想像される。

 

それが正しければ「精簡スキンケア」というワードは、ユーザーの自主的なスキンケアトレンドというだけではなく、ブランドもプロモーションに活用できるまでのキーワードとして認知されているということになる。

 

さらに2022年7月に一気に上昇がみられ、夏場のスキンケアに精簡スキンケアが取り入れられているのではと想像できる。

【表】Weibo「精簡スキンケア」投稿頻出キーワード上位30

出所:Trend Express China調べ

関連キーワードで最も多かったのはエスティローダーグループのスキンケアブランド「CLINIQU」であった。

同ブランドは2020年ごろより「精簡スキンケア」のワードを公式アカウントなどを通じて発信しており、そのため「精簡スキンケア」の代表的なブランドとして認知されているのではと考えられる。

また同ブランドが「アジア太平洋エリアの代言人」として起用しているのは、Z世代にも人気の高いトップアイドル「王源」であり、こうしたCLINIQU関連キーワードが、「精簡スキンケア」の頻出ワード上位を占めた。

 

また「同款(有名人と同じモデル)」というキーワードも多くの投稿がされている。

精簡スキンケアでは使用する化粧品の数、ステップを省略するが、それ故に1つ1つの化粧品に高い効果を求める傾向が強い。

 

そうした効果を確認する基準となるのが、肌のきれいな有名人が使用しているという部分である。

 

また、集中的にケアをする肌悩みとしては、やはり「敏感肌」が上位に、そして「オイルコントロール」、そして「アンチエイジング」と続いている。

こうした肌悩みに特化したスキンケア化粧品が今後の精簡スキンケアでも注目されることになると予想される。

 

また一つ注目しておきたいのが「林彦俊」というキーワードである。

彼は2018年のオーディション番組「偶像練習生」で5位に入り、歌手、俳優として活躍している若手アイドルである。

その彼が代言人となっているのがイギリスのスキンケアブランド「REN」である(ユニリーバグループ傘下のブランド)。

同ブランドは成立が2000年と比較的新しいブランドではあるが、有害添加物を使用していない「クリーンスキンケア」と「安心」、「安全」、そして環境にも優しい「エコ」をブランド概念として打ち出しているブランドである。

林彦俊は2022年6月から同ブランドの代言人を務めており、若者への浸透を図っている。現時点ではまだ大きなムーブメントにはなっていないが、中国の精簡スキンケアの流れは、海外の「CleanBeauty」ブランドにも参入のチャンスを与えていると言えるだろう。

 

より多くのものを使うスキンケアから、「必要なものだけ使う」スキンケアへ。

中国スキンケアトレンドの変化は、より消費者の肌悩みに特化した商品が求められていることに。

こうしたニーズを常に把握しておくこと、そしてそのニーズに合ったメッセージの発信がより重要度を増してくるだろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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