日本円レートの急変動 小紅書クチコミから見る中国消費者の反応とインバウンド

2024年に入り中国からの観光客も徐々に増加中、2024年4月に至っては50万人を超え、月単位では2019年の7割を超えた。中国からのインバウンドにおいていろいろと話題は絶えないが、4月に至って大きな話題を呼んだのが「日本円レート」の急落である。

相対的には人民元の価値が上がったわけであるし、海外からの観光客にとっては喜ばしいことのはずなのだが、中国版Instagram「小紅書(RED)」のクチコミからは悲喜こもごもの様子が見える。

株式会社NOVARCAが毎月発行している「インバウンド月次クチコミレポート」から中国SNSから見える日本円レート変化の反応を見てみよう。


クチコミから見る4月までの訪日観光

まず2024年4月までの訪日観光に関するクチコミ件数を簡単に振り返ってみよう。

【グラフ】中国人訪日観光客の推移

出所:JNTOの発表をもとに株式会社NOVARCAにて作成

2月の春節というインバウンドシーズンは過ぎたものの、「日本観光」に関す投稿は増加を続けており、4月には7万7000件に達した。この件数は処理水問題によって日本が大きな批判を浴びた2023年8月の7万件を上回る件数となっている。

内容を大別すると1つは「日本観光へ行きたい人」の情報収集、「行った」人の心得やショッピング共有、またKOLやKOCの日本商品や日本観光スポットのPRなど、多様なものが多い。人肉代購(ハンドキャリー代購)の投稿も相変わらず多い。

また4月には清明節の連休があった。

春節は1週間から有休なども併せて10日ほど取るためにヨーロッパや中東などに出かける消費者も多いが、清明節などは3日から4日程度であるため、海外旅行でも東南アジアなどの近隣が多い。

そのなかに、2024年はようやく日本が加わっている。

日本旅行ブームの中で訪れた日本円レートの暴落

日本円と米ドルのレート変動と小紅書における日本円レートに関する投稿数を比較してみた。

【グラフ】2024年4月の小紅書「日本円×レート」投稿件数と「円-ドルレート」の推移

出所:株式会社NOVARCA調べ

これを見るとやはり日本円の値下がりと共に投稿件数が大きくなっている。
そして、4月末に1ドル160円に近付き、まさに最安値をつけようとしている際に、小紅書上のクチコミもMAXに達している。

中国国内の経済ニュースなどでも「日本円暴落」などがニュースとして報道されていたために、その興味関心も高まっていたと考えられる。

中国の消費にとってはやや複雑な心境であったと言える。
小紅書のクチコミをポジティブ、ネガティブに分けた比率を見てみよう(ただし機械で自動的に仕分けしただけのもの)

【グラフ】2024年4月の小紅書「日本円×レート」投稿のポジネガ比率

出所:株式会社NOVARCA調べ

これを見ると4月はネガティブな投稿が1/4以上を占めていることがわかる。

もちろん、複雑な心境を持つ国同士のこと故、日本円の急落を面白がっている節もあるが、同時に「いかにお得になったとはいえ、“あの”日本に買い物に行くなんて!」という思いも垣間見える。

しかし注目すべきはもっと現実的なところだ。

中国消費者は一般消費者でも投資・理財意識が強い。そのため、人によっては安定性を考慮し「日本円への投資」を行っているケースも少なくない。
そうした層から見れば、今回の円安は「資産が目減り」してしまうという状況を生んでいるわけである。

中国に幅広く存在している投資層から見ると、日本円の価値が大きく下がったという事実は笑えない部分があるのである。

ちなみに5月の観光シーズンとなると、観光シーズンで思考もショッピングに向かうらしく若干ポジティブ度合いが増してはいるものの、ネガティブは相変わらず2割程度も存在している。

【グラフ】2024年労働節シーズンの小紅書「日本円×レート」投稿のポジネガ比率

出所:株式会社NOVARCA調べ

中国消費者の悲喜こもごもの声を“聴く”

ではそんな複雑な思いを念頭に、小紅書上に投稿されたクチコミから「円安」に関してのキーワードを整理してみた。

やはり「下落」、「暴落」、「底値での購入」との言葉が並ぶ。

【表】2024年4月小紅書「日本円×レート」投稿のキーワード上位60

出所:株式会社NOVARCA調べ

ここで以外なのが「煤炉(メルカリ)」だ。

中国の若者では日本在住者に「メルカリ」で二次元グッズ(バッジやマスコット)などを購入委託し、中国国内で販売する業者、もしくは個人的に委託購入するなどというケースも見られる。

そうした人たちにとってもレートの影響は小さくない。

4月には人気なのは小さなキャラクター人形だったりいわゆる「缶バッジ」だったりするのだが、それを購入するのは必ずしも富裕層ではなく学生を含めた若者。
限りある財布の中身と相談して購入しているのだ。
結果、「もう少し待つべきだった」などの投稿が見られる。

また人気ブランドの「Van Cleef & Arpels」、「ARC’TERYX」、また高級ブランドの「Cartier」などへの言及があるが、いわゆる「LV」などは上がってはこない。

話を聞いてみると「どのみち中国より安いので買うつもり」とのこと。

ただ、5月に入ると訪日ショッピングの影響か「奢侈品(ラグジュアリーブランド)」のほか、人気ブランド「Van Cleef & Arpels」などもトップ20に上昇してきている。

【表】2024年労働節シーズンの小紅書「日本円×レート」投稿キーワード上位30

出所:株式会社NOVARCA調べ

日本人より投資意識も高く、よりレートにもシビアな中国消費者。
現在、日本円レートは一時期の様な異次元の安さは脱したものの、中国消費者は高い関心を払っている。
それがインバウンドにどのように影響するかは未知数だが、モニタリングしておく必要もあるだろう。

今回Global Compassでは、中国消費者に関する最新動向をレポートにまとめました。

変わり続ける中国のマーケティング環境のなかで、日本企業が確たる足場を築き上げるためには、その状況を正しく把握し、より確かな施策を展開していくことが肝要となります。

ぜひ当レポートを今後の施策策定のための材料としてお役立てください。

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