【インバウンドウェビナーのお知らせ】
中国インバウンド復活に向けた先行的打ち手とは?
〜トレンド予測と需要開発に向けて〜
回復が見込まれる中国からの訪日観光。
それに向けて日本企業は何をすべきか? 現状の整理・把握と独自調査をもとに、
株式会社NOVARCAの濵野代表が新たなインバウンドについて語ります。
お申し込みはこちら
期待されるインバウンドの復活。
現時点では中国からの訪日観光客の明確な戻りはないが、一部、マルチビザを取得している消費者などの入国がある様子である。
さらに1月26日には日本で新型コロナウイルスの感染症レベルを「2類」から季節性インフルエンザなどと同等の「5類」への引き下げ方針が発表される。
またさらに「2月中に水際対策の緩和」との報道がなされるなど、2023年に入ってから、大きな変化が続いている。
しかし中国からの訪日観光客が途絶えて3年。そのころを知る人たちの記憶も薄らいでいる。またビジネスの現場においても社内のインバウンドチームが休眠状態に入り、スタッフも各他部門に分散されたりといった事も耳にする。インバウンドの知見を新たに思い起こす必要性に駆られているのである。
そこで今回はかつて株式会社NOVARCA(旧トレンドExpress)が提供していたクチコミデータバンクから、2019年当時の人気スポットと人気商品を振り返ってみよう。
目次
春節データから見る中国消費者の観光状況
2023年1月30日、中国国家移民管理局制作法規司の林勇司長が、2023年春節シーズンの出入国状況を発表した。
それによると1月21日から27日までのいわゆる春節シーズンにおいて、全国移民管理機構ではのべ287.7万人の出入国を確認したとしており、前年の春節シーズンの120.5%に達しているとしている。
そのうち、出国者数はのべ144.3万人としているが、そのうち74.1万人が中国大陸内に戸籍を有している者。つまりは何らかの目的で海外へ出かけた中国消費者と考えられる。
目的地として最も多かったのがマカオで、のべ49.8万人。次いで多かったのが香港10.4万と、2つの特別行政区への移動が多かったとしている。
こうした中国での出入国状況、旅行予約アプリ上でもデータとして現れている様子である。
旅行アプリ大手の同程旅行のデータでは2023年春節シーズンにおける出国チケット予約件数は前年比の258%。また中国への入国チケットは同じく632%。海外のホテル予約件数も前年の177%に達した。
また最大手である携程(C-Trip)でも国際エアチケットは昨年の4倍以上に増えており、その人気の目的地はバンコク、シンガポール、クアラルンプール、チェンマイ、マニラ、バリ島などとなっている。
ただ残念ながら、人気渡航先に日本は入っていない。
周知のとおり、日本が比較的厳格な水際対策を実施しており、中国消費者はそのわずらわしさを避けていると考えられる(中国国内に設置されている大使館、領事館ではビザの取り扱いを開始している)。
中国では2月6日から海外向け団体旅行の取り扱いが解禁となったが、その中にも日本は含まれていない。
とはいえ、日本政府は1月27日に「5月8日から感染症レベルを現在の2類から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げる」と発表。
さらには冒頭で述べたように「2月中に水際対策も緩和する」という方向性が日本メディアによって報道された。
これらの日本の動きは中国の報道でも取り上げられ、日本への観光開始への期待が高まっている状況。
すでに小紅書(RED)などを見ると、現地旅行社や日本国内のランドオペレーターなどが日本の花見観光などを紹介する投稿が増えており、3月末の花見シーズンごろには徐々に日本への観光目的での渡航が始まるのではという予感を与えている。
ただ、日本でも騒がれた「日本で島を購入した中国人女性初上陸」のニュースに見るように、5年ビザや経営・投資ビザを所有できる富裕層以上の消費者層は、徐々に往来が始まっており、訪日インバウンドは水面下ではすでに始まっていると考えていい。
2019年、中国消費者はどこへ行っていたのか
こうして徐々にではあるが戻りつつある、もしくは復調が期待される中国からの訪日観光。
しかし、3年という年月で中国消費者が何を求め、どこへ行っていたのかを知る日本企業のスタッフも少なくなってしまっている。
そこで、株式会社NOVARCA(旧トレンドExpress)が2021年まで提供していた中国SNSのクチコミデータバンク「トレンドViewer」から、2019年に中国消費者が行っていた場所、また「買っていた」、「買いたがっていた」モノについて見てみることにしよう。
(※データバンクサービス「トレンドViewer」は現在提供しておりません。)
まず、どこのスポットに立ち寄り、SNS上にアップしていたのかを見てみよう。
【表】2019年Weibo「行った」日本スポットランキング
出所:株式会社NOVARCA
まず最も人気だったのは「沖縄」である。
現在は中国でも海南島というリゾート地が注目されているが、2019年時点では南国マリンリゾートスポットとしての「沖縄」が高い人気を誇っていた。
特に沖縄を経由しての入国に関してはマルチビザが取りやすくなる、かつ大型の免税施設が存在しているといった特典もあり、中国消費者からすれば非常に魅力的な土地だったのである。
インバウンド復活後に離島免税で人気の海南島やいち早くコロナ後の中国旅行者を受け入れた東南アジアなどの都市との競争に勝てるかが注目される。
上位には「札幌」や「湯布院」(福岡の空港からのアクセスがいい)、「清水寺」など、日本人にも人気のスポットが並んでいるが、唯一小売店でトップ10に入ったのが「ドン・キホーテ」であった。
同店は免税や中国のQR決裁が使えるほか、品揃えもよく、価格も安い。さらに深夜まで営業している店が多いため、昼間を観光に当てる旅行者や深夜便などで移動する旅行者には重宝されていた。
さらに、店舗内も賑やかで楽しい雰囲気になる、というのもSNS投稿される要因ともなっていたようだ。
また下位にも日本国内でよく知られたスポットが並んでいるが、それに混ざって「伊根の舟屋」という、比較的マニアックな地名が挙がっている。
こうした場所は、日本在住の中国人が観光で訪れSNSやチャットツールなどを通じたクチコミなどによって訪れる中国人観光客が多かったと思われる。
2022年に行った調査で見たように、中国の訪日リピーターの日本観光意欲は変わらず高い(下記、参考記事参照)。
インバウンド復活において、こうしたリピーター層がまず動くと予想される。
そうしたリピーターにとって、世界的な人気の観光地「京都」であるが、「金閣寺」や「天橋立」といったメジャー地はすでに周り終えた場所であり、「次に行くべき場所」を求めている。
新たなインバウンドでは意外な場所が人気となるかも知れない。
▼参考記事
【インバウンド】 訪日リピーターアンケート Afterコロナの日本観光ニーズはいかに?
2019年の「買いたい」、「買った」商品のクチコミはいかに
気になるのは、中国消費者が何をどう買うか、である。
コロナを経た3年間は中国消費者の消費特性も大きく変わっている。その購入基準や日本国内の商品に求めているものなど、以前のインバウンドとは変わって来ることが予想される。
とはいえ、まったくゼロから見るのも非常に難しい。
そこで、2019年のトレンドViewerから「買った」、「買いたい」をピックアップし、インバウンド復活時における比較規準として見たいと思う。
【表】2019年Weibo「買った」商品ランキング
出所:株式会社NOVARCA調べ
まず「買った」商品では、ピジョンの「ピジョン 薬用ローション(ももの葉)」がトップとなっていた。
中国では日本のベビマタ商品の人気は高く、ピジョンはそのなかでもトップブランドとなっていた。
ただ、近年は中国におけるベビマタ商品も徐々に成長をしており、以前紹介した「植物主義」といった新しいブランドも登場している。
以前の様な「ピジョン一択」にはなりにくくなっているともいえるだろう。
こうした日本の強みセグメントにおいて中国消費者の心理上の価値がどうなっているかという点は注目したい。
また2位には「龍角散ののどすっきり飴」。龍角散は言わずと知れた中国消費者における「神薬」ブランドであり、現在は中国大手製薬会社との提携の元、中国市場開拓を積極的に行っている。
21位には「新コンタック かぜEX」が入っているが、2022年末からのコロナ政策の転換によって大正製薬の「パブロン」に代表される日本の風邪薬が多く買われたが、それが新たなインバウンドにおいてどのように影響するのかは興味深いところだ。
続いて「買いたい」である。
【表】2019年Weibo「買いたい」商品ランキング
出所:株式会社NOVARCA調べ
2019年における「買いたい」クチコミ1位は「ヒロインメイク スムースリキッドアイライナー スーパーキープ」である。
使いやすさ、そして落ちにくさなどが中国消費者にも好評で、人気となった商品である。
▼参考記事
【中国人気化粧品】 「濡れても落ちない!にじまない!」 中国女性大喜びのアイライナー大分析
11位にKOSEの「雪肌精」、23位に「コスメデコルテ 化粧液」などの有名スキンケア商品が入っているものの、「買いたい」とつぶやかれている商品には高級商品は少なく、意外と小さな商品が多い。
もちろんサプリメントなども人気ではあるが、生活上のちょっとしたシーンに役立つ(悩みを解決する)アイディア商品や、つい集めたくなるようなデザイン商品が多いように見受けられる。
実はここに訪日消費のヒントが隠されているような気がする。
もちろん、中国消費者が日本で購入する鉄板商品のようなものは存在しているかもしれないが、中国消費者が「買いたい」と思うのは、日常の生活の中で、ちょっとした悩みを、もしくはやや深刻な悩みを解決する商品。
いわば何かの悩み解決に特化した商品である可能性が高い。
例えばスキンケア一つを見ても、中国国内では「敏感肌用」や「ニキビ対策」など、成分党が牽引する機能性化粧品市場が成長している。
こうした中国消費者の特定の悩みを深く理解し、それに特化した商品を送り出す、それを正しく伝えていく必要があると考えられる。
そのためにも中国生活を深く知るという事、その体制を作ることがどの日本企業にとっても今後の課題となって来るだろう。