中国の大型連休「国慶節」(10月1日)。
2023年は中国国内が処理水問題に沸いた直後ということもあり雰囲気的には「訪日自粛ムード」であったが、それに比して2024年は堂々と訪日観光を楽しめた環境であったと推測される。
その中で中国SNS(RED)の口コミをもとに、2024年の国慶節における訪日旅行の動向をレポート形式で紐解いていく。
目次
2024年国慶節観光概況
国慶節前、高まる観光ニーズ
2024年の国慶節、海外では中国経済の低迷が注目されており、その消費動向を占ううえでも注目されているイベントであった。
中国の公的メディアやOTA(旅行予約サイト)などの発表によると、9月時点から国慶節の旅行ニーズが盛況である旨は多く伝えられていた。
こうした報道によると国内旅行の人気も高く、「四川省成都市」をはじめ、「北京市」、「上海市」などの大都市、「陝西省西安市」、「湖南省長沙市」など活力のある都市が人気になっている。
また海外旅行も人気だが、ほぼすべてのOTAから「日本旅行がもっとも人気」との発表がなされており、「タイ」、「韓国」、「マレーシア」などのアジア圏内と共に海外旅行の人気を牽引している様子が見える。
https://news.e23.cn/guonei/2024-09-24/2024092400264.html
2024年国慶節の観光状況は
実際にその国慶節における消費が10月8日に発表されている。それによると観光に出かけた人数は延べ7.65億人と2019年のコロナ前に比べて10.2%増加を見せている。旅行消費においては総額で約7000億元。こちらも2019年比で7.9%の増加と発表されている。
海外に向けての動きとしては期間中の出入国者数はのべ1309.8万人で、2023年同期間の25%増を見せた。コロナ脱却後の海外出国ブームが続いている様子である。
国内旅行では各地の賑わいが報じられ、ややオーバーツーリズムの様子も報じられている。
国慶節の観光情報はいつから?クチコミから見る
2024年の国慶節観光について消費者の意識を知るため「国慶節×旅行」のワーディングで小紅書(RED)のクチコミ簡易分析を試みた。期間は2023年と2024年の1月~9月である。
それを見ると7月ごろから情報を集めはじめ、9月の直前期に一気に投稿件数が伸びている。遠方に対しては7月下旬ごろからマーケティング活動が始まり、9月に盛り上げると言った流れが多いと思われる。
そのノート件数は2023年の同時期に比べ大きく増えているのが見て取れる。2023年はコロナ脱却から間もなく、社会正常化に忙しい状況であったこと、それでもリベンジ観光は起こっていたので、2024年はさらに旅を楽しもうという意欲が起こったと思われる。
クチコミで見る国慶節旅行ニーズ
国慶節の旅行についてのクチコミキーワードを整理し、2023年と比較をしてみた。
ワードそのものに大きな変化はなく、各ニーズの規模が大きくなっているものと思われる。
観光においては自家用車やレンタカー(カーシェアリング)などによる自動車での外出が人気であるが、大渋滞に関する報道もあり、今後の課題となりそうだ。
また目的地にはこうした車で「四川省西部」の山間地を楽しむアウトドアニーズが見られるほか、「新疆ウイグル自治区」などの自然風景と少数民族文化を楽しむニーズはより高まっていると言える。
「親子」での旅行も変わらず人気で、子供に色々な体験学習をさせようという意図も見える。
文化体験型旅行を行政も推奨
こうした中国の観光で人気となっているのが「文旅」、すなわち「文化体験旅行」である。通常では体験できない伝統文化や民族文化の体験(漢族が多いとはいえ多民族国家の強み)、特に子供連れ旅行では博物館や自然、伝統技術や歴史体験などが人気になっている。
同時に国もこうした旅を奨励しており、「自国文化の理解や愛国心の育成」そして「民族の統一感醸成」に役立てたいようだ。
出所:https://news.hexun.com/2024-09-30/214807446.html
2024年国慶節訪日観光クチコミ分析
国慶節における日本観光への関心推移
大きな賑わいを見せた国慶節の旅行消費であったが、訪日観光についてはどうだったのか、「訪日観光×国慶節」での小紅書クチコミ簡易分析を試みた。
投稿件数としては1月から9月で1万件に近づき、昨年を大きく上回った。月次で見ても9月は昨年を大きく上回る件数となっている。
というのも、2023年は8月10日に団体旅行が解禁されたものの、月末に処理水放出が始まったことで「日系ブランド核汚染」投稿が増加し、日本への批判から「日本への旅行」を大きく口外できる環境に無かったという状況がある。
それを受けての「リベンジ国慶節訪日」となったのかもしれない。
直前9月の「国慶節訪日観光」の印象はどうだったのか
9月の「国慶節訪日観光」投稿を少し詳しく見てみよう。まずポジネガを見ると、2023年はやはり処理水問題の影響でネガティブ比率が増えている。
それに対し2024年はポジティブ投稿が大きく伸びており、訪日観光において「処理水」を始めとする国家間の感情問題は払しょくされているものと考えていいだろう(9月18日の事件は報道管制の結果、訪日観光には影響を与えていない)。
日次で見ると、2023年には「国慶節に日本にいくなど信じられない」といった投稿があったが、2024年にはそうしたものも消え、純粋に観光やショッピングガイド投稿が増えており、下旬にはそれを盛り上げる傾向が見られた。
国慶節中の「訪日観光」クチコミ
では実際に国慶節に入ってからの訪日観光に関するクチコミを見てみよう。すでに期間中であるので「国慶節」ワードを外し、純粋に「訪日観光」に関するクチコミだけを調べた。
日次で見るとやはり最初の3日間が多い。マーケティング的にも到着後すぐを狙った訴求が展開されたであろうし、消費者も「入国した」という一種の興奮状態で投稿も増えたと思われる。4日目以降は観光に集中するために投稿は控え気味か。
2023年は処理水問題もあり、今年の様なスタート時の盛り上がりが無かったのが見て取れる。
国慶節終了後の「旅の思い出」投稿は、年末の訪日を誘発する効果があるためモニタリングする必要があるだろう。
国慶節の訪日観光、変化は?
国慶節中の訪日観光におけるクチコミワードである。2023年はどうしても「処理水」から離れられなかった。しかし2024年は一切関連ワードは見えず、観光地のほか「コンビニ」、「ドラッグストア」などショッピングのワードが見える。
また2023年には見えなかった「日本代購」のワードも上がっている。訪日時の情報源として利用しているほか、代購の進めた商品や「欲しいものは代購で済ませ、観光に集中」という動きもありそうだ。
2024年国慶節訪日観光ショッピングクチコミ
9月時点の「訪日観光ショッピング×国慶節」クチコミ
気になるショッピングの状況について、直前の9月の「訪日ショッピング×国慶節」での小紅書簡易分析を行った。
これを見ると、2024年は日次でも大きく前年を上回っており、中旬以降は「盛り上がり」を見せている。2023年は処理水問題で「自粛」に近い状態(ブランドも消費者も)であったが、現在はその気兼ねなく投稿・情報発信ができている様である。
1カ月間の投稿件数を比べてみたが、2023年が非常事態ということで非常に少ないため、2024年9月の「国慶節訪日ショッピング」投稿は大きく伸びている。
国慶節期間中の「訪日ショッピング」は?
国慶節期間中の「訪日ショッピング」に関する投稿状況を分析してみた。期間中であるため「国慶節」のワードは外し、「日本での買い物(日本ベストバイなどを含む)」について市調べた。
これを見ると、2023年が200件ほど上回る形になった。2024年は観光同様、到着時に向けたマーケティングや到着時の情報収集などが生まれていたため件巣が増加し、観光など実際に回る期間中は投稿数が減る傾向がみられる。
対して2023年は日本関係の投稿がしにくかったのは入国時の投稿は少なかったが、旅の終わりは安心のためかショッピングの投稿が増えたと考えられる。
国慶節中の訪日ショッピングのつぶやきはいかに?
国慶節期間中の「訪日ショッピング」のクチコミワードを整理した。やはり「日本代購」が存在感を見せているのが見て取れる。
同時に「ファッション」やファッションブランドの「Vivienne Westwood」など、「代購にはお願いできないもの(試着してみないと分からないもの)」や「ポップアップストア」など、現地の特別イベントなどに対しては関心が高まるようだ。
また2023年に比べマーケティング活動によると思われるワードの影響も強く見える。
ドラッグストアと百貨店クチコミ状況
期間中のドラッグストア&百貨店クチコミ件数
訪日ショッピングの2大チャネルである「ドラッグストア」と「百貨店」、国慶節中のそれぞれのクチコミを収集、簡易分析を試みた。いずれも通常の「中国訪日観光クチコミレポート」と同様、「国慶節」を含まないワードでの検索である。
期間中の投稿件総数を比べると、双方ともに2023年を大きく上回る状況となった。繰り返しになるが2023年には処理水問題の影響で日本関連の投稿がしにくい状況であったことを考慮すべきであろう。
双方を比べるとボリュームではドラッグストアが非常に多い。ただし観光目的地投稿の「銀座」などには百貨店が多く含まれているものとも考えられるため、実際の訪問は少なくなかったと考えられる。
期間中のドラッグストア&百貨店クチコミ件数
それぞれの日次の投稿件数を追ってみた。
やはり入国時の訴求や消費者の情報収集などが大きかったことから、2024年はドラッグストア、百貨店双方ともに10月1日、2日が主戦場となっている。
やや別れたのは終盤、ドラッグストアは「帰りがけ」の投稿が多いのに対し、百貨店はその前日に山ができている。百貨店は時間をかけてゆったり回るためか、最終日などは足を運びにくく、ドラッグストアはその逆という事だろうと思われる。
期間中のドラッグストアクチコミ
国慶節期間中の「ドラッグストアショッピング」のクチコミワードを整理した。「日本代購」の存在は無視できないが、「クレンジング」など、昨今の中国スキンケアトレンドの影響も見える。
同時に「オールインワン」のほか「なまけもの」などの、お手軽便利・多機能商品への関心も向いているようだ。
また下位ながらLDKで紹介された「ダーマ―レーザーマスクVC100」は根強い人気を誇っていることが見て取れる。
期間中の百貨店クチコミ
国慶節期間中の「百貨店ショッピング」のクチコミワードである。2023年はやはりキーワード自体も多くはないが、「City Walk」の一環としての百貨店巡りが見られたことが感じられる。
2024年は行動範囲が広がったことで「商圏」を楽しむ傾向、また「現地人御用達である」点などが、中国消費者にとってのポイントとなる可能性が感じられる(観光客目当てではないお店)。
中国側は2024年11月30日から日本人の短期入国ビザ免除を発表したが、これが中国からの訪日インバウンドに与える影響はまだ少ないとみている(外交上、訪日ビザの規定を緩和する可能性はある)。中国の治安が懸念材料であるが、減少している日本から中国への渡航が増えることで人の往来が増え、双方の人的交流が増えることは日本への興味関心を高め、訪日ニーズにつながることを期待したい。
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